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「美緒~そろそろ始まるぞぉ!」
少し離れた所から、海さんが私たちを呼ぶ。
それに美緒は元気よく返事をすると、私たちは、海さんがいるステージ近くへと向った。
「ちゃんと前の場所、取っておいたぞ」
どうやら橘くんから連絡があったらしく、海さんはいち早く、この場所を陣取ってくれていたらしい。
「紅葉ちゃんは、オレたちの前な」
そう言って、海さんは背中をぽんと押す。
ステージはT字の形をしていて、地面から1メートル離れており、見上げるほどの高さがある。
橘くん……どうなったんだろう。
ステージには、司会者である生徒が出てきて、これから行なわれるショーについての説明や注意をしていく。
出場は、全部で二十組ほど。
持ち時間は、一組二分~五分らしく、橘くんの番が来るまで、最短でも二十分。思ったよりも少ない時間に、心配で鼓動が早まってしまう。
「それでは、デザイン科による作品、とくとご覧下さ~い!」
司会者がそでにはけ、照明が暗くなる。
初めの数組は、特徴あるデザインの服。ハロウィン的な要素や、ゴシックな装いだ。
次の数組は、ふだんの服にちょっとオシャレをというのを意識した服。製作者が女子というのもあってか、服は女子の物が多い。
「あと、三組ぐらいか……」
ぽつり、海さんがそんな言葉を呟く。
時計を見れば、既に一時間はゆうに経っていて。
裏には来ているのか。それともまだ来ていないのかと、手に汗を握りながら、残りの組を見ていた。
でも、目の前で展開していることは、頭には入らなくて。
考えるのは、橘くんのことばかり。間に合って下さいと、何度も神様に祈っていた。
――それなのに。
「全員もう一度、ステージに上がってもらいましょ~!」
最後であろう組が出ても、橘くんの名前が呼ばれることはなく。
横一列に、今まで登場した人たちが整列した。
ダメ……だったんだ。
周りからは喝采の声がしているのに、私の心は、酷く沈んでいた。
今この瞬間にも、橘くんが頑張っているのかと思ったら、喜んでなんていられない。
「ほら、顔上げなって」
俯く私に、やさしく美緒は声をかけてくれる。
ふだんならそれで少しは安心出来るのに、今はまだ、心が安らぎそうになかった。
「――ここで最後に、メインの発表がありま~す!」
表彰でもあるのかと思っていると、照明が消される。
どうやらステージの中央に、何かを設置しているようだった。
「本日のメインである服――それがこちら」
パッと、ステージ中央に照明が当てられる。
途端、会場にはさらなる高揚感が漂う。
「女性の憧れ――ウエディングドレスです!」
目の前には、白をメインとした青のドレス。マーメイドタイプのそれは、体のラインをハッキリと強調させる、とてもキレイなドレスだというのに。
それには、他と違う点があった。
「……マネキン?」
その場にいた者、誰もが思った。
今までは製作者か、モデルを用意して披露していたのに。そのドレスは、人形が着ていたから。
「個人的な理由で、この作品はマネキンで披露させてもらいまーす」
マイクを受け取り、橘くんは話をしていく。
「ホントはもっとシンプルでしたが……ちょ~っと予定外のことがあり、こんな感じになりました~!」
笑いながら話をする橘くんに、同じ科の友達は何があったんだ~? とか、前よりいいぞとか、様々な言葉を発する。
「んでもって、こっからはもっと個人的な話なんですけど……持ち時間五分あるんで、たっぷり使いたいと思いま~す!」
その場にいた者は、これから何をするのかと、期待の眼差しを向ける。
橘くんは何度か深呼吸をし、会場が静かになるのを見計らってから、言葉を発した。




