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◇◆◇◆◇


 美緒に打ち明けてから、気持ちが少し、軽くなった気がする。

 おかげで、先輩たちと会う今日も、心配をかけずにいられそう。

 待ち合わせ場所は、デパート内にあるフードコート。カレと適当な場所で座って待っていると、時間ちょうどに、先輩たちは姿を現した。


「初めまして。鈴木愛美すずきえみと言います」


 先輩の横には、肩まで伸びたストレートの黒髪の女性が立っていて、私たちに軽く頭を下げる。

 肩に茶色のバッグをかけ、桜色のワンピースがやさしい印象を与えるものの、声がとても凛としていて、すごくキレイな人だなと、思わず見惚れてしまっていた。


「聞いてたとおり、紅葉ちゃんって可愛いわね」


 目の前に腰掛けると、愛美さんはそんなことを口にした。

 か、かわいいって……。

 戸惑いながらも、私はお礼を述べた。


「ふふっ、赤くなっちゃて。本当に可愛い」


「そ、そんなことないですから……」


 初めはぎこちなかったけど、そこは女同士。すぐに話題が見つかり、お互いの彼氏についてだったり、ファッションについての話に盛り上がっていた。


「ねぇ、今度はふたりでお買い物しない?」


「はい、私も是非行ってみたいです」


 お互いにSNSを交換していると、先輩は視線を愛美さんへと向ける。


「あんまり長い時間、連れ回すなよ?」


「ふふっ。幸希、女の子の買い物は、長いものなのよ。ねぇ~紅葉ちゃん」


 二人を見ていると、なんだか、ほんわかしている雰囲気がして。

 これが大人のカップルってものなんじゃないかと、そんな気がした。


「悪い。ちょっと電話してくる」


 そう言うと、先輩は携帯を耳にあてながら、私たちから離れて行った。


「またお仕事かしら。じゃあ、ちょっと私も」


 失礼しますねと言って、愛美さんはバッグを椅子に置いたまま、席を後にした。

 ぎこないままだったらと心配したけど……。

 愛美さんとは話も合うし、いい友達になれそうでよかった。

 ほっと笑みをこぼしていると、隣に座っていたカレが、私の手首を掴む。


「お前さぁ……気ぃ抜き過ぎ」


 呆れたように言い、握った手に力を入れる。


「敬語はまーいいとしても。二人でなんて出かけたら、迷惑かけるから行くな」


 行くなって……だって、せっかく誘ってくれてるのに。


「誘われてるのに、それはちょっと」


 答えが気に食わないのか、チッと舌打ちをすると、はぁ~とため息をついてから言葉を発する。


「んなもん、いくらでも理由つけれるだろう」


「で、でも……一緒に、遊んでみたい、し」


「だから、迷惑になるからやめろって言ってんだよ。――俺の言うこと、聞けないわけ?」


「っ……!」


 低い声と共に、手首には強い痛みが走り。

 私は思わず、顔を歪めていた。


「……で、返事は?」


「…………」


「返事!」


「っ……! わかっ、た」


 返事を聞くと、カレはようやく手を離した。

 やさし、かったのに……。

 出会った時は、本当にやさしくて。

 楽しい時間だったはずが、今では少しずつ、違うものへと変化して。




 あの時の人とは……違う、の?




 そんな不信が、心に渦巻いている。

 カレの今の行動と、出会った頃の行動とが一致しないし……何より、一番好きな絵について、話が出来なくなってしまったから。

 それから二人が戻って来て、食事をしながら話をしていると。


「佐々木さんと紅葉ちゃんって、仲がいいわね」


 微笑みながら、愛美さんは言った。

 私も笑って見せると、カレは意外な行動に出る。


「そりゃそうですよ。――俺、こいつに惚れてますから」


 肩をそっと引き寄せ、髪の毛に軽くキスをする。

 いつもされないようなことをされ、どうしたものかと戸惑っていると、カレはふっと笑みを見せた。


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