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第十三章:眼差し

零号士ゼロになりたい!?」

 予想通りの反応だった。機体の位置が表示されたモニターなどの機械音が鳴るだけで、会話も少ないこの静寂なシステム管理室に、霧島マネージャーの声が響く。制服姿で作業中の社員達の視線が、一斉にこちらに向けられた。霧島マネージャーは煩わしそうに咳払いする。

「あなたはまだ若いのよ? もっと経験を積んでからでも遅くはないわ」

 お約束の台詞が返ってくることも予想済みだった。オレは真っ直ぐに彼女の目を見据えた。

「もう、決めたことですから」

 意志を貫くように強い視線を送る。霧島マネージャーは素早く数回瞬きした。

 オレの宇宙飛行への願望は日に日に強くなっている。宇宙空間対応飛行機(MECA)に乗ることすら禁じられた今の現状に苛立ちは募るばかりだ。一刻も早く宇宙に出たい。火星上のパトロールではなく、宇宙そとに――


「響」

 霧島マネージャーは声を吐き出した。オレはグレーの大きな瞳で射るような眼差しを彼女に向ける。オレの瞳は他人を寄せ付けない無機質なオーラのようなものを発しているらしく、見詰めると『冷たい』『何を考えているのか分からない』と敬遠されてきた。その瞳で見据えて泣かれたこともある。だが、今のオレには“ これ”しか武器になるものはない。

「そんなに睨んでも駄目よ」

 マネージャーはそう言うのかと思ったが……

「もう一度考え直してみて」

 穏やかにそう言い、凛とした黒い瞳を細めながら僅かに微笑した。


 何故だ? 

 この笑みは……余裕すら感じさせる。何か絶対的な“隠し玉”を持っているかのような……


 彼女を見据えたまま、内心オレは焦りを感じていた。

 結局その時結論は出ず、曖昧に受け流されてしまった。簡単に許可がもらえないことも予想はしていたが、もどかしかった。部屋を出るなり悪態をつく。

「どうした?」

 振り向くと声の主は宇宙航空管制官管理部長の呉羽衛くれは まもるだった。平均より高い背丈で細身だが、体育会系の引き締まった身体付きが逞しく、制服の白いシャツに付いた役職を示すバッチが勲章のように光っている。ここに勤めていて彼のことを知らない人間など存在しないが、話しかけられるのは初めてだった。愛想笑いが苦手なオレは、敬礼すると表情を堅くした。この強い目で直視するオレは、がんを飛ばす礼儀知らずなクソガキに見えるだろう。

「ふっ」

 何?――呉羽管理部長は口元に拳を当てて小さな笑声を漏らした。

「“いい眼”だ」

 そう言い、オレの頭に手を乗せる。

「その眼は懐かしいよ」

 懐かしい?

「昔、同じような眼をした男に会ったことがある」




次は番外編となっていますが、三人称の回想場面になるだけで、続けて読んでも話は繋がるようになってます。…ややこしや〜♪

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