第三十四章:もう一つの記念日<愛すべき者達>【後編】2
おまたせしすぎてごめんなさいませでした~!!←日本語変
正真正銘これが「もう一つの~」【後編】の完結編です!
やっとこのシーンが描けた。。。
気が付けば恐ろしい年月が流れ、、、とりあえず生きてる間にこのシーンが描けてよかったです、はい。。。
今作のオープニングソング「たとえ君がここから消えても」の歌詞「高速のゲリラドライブ~その答えはあるのか」のシーンがやっと小説の中にも描けました!
あれはこういうシーンをイメージしてたんですよ|ω・)探してみてね❥
あ、簡単に言うと宇宙空間で敵とガチャガチャしちゃったりするシーンのことです。
では本文へどうぞ↓↓
前後から同時に攻撃されれば動きを封じられたも同然。それに今度はレーザーガンだ。さっきのように弾道を変えるなんてことはできないだろう。今度こそ逃げられないはずだ。
爆音が大気を割り、橙色の炎が大小の花を咲かせる。同時に黒煙が雲のように立ち込め、敵機はその中に姿を消した。
「やったか?」
オレはコックピットからその様子を眺めていた。瞬きすることも忘れ、それを見ていると
「!?」
煙の中から何かが飛び出した。
“コックピット”が……
「嘘だろ?」
大破したはずの敵機は、破損部を切り離したコックピットのみのような形になって垂直に上昇後、直角に曲がるとそのままこちらに背を向けて飛び立って行った。後部から何も噴射されていなかったので、射出座席とは違う仕組みだ。エンジンもないのにどうやって……
遠隔操作? 玩具のように。
「……」
あまりに鮮やかに敵に逃げられ、去った方向を眺めてオレが茫然としていると
《どんな構造してるのかわからないが、逃げ切れると思うなよ》
相楽臣の声が機内に聴こえてきた。かと思ったその直後、彼は今まさに敵機が飛び立った方向に向かって機体を飛ばした。
追跡が始まる。
「!?」
その後を、どこから現れたのか数機の機体が追いかける。レーダーには“探知されない敵”――数機の青い機体たちが。
助けないと!?
慌ててオレもその後を追った。
相楽機を追いかける青い機体たちは大気圏を抜け、宇宙空間に出た。その姿を見失わないように追跡するオレの機体も同じく大気圏を抜け、宇宙空間に出た。漆黒の闇空間が視界に広がる。その中を躊躇いもせず突き進んで行く青い機体。先程逃げた敵を発見したのか突如スピードを上げて相楽機が闇の向こうに吸い込まれるように飛び去った。敵機がそれを見逃さず同じ闇の向こうに吸い込まれて行った。早い!?
現実はまるで違った。シミュレータより遥かに予期せぬ出来事の連続に戸惑うばかりだ。決して敵を見失ってはいけなかった。何しろここは漆黒の闇、宇宙だ。地球上のようにその機体を反射させる眩しい陽光はない。頼りは目視かレーダー。オレはイチかバチかレーダーで敵を探すが
「くそっ、駄目か……!」
レーダーに敵のシンボルマークは表示されず、オレは完全に敵を見失った。宇宙という大海原に独り取り残される。
「やばい……」
怖くなった。
どうしよう……
「!?」
ふいに遠くの闇が一瞬光った。その方向に機体を飛ばすが
「ない!」
言ってみると何も見付からず落胆する。
どこだ!?
旋回してみるが、闇が広がっているだけで他には何も見えてこない。言いようのない不安に胸を圧迫された。脈拍数が上昇する。
「あっ!」
今度は別の方向に広がる光を視界の端に捉えた。その直後、光る雨が。
光を捕えた方向から敵の“射撃の雨”が降ってきた。
「!?――――っ」
オレはすぐに引き返そうと旋回する。
『戻るな!』
えっ……?
誰かに呼び止められたような気がして、オレの操作が止まる。
そこに近づいてくる敵機影。はっきりとは見えないが、おそらく一機ではない。
「わあああああああああぁぁああぁ――――――――――あああ……ッッ!!?」
オレは無我夢中で叫びながら機体を急発進させ離脱を試みる。
先は闇。そのまた先に続いているのも闇。前も後ろも上も下もどこまで行っても見えてくるのは闇闇闇闇闇闇……。
このまま逃げ切れたとしても、燃料が尽きればそこで“終わり”。
それもいいかもしれない。
宇宙で死ぬのもロマンじゃないか。
オレは死を覚悟した。
宇宙という大海に意識を預ける。
「……」
安らかに深く息を吸い、ふーっと大きく吐き出した。
気持ちいい……
今までの生きることへの執着心は嘘のように消えていた。
かのように思えたが
「?」
事態が急変した。突如前方に敵機が姿を現し、そこで停止した。
「ぁ、あ……」
即座に動けずオレが撃つのを躊躇していると、またさっきの光――
「わあああああ……!?」
敵が放つミサイルがオレに向かって飛んできた。
――――終わった……
小さな騒めきが聴こえる。
言語とは違うそれは
――機械?
ここは
呻きながら、オレはゆっくりと瞼を開けた。
「……」
照明が填め込まれた無機質な白い天上と対面した。頭だけ動かして辺りを窺う。左にも奥にも何かの機械が置かれている。右に首を巡らすと人間用のカプセルと思われるものが置かれていた。
ベッドに寝かされていたオレは、呻きながら起き上がり床に足を下ろした。疲れを残した身体で少しふらつきながら、そのカプセルの中を覗く。頭部に当たる部分だけ蓋が透明になっているので、顔が確認できる。
「っ!?」
知っている人間だった。端正で彫りの深いその顔は
「モーゼズ!?」
その声に反応し、うっすらと瞼を開いたその男は「開けろ」と言うように顎をしゃくった。普段使用しているカプセルに構造が似ていたので、言われた通りオレがそれらしきボタンを押すと蓋が開いた。
「何故そんな所で寝てい……」
オレの表情が凍り付く。開いた蓋の向こうから見えてきたのは、全身に包帯を巻かれたモーゼズの無残な姿だった。艶めかしく血が滲んでいる個所もある。対面したオレを見て薄く笑うモーゼズ。その姿とこの状況にオレは絶望した。
「なんでこんな……っ」とモーゼズが寝かされているカプセルに掴みかかる。
「お前、強かったんじゃなかったのか? こんな怪我なんかしやがって。なんでやられてんだよ!? なんで……」
カプセルに向かって倒れ込んで泣き叫ぶオレの頭に、モーゼズが手を伸ばした。怒りや悔しさ、その他あらゆる負の感情がひしめき合っているオレの心を鎮めるように、優しく頭を撫でる。
「……っ」
そのでかい手を退けてオレは、モーゼズを睨んだ。
「馬鹿か」と涙声で言うと
「ふっ」とモーゼズは微笑した。
「響」
「なんだ?」
「心配してくれてありがとう」
そう言い、モーゼズがまたオレの頭に触れる。あ、また! その手を退けようとしてオレが手を伸ばすが
「オレに触られるのは嫌か?」
「……っっ」
掴んだモーゼズの手を退けられなくなった。咄嗟に言葉が出なくなる。
「ふふ、かわいいな」
「うるさい。それよりここはどこだ?」
不貞腐れたオレの顔を見て、モーゼズは穏やかに微笑して言った。
「“Arc”の中だ」
「アーク?」
モーゼズが頷き、説明する。
「“Arc”は同志を救出するために造られた方舟型宇宙機のことだ。オレたちは今その方舟に乗っている」
「救出って、どうするつもりだ?」
「彼らをこの方舟で地球に運ぶ」
「地球……?」
「そう、オレたちの“故郷”へ」
「地球はまだドームの中でしか暮らせないほど汚染されてるんじゃないのか? それだってまだ完璧じゃないはず……」
「“地上ではな”」
モーゼズはそう言ってニヤリとした。
「どういう意味だ?」
モーゼズが続ける。
「“見えない場所”では着々と準備が進められている」
「見えない場所って……」
「地上から見えない場所――地下だ」
「もしかして地下都市計画?」
「なんだそれは?」
「噂で聞いたんだ」
もしかしたら“メヒョウ”が関わっているかもしれない。くそ、でも名前がわからない!……
「その地下で今、何の準備が進められてるんだ?」
「火星政府に対抗するための準備だ」
つまりそれは……
相楽臣が言っていた地下都市――その真意は、“軍事施設”だったってことか。
「そんなものを造ってるってことは、地球政府は戦争でも始めようとしているのか?」
答え合わせをするようにオレがそう尋ねると、モーゼズは言った。
「“もう始まっている”」
「え?」
「とも言える」
その言葉にオレは戦慄した。
モーゼズが続ける。
「今回の『大移動』はその伏線だからな」
「!?」
「オレたちはその歴史の中に散っていくだけだ」
「何を言って……?」
「何かを変えようとする時に犠牲はつきものだ。オレたちはその中の一部ということだ」
「……」
「コロニー政府のやり方に異議を唱える奴らが結束を固め、軍事設備や人員を確保して“その時”に備えている」
「そんな……」
「これからどうなるかはわからないが、お前はお前が守りたい側に付けばいい。
お前を零号士にしたのは、お前をオレたちの仲間にしたかったからじゃないからな。
だがお前にはその眼で“確かめなければならない真実”がある」
「真実?」
「ワープする前にお前を方舟から降ろす」
「何で? オレを地球に連れて行けと言われたんじゃなかったのか?」
「今はその時機ではない。お前は一旦火星に帰還して、火星のパイロットとして銀河系レースに出ろ。
そこに行けば“答え”が見つかる」
「何だよ答えって!?」
モーゼズはその意味を言わず、瞼を伏せた。
「もうすぐお別れだ」
「え」
彼はまるで今にも眠りに着きそうな目をした。話す速度も少し遅くなる。
「お前とはもっと話したかった……」
「モーゼズ……?」
「響、お前に逢えてよかった。同じ時代に生まれて。
今度生まれてくる時は、こんな差別なんかない時代がいいな」
「なんだよ急に?」
力なくモーゼズは微笑し、オレの声は震えた。
モーゼズがオレの目を見詰めて、大事そうに次の言葉を紡ぐ。
「響、裕福だった先祖に感謝しな」
そう言うとモーゼズは静かに瞼を伏せ、そのまま動かなくなった。
「モーゼズ!?」
嘘だ。嘘だこんなこと……オレは目の前の現実を打ち消したくて、激しく頭を振った。モーゼズの身体を揺さぶって、起こそうとする。目を開けろ。開けてくれ――――っっ!?
だがモーゼズの瞼がまた開くことも、口が動くこともなかった。
「おい、死ぬなよ。モーゼズ? モーゼズ!? お前のことは大嫌いだったけど、死んじゃ駄目だ! 今死んだらお前のこと……
ずっと嫌いなままだからな――――!?」
その慟哭が無機質な部屋に虚しく木霊した。
これからも拙作を末永~く読んでいただければ幸いです。