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美緒に打ち明けてから、気持ちが少し、軽くなった気がする。
おかげで、先輩たちと会う今日も、心配をかけずにいられそう。
待ち合わせ場所は、デパート内にあるフードコート。カレと適当な場所で座って待っていると、時間ちょうどに、先輩たちは姿を現した。
「初めまして。鈴木愛美と言います」
先輩の横には、肩まで伸びたストレートの黒髪の女性が立っていて、私たちに軽く頭を下げる。
肩に茶色のバッグをかけ、桜色のワンピースがやさしい印象を与えるものの、声がとても凛としていて、すごくキレイな人だなと、思わず見惚れてしまっていた。
「聞いてたとおり、紅葉ちゃんって可愛いわね」
目の前に腰掛けると、愛美さんはそんなことを口にした。
か、かわいいって……。
戸惑いながらも、私はお礼を述べた。
「ふふっ、赤くなっちゃて。本当に可愛い」
「そ、そんなことないですから……」
初めはぎこちなかったけど、そこは女同士。すぐに話題が見つかり、お互いの彼氏についてだったり、ファッションについての話に盛り上がっていた。
「ねぇ、今度はふたりでお買い物しない?」
「はい、私も是非行ってみたいです」
お互いにSNSを交換していると、先輩は視線を愛美さんへと向ける。
「あんまり長い時間、連れ回すなよ?」
「ふふっ。幸希、女の子の買い物は、長いものなのよ。ねぇ~紅葉ちゃん」
二人を見ていると、なんだか、ほんわかしている雰囲気がして。
これが大人のカップルってものなんじゃないかと、そんな気がした。
「悪い。ちょっと電話してくる」
そう言うと、先輩は携帯を耳にあてながら、私たちから離れて行った。
「またお仕事かしら。じゃあ、ちょっと私も」
失礼しますねと言って、愛美さんはバッグを椅子に置いたまま、席を後にした。
ぎこないままだったらと心配したけど……。
愛美さんとは話も合うし、いい友達になれそうでよかった。
ほっと笑みをこぼしていると、隣に座っていたカレが、私の手首を掴む。
「お前さぁ……気ぃ抜き過ぎ」
呆れたように言い、握った手に力を入れる。
「敬語はまーいいとしても。二人でなんて出かけたら、迷惑かけるから行くな」
行くなって……だって、せっかく誘ってくれてるのに。
「誘われてるのに、それはちょっと」
答えが気に食わないのか、チッと舌打ちをすると、はぁ~とため息をついてから言葉を発する。
「んなもん、いくらでも理由つけれるだろう」
「で、でも……一緒に、遊んでみたい、し」
「だから、迷惑になるからやめろって言ってんだよ。――俺の言うこと、聞けないわけ?」
「っ……!」
低い声と共に、手首には強い痛みが走り。
私は思わず、顔を歪めていた。
「……で、返事は?」
「…………」
「返事!」
「っ……! わかっ、た」
返事を聞くと、カレはようやく手を離した。
やさし、かったのに……。
出会った時は、本当にやさしくて。
楽しい時間だったはずが、今では少しずつ、違うものへと変化して。
あの時の人とは……違う、の?
そんな不信が、心に渦巻いている。
カレの今の行動と、出会った頃の行動とが一致しないし……何より、一番好きな絵について、話が出来なくなってしまったから。
それから二人が戻って来て、食事をしながら話をしていると。
「佐々木さんと紅葉ちゃんって、仲がいいわね」
微笑みながら、愛美さんは言った。
私も笑って見せると、カレは意外な行動に出る。
「そりゃそうですよ。――俺、こいつに惚れてますから」
肩をそっと引き寄せ、髪の毛に軽くキスをする。
いつもされないようなことをされ、どうしたものかと戸惑っていると、カレはふっと笑みを見せた。




