第4話
夢か、現か、
そんなこと、どうだって良い。
だって、目の前にいる。
彼はいる───
「今日は大切なお客様が来るからっていったろ?ピニー」
突如、一人と一匹の目の前に現れた青年は、
”爽やか”というキャッチコピーを背負っているかのように、
清々しく登場した。
整った顔立ち、少し短めの金の髪。
「だから、ちゃぁんと迎えたじゃん!マルウェル!」
ピニーと呼ばれたお馬さんの言葉がエコーする。
マルウェル、
マルウェル───
マルウェルと呼ばれた青年は蒜羽に近づく。
そして、微笑み、名は?とピニーに確認する。
「ヒラヒルっていうんだよ〜」
マルウェルはかがみ、蒜羽にひざまずくような形をとった。
蒜羽の右手をとり、顔に引き寄せる。
「ようこそ…ヒラヒル」
名を呼ばれて、蒜羽は鼓動が波打つのを感じた。
二人の目が合う。
誰?
誰を、見つめているの?
優しい、透き通る瞳。
「お伽の国へ───」
信じて
本当に
お伽の国はあるから───
蒜羽は溢れる涙を止めることが出来なかった。
本当だった、信じてた、
信じてたよ───
「ヒラヒル…?」
「…会いたかった…っ、マルウェル…!」
ずっと、ずっと───
マルウェルは優しく微笑んで、人差し指で蒜羽の涙をすくう。
「泣かないで、ヒラヒル」
頬に触れた指先が温かい。
ああ、あなたはここにいるんだね───
「お伽の国は、うれしいこと、たのしいこと…だからね」
その言葉に、蒜羽の涙は止まった。
両手で涙をぬぐい、満面の笑みを見せた。
「…うんっ!!」
そうだよ、哀しいことなんて何もない。
もう涙はいらない!
「さあ、ピニー!ヒラヒルにお伽の国を案内しよう!」
「おっK!!」
マルウェルは、右手を振りかざした。
「もしかして…」
その行動に、蒜羽は緊張した面持ちで声をかける。
「魔法を使う…とか」
彼はにっこり微笑んだ。
なんて、笑顔の似合うヒトなんだ───と蒜羽は思った。
「そのとーり!!」
その声と同時に、ボン!!という音と共とともにピニーは白い煙に包まれた。
姿が見えなくなったと思いきや、すぐさまピニーの顔が見えた。
「……………」
二人はその姿に、しばらく絶句していた。
顔は可愛らしいぬいぐるみのピニー…しかし、
顔から下はリアルな馬に変化していた。
長い足、ひづめもちゃんとある、毛並みがさらさらの。
明らかに顔と体がおらず、とても不自然だった。
「……さ、いこっか、ヒラヒル★」
「ちょっと!!ちゃんと顔も、シリアスにしてよ!!」
マルウェルは鋭いツッコミを受けた。
ヒラヒルは、これはこれでかわいいかも、なんて思っていた。
マルウェルはヒラヒルの体を持ち上げて、全身がシリアス(?!)になったピニーの背に乗せた。
そして自分もヒラヒルの前に乗り、二人は丘から駆け出した。
楽しんでおいで
限りある、夢の時間を───