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第三十一章:もう一つの記念日<愛すべき者達>【前編】

火星コロニー創立記念祭当日キターーー! これから越える山は、越えなくてはいけないけど越えたくない山でもあります……。て言っても何言ってるのかわからないですよね(苦笑)。


では本編へどうぞ。



 三月二十日――

 空は雲一つない青天で、上空の視界を遮るものはない。風も穏やかで、絶好の飛行(フライト)日和と言えた。今日のイベントでモーゼズがいるアクロバットチームが飛行()ぶ。それがどんなものになるのか、それを考えると期待と不安が同時に沸いて来る。曲芸飛行を披露するだけならそれでいい。だが彼らはこのイベントを利用して、政府に訴えようとしているのだ。彼ら“NO ID’s”の人権を。どんな方法でそれを訴えるのかはわからないが、そんなことをして穏やかに済むわけがない。そうなれば


 この青天が嵐に変わる……





 開催を報せる号砲が一発轟いた。少し間を開けて数発の段雷が続く。大気を割るようなその轟音が不思議な高揚感を掻き立てる。今日は何が起こるか分からない。だが何が起こっても逃げるわけにはいかない。防衛パイロットとして、オレには市民を守る義務がある。オレは逃げない。オレは



  ――遠山雄二(とおやま ゆうじ)の息子だ。



 開始時刻が迫ると最後にパラパラという音を散らして音花火が止んだ。見せ場の一つである入場行進が始まる。指揮者を先頭に、防衛組織の音楽隊が楽器を演奏しながら行進していく。楽曲は火星コロニー創立を祝して有名な作曲家達が合作で手がけたものを行進曲調にアレンジしたものだ。その軽快なマーチのリズムに合わせて、ライフルを担いだ防衛パイロット(警備隊)が手の振る角度、足並みを揃えて行進していく。その中にオレもいた。前回祭典が開催されたのは十年前。当時オレは五歳だった。その約五年後に火星コロニー防衛パイロット養成施設に入り、昨年宇宙空間対応飛行機(MECA)操縦士のライセンスを取得したオレは今回初めて会場の警備に当たる。いつもとは違う緊張感とそれ以上にモーゼズ達のことが気掛かりで、神経が張り詰めていた。何も知らない観客の人々は、この瞬間を捉えようとカメラや携帯端末を構えて撮影に勤しんでいる。その間を通過して音楽隊が隊列を組んで定位置に移動し、そこで演奏を続ける。警備隊は行進を続け、400インチはある巨大スクリーンが設置されたステージ付近まで進むとそこで左右に別れて進み、両側から観客を挟むように横一列に並んだ。オレ達はそこで監視や警備をするのが役目だった。やがて演奏曲が変わって厳かな曲になるとオレ達警備隊の空気も変わった。観衆を見る目が厳しくなる。それは“登場”を報せる合図だった。SPの(クラウンパトカー)に前後を護られながらVIP車両(メルセデス・ベンツ)が会場内に進入してくる。その車に“コロニー統首”が乗っているのだ。彼はこの火星上に築いた人間社会のトップに君臨している。しかし謎が多く、国籍や経歴などの詳細は一切明かされず、ロボットではないかとも噂されていた。音楽隊の演奏が止み、辺りに静寂が広がる。

「次に火星コロニー統首、D・ムラト統首より式辞……」

 司会者が促すと観客の前に警備隊が壁を作り、SPにガードされながら統首が車から降りた。彼は通路に敷かれた長いレッドカーペットの上を渡って行く。オレの立ち位置からはステージに繋がっている階段を上がって行く彼の後ろ姿しか見えなかった。その動作にロボットのようなぎこちなさは見られない。そこまでの映像が巨大スクリーンに映し出され、会話は全て各国の言語(コロニーには地球のような国を分けての国土は存在しないが、国籍は地球からそのまま引き継がれており、言語もそのまま使用されている)に同時通訳されたものが左右のサブモニターに表示される。彼の使用言語は全て英語だ。

「私は、この世界が永久に平和であることを願います」

 頭の中で彼がスピーチした英語を日本語に訳して不快になり、オレは目を細めた。D・ムラト――この火星コロニー上のトップで事実上の支配者。彼の一声で“この世界”は動く。


“I hope that this world is peaceful forever.”


 決め台詞のようになっているその言葉で最後を締め括り、統首は挨拶を終えた。静かに降壇していく。司会が進行され名前を呼ばれた男性が登壇し

「これより3×××年第十回、火星コロニー創立記念祭を開催します」

 開会宣言したと同時に音花火が青空に弾けた。歓声や指笛(ホイッスル)が響き、会場が沸いて一気にお祭り騒ぎの空気が広がった。

 この後マジックショーやダンスパフォーマンスなど華やかなプログラムが行われ、さらに会場を賑わしていった。

「次は午前最後のプログラム……」

 司会者に呼ばれてステージに上がって来たのはギターを抱えた若い男性ミュージシャンのようだった。巨大スクリーンに彼の姿が大きく映ったが見たことのない顔だった。周囲にも喚声は上がらない所からすると無名のミュージシャンのようだ。彼はステージ上のスタンドマイクの前に行き、マイクの位置を調節した。

「それではお聴きください。ノアさんで、“To Heaven”……」

 前奏が始まった。それを奏でるアコースティックギターの音色がもの悲しげに響く。まるで誰かが泣いているみたいに……




やっと出せる日が来ました(-.-;)。書きたかったことが6・7割ぐらいは書けたと思います。台詞を活かそうとするとどうしても邪魔になる部分をバッサバッサ、カットした結果(>_<)しくしく


次はノアが歌うメッセージソングです。今回のエピソードのバックに流れる曲のイメージで作ったので、是非続けて御覧ください。

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