第七話 寝坊助
ーー穏やかな、風が吹き三人の間を通り過ぎていく。
だが一人だけ、心の内で穏やかじゃない者がいた。
(あ、やべっ、これ、またやらかしたかー。二人とも怒るのやなんだよなー。)
ソウは寝ぼけながらも自分の置かれている状況を把握した。実は昨晩、食事を済ませた後、三人は作戦会議をしていた。出発は日の出と共に、起きた順番で起こし合う約束をしていた。しかしながら、二人が仁王立ちで見下ろしていることに、ソウは察した。ソウが起きれない理由の一つとして日差しが出てもソウは、日が差さない所に体が勝手に転がり、朝日では必ずと言っていい程避けてしまう変な寝相があるのだ。
「ソウ、お前まーたやったな。」
ゲンは仁王立ちで、ソウを見下ろしている。
「ゲンさん、こりゃあ、、遅れる理由が分かったが気がするよ。」
ラルクはやれやれといった感じでゲンに言う。
「何だよ、アンタらおじさんだから、こっちは育ち盛りなんだよ!仕方ねえだろ!それに、寝相なんだから、どうにも出来ないし。」
ソウは、起きてすぐに二人から何か言われるだけで少し機嫌が悪くなっていた。
「だから、お゛れ゛は゛、まだ若いんだっての!!」
ラルクはソウに向かって大声で言うが、空を切るように悲痛なくらいシーンとなった。ゲンはソウの肩にポンと手を置き「ソウ、お前がやってることは仕方ない。だけどなお前がもし、一人で野営し、寝込みを襲われたらお前は寝相だからって言い訳するのか?まあ、言い訳する余地もなく死んでしまうんだがな。覚えておけ、今は俺らがいる、だけどお前が大人になったら、一人で狩猟することだってある。そんな時、誰も頼れねえ、己のみだ頼れるのは。今は寝坊しようが何しようがお前の親である以上言わせてもらう。それが親ってもんだ。まあ、とりあえずゲンコツな!」
ーー ゴンッッ!!
(んぎゃっ!)
鈍い音が野営地から森林の奥深くまで響き渡る。
「今回の遅れの分はこれで済ませてもらう。次はこれの1.5倍でやるからな、期待しとけよ?」
「ゲンさん、なんでちょっとウキウキしてんすか。遅れてるんですよ時間。せっかく昨日は急いで来たのに、遅れたらまた野営なるのは勘弁ですよ。それに、さっきゲンコツでソウ、伸びてますって。」
「ゲッ、出力ミスったか。おーい、起きろー。」
ゲンは伸びたソウの頬を往復ビンタで起こす。
「アバババババババババババババー、アパーー」
「ゲンさんそれやりすぎじゃ、ん?最後なんか春日?あああ、気のせいか。」
「ぐぞっ、お゛や゛じ、グぞっ」
ソウは、両頬が赤く腫れ上がり、ゲンを睨みつける。
「へいへい、寝坊助さんよ、ちゃっちゃと支度しろい。」
(村まで本当につけるのだろうか…)
ラルクは内心、この親子と一緒に居る方が、自分で帰るより遅いのではないかと思い始めていた。そして、無事に辿り着けるように心から願ったのであった。
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