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―朔夜side―


 市ノ瀬が事故に合った翌日、オレは身が入らなかった。何をしてもため息が出てきて、昨日まで浮かれてたのにどうしたんだと、色々な人から声をかけられてしまう始末。

 それでも、学校が終わればすぐに病院へと行きたかったのに――福原から、更に落ち込むような報告が届く。

 メールには【しばらくは面会謝絶】との文字が書いていて、それが余計、心を掻き乱す要因となった。

 仕方ない、よな……今日も、実家に行くか。

 あの後アニキは警察に引き渡され、今も警察署にいる。母親にも連絡がいき、昨日は泣きながら電話をかけてきて、色々と大変だった。

 そりゃあ自分の子どもが犯罪を起こしたとすれば、慌てない親はいないだろう。




「かあさん……ただいま」




 実家に帰ると、母親は寝室で寝ていた。一晩中泣いていたのか、目が腫れていて、クマまで出来ている。


「さく、や……紅葉ちゃん、は?」


「……しばらくは、面会謝絶だって。けど、意識がないとかじゃないから、安心して」


 それを聞いて、母親はほっとした表情を見せる。けれど、すぐに不安が押し寄せたのか、再び暗い表情へと戻ってしまう。


「母さん、ね。純は、いつか何かするんじゃないかって……心配だったの」


 ぽつり呟かれた言葉は、とても意外なもので。

 いつかこーゆうことが起きるんじゃないかと、母は危惧していたらしい。


「お父さんがあーゆう人で、純も年々、お父さんと同じことをするようになってきたから」


 同じことって……まさか。

 イヤな予感が、頭を過る。幼い頃の父親の姿は、言われてみれば、父親と同じところが多々あったから。


「紅葉ちゃんのこと、たまに怒鳴ってたみたいだし……早く帰してあげようとしても、純は聞いてくれなかったから。――止められなかったことは、母さんにも、責任があるわ」


 静かに涙を流し、ごめんねと謝罪の言葉を口にする母親。こんな状況では、オレが市ノ瀬と付き合うことになったとは、到底言えない。

 今言っても……余計、混乱させるだけだよな。

 そう思ったオレは、母親に差し入れをして、その日は自分の家へと帰った。




「――やっと帰ったか」




 駐車場に車を止めると、そこには幸希さんの姿が。車には彼女の姿もあり、目が合うなり、軽く会釈する姿に、オレも慌てて頭を下げた。


「今、純哉と会って来た。――アイツ、抜け殻みたいになってたよ」


「……そう、ですか」


 自分が会いに行き、すぐにでも文句を言いた。だが同時に、どこか会うことを怖がっているような、情けない自分がいることも事実だった。


「話したいんだけど、いいか?」


「はい、構いませんよ。――彼女さん、上がらないんですか?」


「愛美は疲れてるからな。今日は俺だけだ」


 アニキの面会には、鈴木さんも行ってくれたらしい。そのせいか、今は酷く疲れていると、幸希さんは言った。


「今のところ、純哉には傷害罪、脅迫罪と色々あるが……一番重いのは、殺人未遂だろうな」


 ドンッ! と、頭に大きな物でもぶつかったかのような衝撃。並べられた言葉が重く、罪悪感を覚えずにはいられなかった。

「紅葉ちゃんが減刑を望めば、刑務所とかはないと思うが……それでも、執行猶予が数年付くだろうな」




 オレの心は……迷っていた。




 弟としては、減刑を望んでいて。

 でも、彼氏としての自分は、こんなことをしたアニキを酷く恨んでいて。




「どうしたら……いいんでしょうね」




 弱音とも思える言葉が、ぽろりと口からこぼれ落ちる。

 誰かにすがりたくて、どうしようもない思いが、沸々と湧き上がってきてしまう。




「朔が、やりたいことをすればいいんじゃないか?」




 沈黙の後聞こえたのは、そんな言葉。

 疑問を浮べるオレに、幸希さんは言葉を続ける。


「何が正解、って言えないけどさ。――今、一番やりたいことをすればいいんじゃないか? 悩んでるより、少しでも進んだ方がいいだろう?」


「…………」


 幸希さんの言葉は、一言一言が、ずんと心に落ちてきて。

 弱っていくばかりだったオレの心を、しっかりと支えてくれるように力強かった。

 オレがしたいこと……それは、市ノ瀬の側にいること。

 そしてじっくり話すことだと、そう頭に過った。




「オレ――話してきます」




 どこか吹っ切れた気がして、オレは明日にでも、ゆっくり話そうと決めた。母親だけでなく……アニキとも、近々、会う決意を固めた。


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