7.邪神降臨
「ファルシア様!」
そう言って、リーンベルが私を守るように飛びついてきました。
邪神様が邪悪そうな笑みを浮かべ、こちらを見ています。
「……邪神め、覚悟せよ」
「邪神を相手にするには、戦力として不足しているが……ルイス!」
殿下の声に頷き、ルイス様が剣を構えます。
「……は!? 剣!? ……それって切れるやつ?」
邪神様の言葉に、ルイス様が頷き、風に乗って飛んできた葉を切り刻みます。
「……ちょ、ちょっと待って! 私の身体を切ると、邪気がこの世界を覆って、えーっと、やばいことになるよ!?」
「やばいこととはなんだ?」
慌てた様子の邪神様。手から邪気を放ったり剣を扱ったり……なさらないのかしら?
「そ、その。世界の滅亡とか!!」
「は?」
「ほ、ほら! 流行り病が広がるよ!?」
「……聖魔法に守られている我が国に病が広がることはないと思うが?」
「えっと……」
邪神様とルイス様の掛け合いを見ていると、幼子の虚言と付き合う大人の姿のように見えてきました。
「殿下……その……」
「あぁ、ファルシア。言いたいことはわかる。ただ、邪神の策略かもしれぬ」
「では、そこの麻紐で邪神様をぐるぐる巻きにしてみたらいかがでしょうか?」
「……」
「なによ! 私は神プレーヤーなのよ!?」
剣を構えた殿下とルイス様の手によってぐるぐる巻きにされた邪神様。涙目になりながらなにか叫んでいらっしゃいます。
「殿下。せっかくナニアが用意してくれたのですもの。邪神様の服を着替えさせてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、神殿から邪神の引き渡し要請が来るまでは、好きにしてくれ。逃がさないように拘束の魔術具をつけておこう」
「ありがとう存じます。さぁ、ナニア。やっておしまいなさい!?」
「はっ」
私がナニアに指示をだすと他のメイドたちも集まり、私の部屋に邪神様を運びます。
「これはマッサージのし甲斐がりそうですわ!」
「お嬢様は大変美しくいらっしゃるから、こんな原石を見つけると楽しみになってしまいますわね!」
「魔法が付加された美容液を使いましょう!」
きゃっきゃと聞こえてきそうな盛り上がりを見せ、邪神様はつれていかれました。
「……ファルシア様が邪神ばかりを見ていて、構ってくださいません」
「あれは、邪神なのだろうか? 単なる人間に見えるが……」