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「嫌なの? 言いたいことがあるなら言えよ」
「……、だ」
「聞こえない。もっと大きな声出せよ。―――やってる時みたいに、な?」
そっと頬に触れる手が、このうえなく嫌で。
母親に触れられた時のような、逃げ出したい感覚が、体を駆け巡る。
「……い、やだ」
「したくないの? だったら――あの写真、投稿してみるか?」
「っ!?」
投稿って……あの写真を?
一気に血の気が失せ、私はカレを凝視した。
「人気者になるかもな。現役女子大生の裸だし」
「そん、なの……いや。誰にも見せないって、約束したじゃない!」
カレの腕を掴み、声を荒げた。
そんな様子を見ても、カレはいつもと変わりなくて。
もしかして……これ。
また、冗談なんじゃないかと、そんな考えが浮かぶ。
私が受け流せるか、試してるの、かな。
でも、これが本気だったら……いいよ、なんて言ってしまったら、あの時いいって言っただろうと、言われてしまう可能性が。
混乱しそうな頭を、なんとかまともに戻そうと、深く呼吸をして整えていく。
そんな私を見て、カレは意外だったのか、へぇ~という声をもらす。
「ちゃんと落ち着けたな。偉いじゃん」
頭を撫で、やさしい笑みを向ける。
褒めて……くれた。
それが私にとって、どれだけ支えとなるものなのか。
知っていてそれをするカレは……とても、ズルい。
まともに褒められたことがないせいか、そうやって言われることも、叩かれる意外で頭を撫でられるのも、すごくうれしくて。
ゆっくりと唇にキスを落とされ、次第にそれは、深い口付けへと移行していき。
「誘うような目だな。――煽ったのは、お前だからな」
そう言うと、カレは貪るように、唇を奪う。
行為も荒々しく、痛みを訴えても、それを楽しんでいるようで。
早く……終わってよ。
いつからか、そんなことを願うようになっていた。
大好きな人と、一番愛を感じれる瞬間だと思っていたのに。
もう……痛みしかなかった。
◇◆◇◆◇
最後に抱かれてから数日。
私は思うように、笑顔を作れないでいた。
毎日顔を合わせない講師の先生に心配されるほど分かりやすいようで。保健室に行った方がいいんじゃないかと言われるほどだった。
「紅葉、今日は家に泊まりに来て」
放課後、学祭の準備が終わると、美緒は唐突にそんなことを言った。
「いきなり言われても……ご飯、まだ作ってないし」
「じゃあ待ってるから、今日はどーしても、紅葉に来てほしいの!」
珍しく引き下がらない様子に、何かよほどのことがあるのかと思い、支度が済んでからならということで、美緒の提案に頷いた。
そうなれば話は早いと、美緒は私を車へと乗せ、家まで送ってくれた。
一、二時間ほど待ってもらうと、祖父母に泊まることを伝えてから、家を出る。
「ごめんね、退屈だったでしょ?」
「携帯見てたから平気。じゃ、家に行くわよぉ~!」
やけにテンション高めだなぁと思いつつも、私もそれに合わせるように、行っちゃお~! と、声を出して言ってみた。
美緒は海さんと同棲しているけど、今日は出払ってもらってるらしい。だから女だけで騒ぐわよ! と、楽しげに美緒は言う。
「あんまり騒いだら、周りに迷惑だよ。ほどほどにしようね」
「も~たまにははっちゃけないと。あ、お酒は用意してあるから、ご飯はよろしく~」
「そうくると思って、おかずだけだけど持って来たよ」
「さっすが~! ちなみに、中身は何?」
カバンからタッパを出すと、美緒はチラチラと、それに視線を移す。
「ほら、ちゃんと前見なきゃ。言っとくけど、豪華じゃないからね?――から揚げと、ブリの煮付けの二品」
「お、から揚げいいじゃん。お酒のおつまみにはかかせないよねぇ~」
家へ着くと、美緒はさっそくお酒を用意し、テーブルに並べる。
カシスオレンジにソルティードッグに始まり、梅酒やカルアミルクまで、意外にもたくさんの種類を準備していた。
「んじゃさっそく――乾杯~!」
「カンパ~イ!」
グラスを軽く当て、一口飲むと、おかずをつまみながら、話に花を咲かせる。
酔ってくると、海さんとのラブラブ生活のノロケを聞かされたり、バイト先の店長がセクハラしてくるだの、話は色々と広がってき――あっと言う間に、三時間も経っていた。
その頃には、私も美緒もいい具合に酔っていて。
「――ねぇ~紅葉?」
とろんとした目で問いかける美緒に、ん? と、グラスを置いて視線を向ける。




