第十章:屈辱
★意外と早い更新です。次話と合わせてどうぞ〜★ その闇に足を踏み入れた時――本来の姿が顔を現す……
「本当、無茶するよなぁ」
相楽臣?
声がしたほうに目をやると薬品棚の横のドアから、相楽臣が姿を現した。
「危なかったね」
奴はオレが寝ているベッドに歩み寄って来た。
「……!」
まだ声が出ない。そもそもオレは何で……
「クスッ、君は爆風に巻き込まれたんだ。隕石を爆破する際の」
聞こうとしたことを察知したように奴は言った。目を見て分かったのだろうか。オレはそのことが気に入らなかったので目を逸らした。
「すまないが、私はこれから会議があるので今から出掛けなくてはならない。君の服はそこのカゴの中だ。臣、後は頼んだぞ」
「はい、先生」
白衣の男が部屋を出て行き、相楽臣と二人きりになる。オレは嫌だったのでベッドから起き上がろうとした。
ああ、まだ喉が変だ。苦しい。
「あっ、大丈夫?」
オレがベッドから落ち掛けると相楽臣が素早く手で支えた。
「……」
声が喉につまり、さらには腕や足がろくに力が入らないオレは無言になる。
「薬効き過ぎだな。あとで父に言っておこう」
いったい何をされたんだオレは? どんな薬を投与されたんだ? と不安というより不信感が沸いて来る。
「……」
声が出ないため、それを聞くことすらできない。どうやって伝えようか考え――
「……」
オレは訴えかけるように相楽臣の顔を凝視した。
「ん、何?」
“オレは何を飲まされたんだ?”――目だけでそう問いかける。
「あ?」
奴はオレの目を見て何かわかったように目を見張った。が
「待ってて、今“着替え”させてあげる」
何、 何でそうなるんだ!?
奴はオレの服を取りに行った。
“いいから! いいから、やめろ……そんなの後でやるからほっとけ!?”
オレは必死で訴えかけるが、全く伝わらず
――屈辱!
奴にガウンを脱がされ、服を着せられ――オレは“介護老人”か!?
それは、あまりにも惨めだった。
「もう少し休んでて」
奴はまたオレをベッドに寝かせた。
“なら、着替えさすなよ!?”
奴の後ろ姿を見ながらオレは行き場のない感情を噛み締め、狂気していた……
 




