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第二話 遊覧飛行

――ズッドーン


轟音が鳴り響く。

辺り一面に土埃や、地に根付いていた草が宙に舞う。

茶色に染まった視界の中、黒い影。

赤い閃光が二つ。


姿形は土埃に遮られ、輪郭しか分からないが、相当な力で地面を抉ったのだろう。

そして――


足元には、横たわる人々が、そこにいた……。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ソウ、お前なぁ……なんだ? その飛び方はよ。気色悪いわ!」


ゲンは顔をしかめ、羽をパタパタとさせたかと思えば止まって落ち、かと思えば急にバサバサと勢いよく上がる――そんな動きを繰り返すソウに向かって言った。


「仕方ないだろ! こっちは、はじめてなんだよ! これでぇ……もア、がんばってぇェェェェェアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛!」


言い返そうと、思考を一瞬でも抜いた瞬間。

ソウは、真っ逆さまに落ちてしまった。


「ったく、本当に世話が焼ける息子だよッッ」


  ばさっ! ヒュンッ!


フライバエの羽を一気に折り畳み、三つの目で距離と位置を正確に測る。

ゲンはその場で、最高率の出力で飛び出した。

そして、ソウを瞬く間に救出したのだった。


「まだ、練習が必要そうだな……」


少しため息混じりに、ゲンは言う。

ソウも、だいぶこたえたのか、元気がなくなっていた。


「う、うん……。でも親父、俺、共鳴したんだぜ。約束、守ってくれよ。その首飾り」


ソウが指差して言ったのは、ゲンのTシャツの下に隠された首飾りだった。


「ああ、そうだな。約束は守らないといけない。だがな、俺が言ったのは、あくまでその力を使いこなして、一人前になったらだ。

お前は、まだ使いこなせていない。母さんにも、申し訳ないだろ? それじゃあな……」


風が、サァーっと吹き抜ける。

ゲンとソウを包み込むようにして、去っていった。


「それは、分かってるよ。だけど、嬉しかったんだ。やっと俺に、共鳴してくれたって思って」


ソウは少し思い出すようにして、微笑みながら言った。


「ああ、分かってる。なんだかんだ、お前は頑張ってるからな。

まあ、今は父ちゃんの背中でも見とけww」


「親父、背中は見えねえよ」


「そういうことを言ってんじゃねえよ。

まあ、とりあえず、捕まっとけよッッ」


  ビュン!


いきなり加速し、飛び出したゲン。

一瞬ためらったソウだったが、それよりも――


まじまじと上空から見る景色に、目を奪われていた。


深々と生い茂る緑の大地。

木々の軋む音。

河と思えないほど、果ての見えない水の筋。

山々は勇猛にそびえ、水平線の向こうには、見たこともない景色が広がっている。


(……ス、スゲェ……)


言葉にならないほど、ソウは肌身で感じていた。


(フッ、まだまだガキだな。

だが……よく共鳴できたもんだ。何がそうさせたのかは、いまいち分からんが。

なあ、リン。見てるか?

ソウが、こんなにも元気に育ってるんだぜ。信じられないだろ?)


ソウを抱えたまま、ゲンは亡き妻を思う。


首から下げた首飾り。

そこには、この世界に存在するはずのない――銃弾があった。

先端はわずかに変形し、陽の光を受けて、鈍く反射している。


ソウは景色を見つめ、

ゲンは妻を憂い、

一行は、着々と「巨」へと近づきつつあった。


いつもお読みいただきありがとうございます。皆さまからのブックマークや高評価が、執筆の大きな励みになっています。これからも楽しんでいただけるよう精一杯書いていきますので、引き続き応援よろしくお願いします!

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