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止まない雨に傘を差して  作者: もち
1章:雪解雨
5/8

長いし重い

 

 放課後勉強の帰り道。

 優越感と余韻に浸りながら、俺は帰路を辿っていた。


 今日は色々あったなぁ・・勉強教えてもらって、恥ずかしいこと言って誤解を解いて、真白と恋バナすることになって・・ホントどうしてこうなった??

 いやでも・・・好きな子と話せたから結果オーライだ!!


「ただいま〜」


 自分の単純さを棚に上げ、上機嫌で家のドアを開ける。


「あ、はるにぃおかえり〜。ご飯にする?お風呂にする?」


 目の前にいたのは、可愛らしいフリルのエプロンを身につけた白髪赤眼の少女ー和泉真白にそっくりな人がそこに立っていた。


「それとも〜女装?」


「却下で!」


 しれっと女用のセーラー服を渡してきた手を跳ね除ける。


「えー釣れないなぁ。せっかく晴にぃの大好きな真白さんの格好してるのに」


「毎日見てりゃ耐性はつく。でも今の新妻ごっこ他の人にやるなよ??お前のビジュ的に初対面相手だと絶対色々やらかしそうで怖い」


「それはもちろんですよ。敬愛している小暮小晴(こはる)お兄ちゃんにしかやりませんよ」


「なぜに敬語」


「委員長感出るかなって」


「残念、真白は敬語は使わないぞ」


「なん・・・だと!?」


「わざと驚くのやめい」


「はぁーい」


 目の前にいる()()は俺の弟、小暮 小咲こさき。女装とカフェ巡りが趣味の中学3年生。得意なことは男子を堕とすことらしい。ちなみに小晴だから "晴にぃ" って呼ばれてる。

 兄貴・・恭介もそうなんだが、俺たち兄弟は血が繋がっていない。全員義父である小暮 恭一郎の養子であり、彼が捨て子の俺らを引き取って名付けてくれた。俺たち3人の他に双子の弟たちもいる。

 家族といえど俺たちは似ていない・・・それなのに、俺と小咲は女と見間違われるほど、中性的な顔立ちをしている。ついでに言っとくと、兄(恭介)と父(恭一郎)は美形イケメン。そして、双子の弟の片方は将来イケメンになるであろう美形ショタで、片方は小咲の影響を受けて女装を始めた男の娘。

 この家の男はイケメンか男の娘になる選択肢しかないの?だったら俺はイケメンになりたかったよ!

 と思いつつも、そうなってしまったら小暮小晴のキャラ自体が無くなってしまいかねない。無理だ。

 全く・・・小晴の家族がこんなキャラ濃いとか聞いてないぞ。捨て子だったなんて転生して初めて知ったし・・・小晴こいつも苦労したんだな。元プレイヤーとして同情する。


 長々と話しているが、別に今の家族が嫌いという訳ではない。幸い(父さんのおかげで)金には困っていなかったから休みの日には必ず旅行に行くし、誕生日や記念日は盛大に家族でパーティーを開く。

 俺に無関心で、不必要としていた前の家族と比べて、今の環境はすごく居心地が良かった。捨て子だった小晴おれを拾ってくれて、父には感謝し切れないほどの恩がある。

 ちょっとお節介な面はあるけど、恭介や小咲含め、家族は俺のことを大事にしてくれている。恭介は俺に友達ができるまで一緒にご飯食べてくれたし、小咲は俺が女子と接するの苦手だから、それを解消しようとして女装を始めた。本人は正直に言ってくれないけど。

 俺に失っていた居場所をくれたことが本当に嬉しかったんだ。彼らが俺を愛してくれるから、俺も家族の事は大切にしようと思っている。恥ずかしくてこんなこと言えないけどな。


「でも今の僕真白さんの見た目でエプロン着て、真白さんの声真似までしてるのに、晴にぃ良く耐えたね?完成度高めで結構破壊力強いと思うんだけど」


「自分で言うんかい・・・いやまぁ、今日の俺は絶好調だからな。リアル真白と話せた最強無敵の男に敵うものなど何もない!」


「ごめんよく分かんなかったから もっかい言って」


「えーっと、や、だからその・・今日お兄ちゃんは和泉真白さんと話したんですよ」


 ごめんこんな恥ずかしいこと2回も言いたくない・・


「えっうそ・・・晴にぃ遂に幻覚見始めた??好きな人が振り向いてくれないからって、危ない薬には手を出しちゃダメだよ」


「な訳あるか!ペアワークで一緒だったんだよ!!」


「っていう夢を見たんだね」


「違うから!!」


 俺は一から小咲に今日あったことを話して、なんとか納得してもらえた。「俺信用なさすぎでは??」って言ったら、「今までの行いがあるから」と言われて返す言葉もなかった。


「なるほど・・・にわかには信じ難いけど、やるじゃん晴にぃ、おめでと〜!・・・って素直に喜んでいいのこれ。晴にぃ的に、今の状況結構キツいんじゃない?」


「だと思うだろ?でもお兄ちゃんは決めたんだ・・俺は自分の恋より好きな人の幸せを優先するって!それが、俺の幸せだからさ・・・」


「カッコよく言ってるけど、それ後で後悔しない?大丈夫??枕濡らしてる晴にぃの未来が見えたんだけど」


「まぁ未来のことは未来の自分に任せればいいさ・・・それより、ご飯できてるなら食べてもいいか?お兄ちゃんお腹空いたなぁ」」


「話逸らすのが露骨すぎるけど、まぁいいよ。ご飯はできてるから早く食べちゃいな。話はそれからだ兄上」


「理解が早い弟で助かるよ」


「やかましいわ」


 ノリ良いなこいつ。






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 食事を終え、一段楽ついたところで弟と話を始める。


「真白の魅力は何と言っても努力家なとこだと思うんだよ。人付き合いも勉強も、一生懸命に頑張る姿勢が人間として格好良いよな。国立大学の医学部目指してるらしいんだけど、中学の頃から毎日勉強しててるんだ。休み時間も英単語開いて、常にいろんな教科の勉強してて怠ったことは一度もないし、流石にパン咥えてエナジードリンク飲みながら朝から勉強していた時は心配したけど、でもそれくらい頑張っているところが本当に尊敬できるっていうか、もうノーベル平和賞を予約できる才能を持ってるんだよな。しかも勉強だけじゃなくて運動もできる文武両道って完璧か??完璧という文字を当てはめるために生まれたような子なんだ。あ、勘違いしないで欲しいんだけど、ここでいう “完璧” って言うのは人としての面白みとか、抜けてるとことか、そういう人間味のある所も含めて俺は完璧って言ったんだ。最初の方は海人(憎きハーレム系主人公)のことで俺絶対嫌われてるなって思ってたんだよ。もう緊張しすぎて常に死神が横で鎌をたずさえてる感覚だったよ。でも、今回リアルで初めて話して、意外と二面性がある子なんだなって思って。まぁ俺にとっては欠点とかじゃないし、むしろギャップのある女の子最高って感じで、スタンディングオベーションっていうか、感無量っていうか、とにかく心臓パンクしそうだった。しかもさ、多分俺以外に異性で素を見せてる人あんまり いないと思うんだよ。だから何というか、俺にだけ見せる特別な一面が見られて、神と天使とこの世のありとあらゆる生命いのちに感謝したよ。今まで神とか非科学的なもの全然信じてなかったんだけどさ、俺にも運命の女神様はいたんだ!あと何と言っても、人に対して親切で優しいところが俺の好きポイントなんだよ。本当は裏で色々と苦労してるのかもしれないけどさ、それを見せずに表で人付き合い頑張って、苦手なことでも、嫌いなことでも頑張ってるのがすごくってさ。真白は自分のこと結構低く見ていたけど、他人のために頑張ろうとすることが、人としてすごいと思うんだ。実際に多くの人が真白の行動で幸せになってるのは統計的事実だしな。確かに恋敵との恋愛を助長させてる俺の行動は愚かかもしれない。けど逆に相談相手という話の口実はできた!真白と話せるだけで俺はもう十分幸せなんだ。誰かにこの幸せをお裾分けしてあげたいくらいだよ。まぁ俺が彼女に好意を伝えることはできないから、こっちの事情をどう伝えようか非常に悩ましいところではあるが、何とかなると信じてるさ。きっと全部上手くいくと俺の勘が告げている。それに、恋している時の女子はいつもの1.5倍可愛いんだ。好きな子であれば尚更可愛く見えるのは当然だろ、当然だよな?まぁ俺は色々あって真白が海人あいつに恋したきっかけを知っているんだが、それも尊くて・・海人と会ってから真白は自分の素を大事にしようと思えるんだよ。なんだそれエモすぎないか??ちょっとその役目俺と変わってくれ(無理)元からラノベのヒロインみたいなハイスペ美少女なんだけどさ、しゅじ・・海人に恋することで、好きな人に自分をよく見てほしいって思いから、たくさん自分磨きして、更に可愛くなっていったんだ。その過程が本当に推せるっていうか見惚れちゃって・・・もう俺の稚拙な言葉では言い表せないくらい魅力的なんだ。あれ以上真白と話していたら、致死量過ぎて別の意味で死にかけるところだった」


「長いよ!!!!!!」


 どこから持ってきたのか、ハリセンで思いっきり頭を叩かれた。


「何すんだ小咲!」


「それはこっちのセリフだよ!何分話すんだこのバカ兄!!聞いている人の気持ちもちゃんと考えろぉ!」


 正論だった。


「ご、ごめんなさい・・・つい勢いで・・」


 好きな人のことになると、夢中になっちゃうのは俺の悪い癖だ。

 やばい俺何分話したかな・・・

 小咲にハリセンで叩かれて現実へと戻ってきた。


「はぁっ全く・・・もう十分僕には伝わったからさ、とりあえずコーヒー飲んで落ち着きなって」


「お、おお。ありがとな」


 言われるがまま、桃髪の少年からコーヒーの入ったコップをもらう(流石に真白の姿のままだと語りづらいので着替えてもらった)


「美味しいんだけど・・・ぬるい」


「そりゃあんだけ熱弁してればねー・・」


 コーヒーが冷めるまでって・・マジで俺どんだけ話してたんだよ・・・


「で、どうするの晴にぃ」


「どうって?」


「真白さんとこれからどうするのかなって・・・最初にも言ったけど、本当にこのまま真白さんを応援しちゃっていいの?確かに真白さんからしたら、自分の恋愛を応援されて嬉しいかもしれないけど・・・晴にぃは、本当にそれでいいの?」


「・・・・・・」


「別に、恋愛くらい自分に強欲になって良いと思うけどな」


「・・・・・・・そう、だな」


 口では応援すると言ったが、苦しさが消えるわけじゃない。

 ゲームの設定で最初から決められた運命だとしても、好きな子が振り向いてくれたら嬉しい。付き合いたい、という思いも持ってるのかもしれない。

 けど、前世でも転生してからも、真白には助けられてばっかりで・・・もう好きとかそう言った感情を超えて、彼女が愛おしいんだ。真白が幸せになれるのなら、俺は彼女のために何だってしたいと思えるくらい。


 もし俺が気持ちを伝えたら、優しいあの子を困らせてしまう。それは嫌だった。


「まぁ、複雑だけど頑張ってみるさ」


「そっか」


 椅子から立ち、リビングを去った俺のことを、小咲は悲しそうな目で見ていた気がした。

 そしてその夜、俺は中学生の時の夢を見た。

 彼女に恋をした、忘れられない思い出をー






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