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5.いじめその四

「あら、殿下。ごきげんよう?」


 毎晩皆様でパジャマパーティーを開催して、リーンベルをくすぐり、しまいにははしたないけれど、枕を投げておりましたので、私たちの仲はとても深まりましたわ。


「ファルシア。……最近今までよりも美しくなったよね?」


「そうでしょうか?」


「あぁ、ファルシアだけじゃなくて、皆も美しくなったような気がするが、リーンベルへのいじめは順調なのか?」


「えぇ! 昨夜もリーンベルは助けてと叫んでおりましたわ! とても順調です!」


 私が胸を張ると、皆様が続いてどれだけ貢献したか盛り上がります。


「美しくなったとおっしゃっていただいてとても嬉しいですわ! ミミリカ様のルクスル商会のパックをいつもしているからかしら?」


「まぁ!」


「さすが国内最大のルクスル商会ですわ!」


 口々に褒め称えると、ミミリカ様はとても嬉しそうに頬を赤らめられました。


「今夜からは髪の美容液も持参いたしますわ!」





「その、肌艶も美しくなったと思うが……なんというか、全体的にも美しくなったと思うのだが」



 殿下にそう言われて、皆様見比べます。


「そう言われると、サリナ様のお顔が少しシュッとなさった気がいたしますわ」


「そういえば、昨夜リーンベルちゃんのお腹をくすぐる時に、お腹のラインが引き締まったように見えましたの」


「確かに。ファルシア様の手足がどことなく長くなったような気がいたしますわ」


 皆様で首を傾げます。


「その、もしかして皆でリーンベルをいじめることが良い運動になっているのではないだろうか?」


 殿下のその言葉に皆がハッとしました。即座に解散して、メイドたちに身体測定を依頼します。



「皆様、前回の身体測定よりも美しいスタイルになっておいでです」



 メイドの言葉に皆が手を取り、喜び合いました。



「それもこれもリーンベルちゃんのおかげですね!」


「今夜も頑張りますわ!」


「助けてー!!」








「リーンベルちゃんは好きな殿方はいらっしゃるのですか?」


「ファルシア様は殿下でいらっしゃいますでしょう?」


「相思相愛でいらっしゃいますわよね!」


 皆様がそう言うと、悔しそうにリーンベルが顔を歪め、ぶつぶつとつぶやきます。


「女神よりも尊いファルシア様にふさわしいのは、我が国で最高位の殿下ってわかるけど、あの男のものになると思うと少し悔しいー!!!」




「私たちは婚約者を定められているから、自由に恋ができないから……」


 悲しげにそうサリナ様が呟くと、ミミリカ様が小声で話されます。


「でも、殿方を囲っているご婦人も多くいらっしゃいますし、使用人と恋人のような関係になっている方もいらっしゃいますのよ!」


 その言葉に皆様が「きゃ」と声を上げ、「破廉恥ですわ!」と顔を赤らめます。


「恋ができなくとも、王国劇場の舞台役者に熱を上げる方もいらっしゃるわね?」


「まぁ!」


 そんなふうに皆様で盛り上がり、近いうちに、と王国劇場に行くことを約束いたします。


 少し顔が熱くなってしまったので、皆様と一緒にバルコニーに出て、火照りを抑えることにいたしました。ないとドレスの上にはしっかりとしたドレス型の羽織りを着ています。淑女として護衛くらいに見られても問題ない服装です。



「まぁ! 今夜はとても星が綺麗ですわね!」


「流れ星! 流星群は今夜でしたわ!」


「ふふ、身体を冷やすために外に出たけれど、素敵なおまけがありましたわね!」


 皆様で盛り上がっていると、男子寮と女子寮の間の中庭に殿下とその側近かつ護衛でいらっしゃる騎士団長のご子息ルイス様がいらっしゃいました。





「ご令嬢たち、珍しいな」


「まぁ、殿下とルイス様!」


 お二人の姿に、皆様少し恥ずかしそうになさいます。気軽すぎる服装ですので、淑女として恥ずかしいですわ。


「ファルシア。そちらからは姿がしっかりと見えているだろうが、我々から三階にいるそちらの姿は顔以外あまり見えていないから安心するといい。ただ、身体を冷やしすぎないように気をつけるといい」


「ありがとう存じます」


 殿下のお気遣いに、皆様が安心した表情を浮かべます。そのとき、たくさんの流れ星が落ち、皆様一瞬で視線を奪われました。


「綺麗……」








 流れ星が少し落ち着いたとき、突然周囲が明るくなりました。

 皆様慌てて膝をつきます。



「なんでやねーん!???」


「神様!」


 私が代表して声を上げると、殿下と私たちの間くらいの空中に浮遊している女神様のお顔が、ぐるりとこちらを向きました。



「ファルシア! なんでくすぐりに戻ってるねん!!」


「まぁ、神様。私、一人分でのくすぐりでは不足だと思い、皆様に協力を依頼いたしましたの!」




 私が胸を張ると、女神様の周りに光がピカピカと輝きました。





「もーう! なんでいじめられたリーンベルが幸せになるストーリーにならないの!?? リーンベルが救われないと、意味がないじゃない!!」


「神様……?」


 ぴかぴかと光り輝く女神様。さすが女神様。お力が強いですわ。お怒りに合わせてお光になるので、少し恐ろしく感じます。


「なんでリーンベルがいじめられずに、幸せそうに友達とパジャマパーティーなんてしてるのよ! 私だって、パジャマパーティーしてみたい! なにあれ! 現実で救われないならせめてゲームの中くらい幸せにプレイさせてよ!」



 女神様がバタバタと駄々っ子のように暴れ始めました。どういたしましょう? 私、精一杯いじめをおこなっていたつもりなのですが……。



「神様! まだ間に合います!」


 リーンベルが、飛び出して大きな声で言いました。そのリーンベルを見て、思わず私たちは笑ってしまいます。


「そうです。神様。神様仲間もいらっしゃるだろうですし、私たちとパジャマパーティーしてもいいと思いますわ」


 そう言うと、皆様が頷いてくださいます。



「なにそれ。あほくさ。とりあえず、次のイベントまでにしっかりとヒロインをいじめて、逆ハーエンド目指しておいてよね!」



 そう言って神様は消えました。


「ところで、ぎゃくはーえんどとはなんでしょうか?」


 私の呟きには、誰も返事をしてくださいませんでした。





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