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止まない雨に傘を差して  作者: もち
1章:雪解雨
6/8

そして雨の日が嫌いになった

短いです

 

 前世で引きこもってたこともあって、俺は人と話すのが得意じゃなかった。

 人からどう思われてるのか気にして接するのが怖いし、裏があるんじゃないかって疑ってしまう。

 高校生になった今は、猫被って人と話すことはできるようになったけど、中学の頃は会話を続けることすらできなかった。まぁ今世に関しては見た目の問題もあるけど・・下心あるやつとは話したくないし。


 今も周りの人間を信用してはいないけど、話せるようになったのは真白のおかげだ。

 初めて出会ったのは中学の時。一年生の頃クラスが同じで、ペアワークで余ってた俺が、一人にならないよう声をかけてくれた。

 彼女がクラスで人気者だったこともあり、真白と一緒にいる所を見たクラスメイトが、何人か俺に話しかけてくれるようになった。親近感でも湧いたんだろうな。

 図書室で勉強している時、さりげなく暖房つけてくれたり、落とした鍵を拾ってくれたり、小さな気遣いと優しさに何度も救われたんだ。


 思えば、こっちの世界で出会う前から恋愛感情は芽生えていた。けど、俺はそれを認めたくなかった。

 真白は中学生の頃から海人かいとのことが好きで、その気持ちを知っているのに告白しようとは思えなかった。

 だから “好き” という気持ちにフタをして、あくまで “推し” として彼女を遠くから見守っていた。好きな子が幸せになれるならそれでいい、そう思っていた・・・あの雨の日までは。






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「今日雨かー」

「えー俺傘持ってきてねー」

「結構ひどいから親に車で来てもらえば?」


 クラスメイトの会話を尻目に、窓の外の雨を眺める。

 雨か・・そういえば前世で自殺した日も、こんな風に土砂降りだったな。

 湿気や低気圧が理由で雨を嫌う人は多いけど、俺はそこまで嫌いじゃない。雨の日って非日常感あって少しテンション上がるし。


 雨が降るということは、何かしらイベントが起こるのだろうか。

 この世界はギャルゲー “雨と乙女心” が舞台になっているから、タイトルが指す通り、ゲーム内では雨の日にヒロインと主人公の関係が深まるシリアスイベントが良く起こる。

 例えばこないだは、俺の推し和泉真白のラブコメイベントがあった。

 悪口を言っていた男子生徒を主人公が怒鳴って、それを陰で真白が聞いていたことで、自分の存在を肯定してくれた海人への恋を自覚する。

 メインのストーリーは高校生から始めるんだが、回想シーンを見てたからこのイベントを知っていた。

 別に海人の行動を止めようとは思わなかった。いつ起きるか予測はできなかったし。

 ただ、真白のことをよく見てるからか・・・彼女が海人のことを見る目が変わった気がした。俺が真白を見ている目とそっくりだった。

 極論、真白が恋心を自覚する前に告ってしまえばよかった話だ・・・・けど、それはできなかった。

 ギャルゲーのシナリオを勝手に変えるのが怖いとか、色々考えてはいたが・・

 結局のところ、自分に自信がないだけだ。

 ・・・俺は、臆病者だ。


 まぁ過ぎた事考えても仕方ないな。雨が降っているなら早く帰ろう。

 そう思い、教室を出て廊下を渡ると、隣の教室でうつ伏せになっている白い髪の少女が目に映った。

 少し様子が気になったので、中に入ってみる。


「え・・」


 入った途端、思わず声が出た。

 勉強中に居眠りするのが珍しいとか、そう言った理由もあったけど・・


 真白が、泣いていたから。


「・・・・・・」


 机の上には黒縁メガネと、見開きのノートが置かれてあった。

 そこには、どうやって人と仲良くなれるかとか、空気を読む発言をするとか、人付き合いに関して色々書かれてあった。


 たまたま目に映ったけど、人の物勝手に見るのは失礼だよな・・


 ちらりと目線を彼女の方へ向ける。


「ごめん・・・なさい」


「・・・・・・・」


 誰に対して、何に対して謝ってるのかは分からなかったけど、人には言えないしんどい事があったのかなと思った。

 真面目な彼女が泣いたとこなんて見たことなかったし、今まで色んなことを我慢していたのかもしれない。

 こんな時、友達だったら、恋人だったら、家族だったら、

 苦しそうにしている、真白の側にいることができたのだろうか。


「俺が・・真白の苦しさを取ってあげれたらな・・」


 身勝手な思いかもしれないし、彼女は俺のことを必要としてないのも分かってる。

 でも・・目の前で苦しんでいる人を放っておくことはできなかった。


「ん・・う」


 ・・!やばい起きる!

 そーっと逃げ出そうとしたが、欠伸をしただけだった。危ねぇ。この状況で起きたら向こうが気まずいだろうしな・・・でも流石にそろそろ行くか。

 側にあったブランケットをかけて、その場を去る。

 全く、こういうのは俺なんかよりも海人(てきにん)がいるだろ。

 教室を出てすぐ、近くの壁にもたれかかる。


 はぁっ・・・何が “苦しさを取ってあげれたら” だよ・・

 こんなのまるで、俺が真白の特別になりたいと言っているようなものだ。


「・・・・・・・あー・・きっつ」


 閉じた心が開いた瞬間、俺は叶わない恋をした。






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