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「大丈夫……これ以上は、市ノ瀬が求めるまではしない」


 やわらかな笑みを浮かべ、橘くんはそんなことを言う。

 求めるまで、って。

 また恥ずかしいことをと思いながらも、やっぱり、こういうところが好きだなぁと、改めて実感していた。




「――でも、オレのって印ぐらいは許してね」




 えっ? と思い首を傾げると、橘くんは私の首をなぞる。


「ここに、付けといたから」


「付けたって……も、もしかして!?」


「あぁ、バッチリとね」


 ニカッと笑う橘くんに、私は慌てて手鏡で確認をする。そこには、確かにくっきりと赤いものがあって……今まで付けられたことがない私は、顔が一気に赤くなってしまった。


「こ、こんなの、って……」


 キスマークなんて、生まれて初めて付けられてしまい、私は、どうしていいか分からなくなっていた。


「も、もしかして……イヤ、だった?」


 私の雰囲気を察してか、嫌なことをしてしまったのかと気にする橘くん。

 それに私は違うからと言い、こんなことが初めてなのだと伝えた。


「だ、だから……よく、分からなくて。うれしいのに、どうしたらいいんだろうとか、ちょっと……軽く混乱しっ!」


「――ごめんね」


 ぎゅっと抱きしめ、謝罪の言葉を口にする橘くん。嫌ではないと伝えたものの、何も聞かずにしたことは、少なくとも悪いと思うからと、そんなことを言われた。


「ちょっと、調子にのり過ぎた。市ノ瀬といたら、すっごい独占したい気になって……こーやって、オレの彼女なんだって、見せ付けたくなった」


 ど、独占だなんて……。

 そんなふうに思ってくれているのが、少し心配だった。これが、いつか狂気の独占に変わらないかどうかと。




 でも……橘くんは、橘くんだから。




 絶対に大丈夫なんて保障はないけど、信じれると、そんな不確かな自信が、私の中にあった。


「ちょっと、驚いただけ、だから。――わ、私も独占したいな、なんて……」


 ここまで誰かを必要としたのは、初めてだと思う。

 だから橘くんが言う独占したいという気持ちも、今なら理解出来る。


「ホント……市ノ瀬はカワイイって」


 ありがとうと耳元で囁かれ、私はまた、心臓を大きく高鳴らせていた。




「――そろそろ終わったぁ~?」




 突然の声に、私たちは驚いて、同時に声の方を向いた。


「声かけても気付いてくれないし、二人の世界入っちゃってるしさぁ~」


「朔夜、オレが言ったとおりだろう? 彼女が出来れば、こーなるってな」


 そこにいたのは、美緒と海さんの二人。

 慌てて離れると、私は布団で顔を隠していた。

 あ、あんな場面見られちゃうなんて……!

 どこから見られていたのかは気になるけど、聞いたらもっと恥ずかしくなりそうだったから、聞くことは止めておいた。


「これでさくも、俺が美緒に夢中になるのが分かっただろう?」


「わ、分かったって! もう二人が何してても文句言わないから」


「それにしても紅葉、結構大胆なのね? 「独占したいな、なんて」とか言っちゃって!」


「い、言わないでよ! 恥ずかしいんだから……」


 も、もう穴があったら入りたいよぉ。

 それからみんなで雑談して、帰る最後まで、私と橘くんはからかわれっぱなしだった。

 みんなと話した後は、すごく気分がよくて。

 部屋のガラスに映った自分は、ここに来て、一番いい顔をしているようだった。


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