表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/68

◇◆◇◆◇


「―――、…?」


 声が、聞こえる。

 体を揺さぶられている気がして、オレはゆっくりと、声のする方を向き目を開いた。


「た、橘くん、起きて!」


「ん~……くれ、は?」


 間近でオレを呼ぶその人物の名前を呼べば、恥ずかしいのか、頬を少し赤らめている。

 目を擦りながら体を起こせば、紅葉が時計を見せ、少し慌てていた。


「も、もう帰ってくるかもしれないの! だから、早く出ないと……」


 あぁ~なるほど。

 どうやら寝てしまったらしく、外はもう、すっかり日が暮れていた。


「もう少し……このままがよかったな」


「そ、それは同じだけど……」


「大丈夫、ちゃんと分かってるから」


 あくびをしながら立ち上がると、携帯が鳴る音が聞こえる。どうやら紅葉のらしく、携帯を開くなり、紅葉は更に慌てた表情を浮べる。




「も、もしもし?――えっ。そう、なんだ……う、うん。分かった」




 さっきまで慌てていたのに、今ではすっかり大人しくなっていて。何があったのかと訊ねると、紅葉はどこか恥ずかしそうに視線を逸らしながら、言葉を口にする。


「な、なんだか今日は、帰らない、って……!?」


 その言葉を聞いた途端、オレは言葉を遮るように、紅葉を抱きしめていた。

 帰らないなら……考えることは、一つしかないよな。




「――家に、泊まらない?」




 耳元で囁けば、恥ずかしいのか、紅葉はすぐに返事が出来ないようで。それがまたカワイイなと思って、なんだか、いじめたくなる自分がいた。


「答えないってことは……肯定した、ってみなすよ?」


「え、えっと……な、何もしない、よね?」


「ん~ちょっとはするかも、ね」


 そうやって言えば、また更に顔を赤らめて。

 ホント、こうやって触れ合えるようになるなんて、思ってもみなかった。


「と、泊まるけど……ダメ、だからね」


 上目遣いで言われ、今度はオレの方が恥ずかしい気持ちになってしまう。

 こーゆうのを無意識でやられるから、こっちは保つのに苦労するよ。


「そんじゃ、オレ外で待ってるから」


 玄関を出て、しばらく外で待つ。

 空はもう暗く、肌寒い感覚が、夢にも見たあの時を想像させる。


「お、お待たせしました」


「よし、じゃあいこっか」


 手を握れば、紅葉は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに、ほっとしたような笑みを浮かべていた。




「――そういえば」




 車を走らせていると、ふいに、何か聞きたいのか、紅葉が話題を出す。


「起こそうとした時、すごく楽しそうな顔してたけど……何か、いい夢でも見てたの?」


「あぁ、見てたよ。――ま、ちょっと悔しかったりもしたけどね」


 それでも、今はそれさえもいい思い出に感じる。こうやって出会えて、恋人になれて……うれしい気持ちが溢れてきたせいか、ふふっと笑みをこぼしていた。


「どんな夢だったか、知りたい?」


 頷く紅葉に、ちょうど信号で車が止まったのを見計らい、すっと、頬に手を伸ばしながら顔を近づける。




「それはね――紅葉が、初めてオレに微笑んでくれた時のこと、だよ」




 囁いたあと、そっと頬にキスをすれば、紅葉は触れられた部分に手を当て、目を見開く。


「え、駅でのこと、だよね? 私、ちょっとしか覚えてなくて……」


「しょうがないって。あの時、オレに対して何も思ってなかった訳だし。――あの瞬間から惚れたんだから、オレが覚えてて当然だろう?」


「も、もう! そんなこと言われたら、恥ずかしいのに……」


「だって、ホントのことだから」


 こうやって話して、触れ合って。

 同じ時間を共有出来る幸せに、オレはどんどん、酔いしれていた。




 これからも、ずっと……。




 そばにいたいと、ここまで思った相手は初めてで。

 離すものかと、改めて、密かに決意をした。


                 Fin.


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ