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グリーン・インパクト  作者: 未来が見えない
序章 始まりの血脈

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第十五話 食糧問題ー4

 ーー咆哮。一撃で獲物を仕留められなかった怒り。獲物が沢山いるのに、一匹も食せない怒り。

 顎虫蛇(アギトスネーク)は、表皮に浮かび上がった血管がみるみる赤くなり、本格的な戦闘態勢に入った。


 そして、その長くて大きい体躯をとぐろ状に巻き、まるでエネルギーを蓄えるかのように渦巻いた。次に全身の筋肉によって制御された体躯を、緊張した筋肉の強張りがピークに達したとき、解放――


 体躯は捻転し、先端の顎がまるで掘削機のように、いとも簡単に地面を削りながら掘り進んだ。


「なんだ!?こいつの動きは!!」


 予想外の動きに戸惑う一同。だが、ゲンによる指揮により、村人達は一瞬たりとも気を緩めてはいない。


「お前ら、地中に潜ったやつに注意しろ!飛べるやつはすぐに退避するんだ!!」


 そして、ジンの指揮により飛べる者は遠くの木に逃げ、窺うようにしてジン達を見つめた。


「親父、俺はやれるぜ!」

 フライバエの形態変化を、ソウは完全にものにしていた。そして、ソウはまた新たな試みをしようと企んでいたのだ。


「ソウ、無理はすんなよ!」


 ゲンの右腕は装甲のような見た目へと変化しており、その刀身は橙色を帯び、まるで琥珀のように年月を蓄積した異様さを漂わせている。


「ゲンさんはガードして、俺がヤツに一発お見舞いする!その隙にみんな、胴体に切り付けるんだ!」


(一同はうなづいた。)


 顎虫蛇(アギトスネーク)は、金属音のような音と共に地表へと「ドガン」と音を立てて現れた。村人を完全に襲おうとしていた。

 しかしゲンは音を頼りに、フライバエの形態変化を一瞬だけ発動して羽を出現させ加速。空気抵抗を減らすため即座に解除し、右腕の大剣で受け流すようにガードした。


(ギャリリリリリィッッ)


 鈍い金属音と共に回転速度が落ちていく。

 回転が止まった、その瞬間――ラルクは顎虫蛇アギトスネークのこめかみに照準を合わせた。黒い鋏に、ロケットのように貝が出現する。


「ぶっ飛ばすぜ!」


 ラルクが呟いた刹那、空気が波打つ。

 体勢を変えようとした顎虫蛇アギトスネークへ、鋏を閉じ、槍のように突き刺した。


「キシャーッッ」


 顎虫蛇アギトスネークは頭をのたうち回す。

 好機だった。サブは銛のような腕を尻尾に突き刺す。


「やったッス、てっええうお゙お゙」


 顎虫蛇アギトスネークは暴れ回り、サブもつられて振り回される。そこに――


「いくわよっ!やあああ」


 レイの腕はいまだに不慣れな形態変化で出来ている刃だったが、それでも腹部を切り、確かな傷を付けた。レイはすぐさま後ろに退避する。


「レイっ!ナイス!」


 ソウは、レイが切り付けた傷へ追撃を仕掛けようとしていた。


「宿れ……装岩虫(ダンガンムシ)

 右腕が岩状の外殻に覆われ、その外殻は何かを飛ばすかのように逆立つ。ソウは飛行したまま、右腕を薙ぎ払うように振り撒いた。


装岩弾(ダンガン)!!」


 ――名を叫ぶと同時に、掛け声のように岩状の破片が飛び出す。鋭く尖った破片は、重力も相まって加速し、傷ついた腹部へと突き刺さっていく。


顎虫蛇アギトスネークは叫ぶ。)


 突き刺さった岩の破片から血が噴き出し、顎虫蛇アギトスネークの意識は完全にソウへ向けられていた。

 そして残る力を振り絞るように、再びとぐろを巻き、エネルギーを溜め始める。


 だが今回は捻転せず、顎で喰らいつくかのようにソウへ飛び込んだ。


(なっ!空を飛んでるのに、こんな……近くまで……)


 ソウは装岩弾(ダンガン)を顎に当てるが、傷が付くだけで勢いは止まらない。顎虫蛇アギトスネークは口を大きく開いた。


「ソウ!!!」


 地上からレイが叫ぶ。

 誰もが反応できずにいた、その中で――ただ一人、この機会を待っていた人物がいた。


「ッッ親父!!?」


(風を切る音)

「だーから、ソウ、お前は()()って言ったろ?」


 突如、地表から飛び出したのは、ソウの父、ゲンだった。


「我が源、我が身宿らせ――“祖魄創臨”(ソハクソウリン)


 走馬灯のように、ゲンの記憶が甦る。一人の少女が手招きしているように見えた。やがて霧散し、光の粒子となって力を与えたかのように感じられた。


凶刃・怒怒羅(キョウジン・ドドラ)


 複雑な形態変化により、腕だった大剣は完全な武器へと再構築される。

 全身は真紅の分厚い装甲に覆われ、羽も赤黒く堅牢なものへ変わり、まるで武者のような姿へと創り変わった。


 腰を大きく捻り、大剣へ力を溜めて――


「!?」


 ――刹那。


 薙ぎ払われた一閃。橙色の刃の軌跡が残り、

 顎虫蛇(アギトスネーク)の首が宙を舞った。


 ソウは、異様なゲンの姿と、一撃で屠られた顎虫蛇アギトスネークを交互に見て、ただ驚愕していた。


「まったく、今回は骨が折れるかと思ったがな。ソウ助かったぞ。奴の回転さえなければ、こっちのもんだ。とんだ巨大蛇来い来い囮作戦だったな。かっかっか!」


 ゲンは大剣を担ぎ、大笑いしている。


「ゲンさーん、降りてきてくださいよー!」


 地表で、ラルク達が呼んでいた。


「ほら、行くぞ、ソウ。」


 ゲンはソウに声をかける。


「ああ……」


 ソウは返事をするが、声に力はなかった。


(いつまで経っても、親父の背中が遠い……。)


いつもお読みいただきありがとうございます。皆さまからのブックマークや高評価が、執筆の大きな励みになります。これからも楽しんでいただけるよう精一杯書いていきますので、引き続き応援よろしくお願いします!

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