キャラが濃すぎる
前回までのあらすじ。自殺したらギャルゲーの世界に転生したんですが、赤ちゃんスタートでした。
それから16年経って、今は高校2年生の春。ギャルゲーの物語が始まって1年経過した。
現在の俺の名前は “小暮 小晴 ” 、前世よりも名前の小の字が増えた。
しかし、ここで問題が一つ・・・
「あ!こ、小晴くん!おはよう!!」
「お、おはよう小晴くん!今日もいい天気だね!!」
「こ、小晴くん喉乾いてない?飲み物買ってきてあげようか??」
新学期早々俺の机を囲む男子生徒たち。まるで美少女を目にしたかのような緊張ぶりだ。
・・・やっぱりこうなったか
「ううん、平気だよ大丈夫。ありがとね」
と、軽く言ってあしらう。
もう一度自己紹介しよう。俺の名前は小暮小晴。青い髪を肩まで伸ばし、華奢な体つきをしている “男の娘” キャラ。ズボンを履いていなかったら、今頃女子と間違われているかもしれない。
つまり俺は・・・ギャルゲー世界でヒロインの一人に転生してしまったのだ。
いや何でだよ!!このまま行くと変に主人公とラブコメ始まっちゃうじゃん!!嫌だ俺はできるなら和泉真白(推し)と恋愛してぇよ!男と付き合う趣味は持ってない!!
もちろん ”雨と乙女心” を全クリしたから、小暮小晴のことはよく知ってる。主人公の友人で、メインヒロインではないものの、何かとラブコメイベントに関わってくるキャラ。口の悪い俺とは真反対で、元々の性格は温厚で大人しい。女子と間違われるほど可愛らしい容姿をしているので、男子生徒に人気がある。
とりあえず、なるべくシナリオ通りに事を進ませるため、本音を出さずに小暮小晴を演じて今まで生きてきた。先ほどの男子生徒に絡まれるのも日常茶飯事なのだが、嫌なもんは嫌だ。同性から性的な視線で見られるとか溜まったもんじゃない。
「おはよう小晴くん。なんか元気ないけど大丈夫?」
「顔色が悪いぞ。大丈夫か?」
「ああ、おはよう太一、大和。いやいつもの事だよ」
と言って、先ほど俺に話しかけてきた男子生徒に視線を送る。バレてないのか知らんが、チラチラとこっちを見るのはやめてほしい。
「「あー・・」」
何かを察したように2人は納得する。
こいつらは俺の数少ない友人、鬼崎 大和と嶋 太一。俺に不愉快な目を向けず接してくれる男子生徒たちだ。
大和は身長が190cm越えの巨体と強面から周囲に怯えられていて、太一は人見知りな性格で人と話すのが苦手らしい。それが理由で2人とも周りと馴染めていなかった。
俺もクラスから浮いてたし、3人が仲良くなったのは必然かもしれない。こうして素で話せる友人がいるのは嬉しい限りだ。
「朝から災難だったね」
「帰りコンビニでアイス奢るぞ」
「や、いいって大和。そこまでしなくても」
どうせこれから毎日なるんだし・・・
「いや、鬼崎と嶋。貴様らはもっと小晴を甘やかすべきだ。そして欲望にまみれたゴミ虫共から小晴を守れ」
いつからそこにいたのか、急に俺たちの会話に黒髪イケメンが割り込んできた。男の言葉に大和と太一が狼狽えている。
・・・・・・
「そういえば、新しいクラスでも俺たち3人一緒でよかったなー!俺安心したよ」
とりあえずイケメンをスルーして話を続ける。
「なっ・・・兄を無視するだと、小晴・・・・お前はいつからそんな悪い子に?!はっまさかお前たちが変に誑かして・・」
「ないからそれ以上2人に近寄ったら殴るぞ兄ちゃん」
そう言って兄を一蹴すると、子犬のようにシュンと小さくなってしまった。顔がいいからどんなことしても絵になるな。
この人は俺の兄、小暮 恭介。高校3年生で生徒会長やってる。容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群のハイスペック超人なのだが・・・過保護なくらい俺に付き纏ってくる変人でもある。
今日みたく、朝の時間や休み時間になるとすぐ俺の教室にやってくる。このブラコンぶりさえなければ、もっと女子生徒からモテたろうに・・
学校で家族と一緒にいるのが嫌だってのはあるけど・・・それ以上に、弟を守る兄ってよりかは、”妹を守る兄” 感が強いから嫌なんだよなぁ・・
いやまぁ普通に優しいし、一緒にいて心強いから助かってはいるけども。大和や太一と仲良くなる前は兄ちゃんと昼食べて、ぼっち飯回避してたからな。
思春期特有の反抗期に近いのかもしれん。あと前世の年齢合わせると俺の方が遥かに年上だから、年下に守られるのは恥ずい。
「大体、兄ちゃんもう受験期なんだから、いつまでも俺に構ってないで勉強したらどうだ?」
「ふっふっふ。兄ちゃんは全ての仕事を終わらせて小晴に会いにきてるから問題ないさ!」
この天才イケメンめ!
俺より全然頭いいのが解せない・・
「はぁっ・・わかったけどさ、一つ気になることがあるんだけど」
「どうした?何でも言ってくれ」
「何か今日兄ちゃんの周り人いなくない?いつもだったら女子が10人くらい居なかったっけ」
この兄、黙っていれば顔だけはいいから女子のファンが多い。
そんなファンをどう切り抜けて、ここまで来たのだろうか。
「なに、簡単なことよ。壮真を囮にして俺は逃げてきた!」
「いやシンプルにクズじゃねぇか!」
壮真君は兄ちゃんの友達で、同じく顔がいいイケメン。兄が正統派イケメンだとしたら、壮真君は硬派イケメンと言ったところか。よく一緒にゲームして遊んだりしている。
全く俺の兄は何をしてるんだ・・・今度壮真君にお詫びの品渡しとこう。
「っと、すまない。そろそろ時間みたいだ。また会おう小晴!」
ダラダラと話していたら、もうすぐ予鈴のチャイムがなる頃だった。
「もーこなくていいからな兄ちゃん」
はぁっ・・・疲れた。
「お、お疲れ様。小晴くん」
「相変わらず、嵐のような人だったな」
「本当、今日は朝から疲れることばっかだぜ」
「でも、それくらい小晴くんのことが大切なんだよ生徒会長は」
「それは分かるけどさ・・・流石にこの年になっても兄に頼るのは恥ずいだろ・・」
そう言って、釈然としない顔でそっぽを向く。自分が子供っぽいのは百も承知だが、そうせずにはいられなかった。
「別にいいんじゃないか?頼りたくなったら人を頼れば。会長の言うとおり、俺らも小晴を守られるくらい強くなるからさ、だからいつでも頼ってくれ」
「そうだよ小晴くん。僕たち友達なんだから」
「お前ら・・・ありがとな」
友人の親切さが心に染みる。俺、本当周りに恵まれてるなぁ・・
でも何か今の境遇考えると・・・・騎士に守られてるヒロイン感あって男として格好悪いと思ってしまう。自分でできることは自分で解決しないとな。周りに頼ってばっかじゃダメだ。
「2人も困ったことがあったら何でも言ってくれよ!」
「もちろん」
「ああ」
そうして会話が終わり、2人は自分たちの席へと戻っていく。
さて、と。
高校2年生、それは、ギャルゲーが加速していく時期だ。
正直、俺は今年が一番修羅場になるんじゃないかって思ってる。それは、まぁ見たら分かる。
「海人くん!今日も一緒にお昼ご飯食べましょうね♪」
水色髪ロング美少女が、一人の男子生徒に話しかける。
「はぁ?!海人がアンタなんかと食べる訳ないでしょ!!離れなさい!」
黒髪に対抗するように、金髪ツインテール美少女が男を庇う。
「みんな何言ってるの?海人くんは、寧々と一緒に食べる〜って言ってくれたんだよ?」
そう言って、桃髪ボブの美少女が男の腕に抱きつく。
「まぁまぁ喧嘩しないでさ、みんな一緒に食べようよ。そっちの方がきっと楽しいよ」
「海人・・・まぁ、海人がそう言うなら。あっでも別にアンタと食べたかった訳じゃないんだからね!」
「そうですね。海人くんが言うならそれに従いましょう」
「みんな海人くんの寛大さに感謝するんだよ〜?」
いや寛大じゃなくて優柔不断なだけでは?
と思ってしまう俺の脳みそは、捻くれすぎてバグってるのかもしれない。
誰がどこから見ても羨ましいハーレム状態。他の男子生徒が指を咥えて嫉妬の目を向けている。
そう、アイツらが “雨と乙女心” の主人公とヒロイン達だ。
主人公 “長谷川 海人” 冴えない顔の男子生徒だが、フラグを立てまくってヒロインに好かれてる天然タラシ。
水色髪美少女 “橘 燕” は転校生のハーフお嬢様で、主人公の元幼馴染。
金髪美少女 “新庄 日向” は主人公の現幼馴染でツンデレキャラ。元幼馴染の燕と海人のことでよく争っている。
最後に桃髪美少女 “高倉 寧々” 学校のアイドル的存在で、若干ヤンデレ。
他にも義妹が2人いたり、ギャルがいたり、従姉妹の先生が担任だったり、当然ながら先輩キャラもいて、今年から後輩も入ってくるから波乱万丈待ったなしだ。
委員長キャラの和泉 真白(俺の推し)は積極的に主人公にアピールするキャラじゃないから、朝の時間は友達と一緒に話すか勉強してる。
やっぱ大人しい子がいっちゃん可愛い・・・なんて本人の前で言ったら平手打ちされそうだけど。
転校生、幼馴染、学校のアイドル、義妹2人、ギャル、従姉妹の先生、先輩、後輩、委員長・・・そして、俺(男の娘)
以上この11名が、長谷川 海人(主人公)を取り合うヒロインレースに参加する。
ゲーム上ご都合設定にしたんだと思うけど、全員同じクラスとかどんな偶然だよ!普通目立つ美少女を何人もクラスに配置するか??
・・・まぁ、好きな子(真白)と一緒のクラスになれたのは嬉しいから何も言わんけどさ
そう思って、遠く離れた真白の席に目を向けると・・・彼女と目が合った。
「「?!」」
お互いに驚いて目を逸らす。
えっ偶然か・・?いやでも俺が見る前にあっちから見てたよな・・・何で??
主人公に好意を抱いてるから、そっちの方気になって見るのは分かるけど・・何で俺?
もしかしたら俺のこと好き・・・なんて流石に考えないけど、好きな子に見られた反動で、動悸が止まらない。
俺は、和泉真白を恋愛対象として見ようとはしなかった。推しを現実で拝めるだけでありがたいのだ。それ以上を望んでしまったらバチが当たると思っていた。
けど、雨と乙女心(こっちの世界)に転生して、彼女の人柄を深く知ってしまった。
毎朝誰よりも早く学校に来て勉強している頑張り屋さん。クラスで意見が対立した時にそれを穏便に解決できるリーダーシップと機転の良さ。そして周囲に勉強を教えられるくらい頭が良くて優しい。ただ単に教えている訳じゃなくて、ちゃんと相手の目線に立ってどこが分からないのか考えて、その都度やり方を変えながら説明している所がすごい。一人一人を個人として見ていて、誠実に向き合っている。もちろんゲームをプレイした時に彼女の性格は理解していたつもりだったが・・・実際の真白は、俺の想像を遥かに超える魅力的な女の子だった。1人の人間として、心から尊敬していた。
一応中学同じだったんだが、多分覚えていないか。俺が彼女に見惚れていたことも、グループワークで助けられたことも。
・・・人を好きになる理由なんて、これで充分な気がする。
その日は一日中、真白に見られている緊張感で全く授業に集中できなかった・・これ俺の自意識過剰じゃないよな?!




