第四章:チームメイト
「沙羅ちゃんて双子だったんだぁ!? でも全然雰囲気違くねぇ?」
「何か暗いよな」
休憩に入り、養成施設内の通路を歩いていると話し声が聞こえて来た。オレはそういう噂話をするのは好きじゃない。知ってる奴だったが、その横を素通りした。
オレは人と一定の距離を置くことにしている。自分が相手を知ろうとすれば、相手も自分を知ろうとする。そういうのが面倒臭いし、オレは他人に詮索されるのが嫌いだ。だから必要以上に人と話さず、関わらないことにしている。
社員食堂に入るとまばらに人がいて、何席か空いていた。オレは電子パネルからメニューを注文して、取り出し口から出てくる番号札を受け取ると、適当に空いていている席に座った。斜め向かい側には三十代ぐらいの汗ばんだTシャツ姿の男が座っていてたが、もちろん会話はしない。男はラーメンの丼を持ち上げてスープを飲み干すと、さっさとそれをカウンターに返却して出て行った。番号を呼ばれてオレは品物を取りに行く。席に戻るとさっき男が座っていた席には、女の子が座っていた。
さっき噂されていた子だ。
「……」
「……」
高藤樹羅、それがこの少女の名前。彼女は沙羅の双子の妹でオレとチームを組むことになっていた。ショートカットで高藤沙羅と同じ青い髪――少しだけ薄い紫掛かった淡い青。女子のパイロットとしては最年少記録を持ち、13歳でこの防衛パイロット養成施設に入り、ライセンス取得資格を得られる15歳の誕生日の一月前に試験に合格した。それが半年前らしく、この話をマネージャーの霧島汐名に聞かされた。
だがこの子は、ほとんどしゃべらず何を考えてるのか分からないし
――苦手だ。
多分相手もオレのことをそう思っているだろう。
「好きなのそれ?」
ふと彼女が話し掛けて来た。頬杖を着き、オレの食べていた点心飯を見ながら。
「……」
「それ美味しいよね?」
彼女は少し笑った。
「……」
初めて見た。彼女の笑った顔を。それより何故自分に話し掛けて来たのか……
彼女はオレが無言なのも気にせず、食券の番号が呼ばれるのを静かに待っていた。
気まずい空気だった。
この子は沙羅と顔は似ているが、この妙な空気が落ち着かず
やっぱり
苦手だ……
次話に続きます。




