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3.いじめそのニ

「ほら、リーンベルちゃん。恥ずかしがってはダメですわ!」


「無理無理無理! 無理です!」


「ほら早く」


「は、恥ずかしいですわ!」


「神様の神託ですわ。お口をお開けになって?」


「あ、あーん」


 皆様が温かい目で見守ってくださる中、学園のカフェでリーンベルに昼食を食べさせます。女神様の神託以来、毎日行われる公開処刑に、リーンベルは頬を染め、周囲は暖かく見守ってくださいます。とても素敵な皆様に恵まれましたわ。


「ファルシア。今日もリーンベルに食事を食べさせているのか?」


「女神様からのご指示ですから。ほら、リーンベルちゃん。苦手なお野菜もきちんと食べるのですよ?」


「殿下! 変わってください、いややっぱ変わっちゃダメ、あぁぁぁ」


「……リーンベルもリーンベルで忙しそうだな」


「ふふふ、お可愛いでしょう?」


 そう言って、リーンベルの口の端についたソースを拭き取ります。



 すると周囲が光り輝き……。


「ってなにやってんねん!」


「まぁ! 神様。ごきげんよう? 神様に言われた通りにリーンベルを精神的にいじめておりますわ!」


 私が自信満々に胸を張ると、女神様は手を横にスパスパとお振りになりました。


「なんでやねん! エセ関西弁になっちゃうわ! ちゃう! レズプレイが悪化してんねん!」


「れずぷれい……? その、私、精一杯考えましたの。精神的にされて辛いこと……それは、公衆の面前での子供扱いですわ! ですから、心を鬼にして、子供どころでなく赤ちゃん扱いしてみましたの!」


 人前で子供扱いされるなんて、淑女としてとても恥ずかしいですもの。精神的ないじめで間違いありませんわ!


「なんでやねーん!」


「その、女神様のお心に敵わなかったでしょうか?」


 私が首を傾げてそう問いかけると、ため息をついた女神様がおっしゃいました。



「あんたに期待した私が馬鹿だったわ、ファルシア。もっと簡単に言うわ。他の人の協力を仰ぎなさい」


「他のお方……殿下でしょうか?」


「なんでヒロインいじめに王子が加わるねん! 違う違う! 取り巻きとかいるでしょ? 取り巻き使っていじめなさいよ!」


「取り巻き……? 神様のお言葉は難しいのですが、使用人のようなものでしょうか?」


「それもそれでありだけど、違う! そこにいる伯爵令嬢とかよ!」


 女神様の指差す先には、同じ派閥で幼い頃から仲良くさせていただいているマチルダ様がいらっしゃいました。突然指名されたマチルダ様は、不安げにこちらを見ていらっしゃいます。お任せになって。女神様の御意志は私が必ず聞き取ってみせますわ!



「ご友人の皆様、ということでしょうか? わかりましたわ! 神様。私、次こそ神様の願い、叶えてみせますわ!」


「なんかもう王子の方をなんとかした方がいい気がしてきたけど、それでいいわ。頑張ってちょうだい」



 女神様からの神託が終わり、殿下が私に声をかけられました。


「あの神が邪神かどうか、まだ神殿から返答がないのだ。すまないが、もう少し付き合ってやってくれ」


「お任せください! 私が責任持って女神様の神託を実現してみせますわ!」



 私の眩しい笑顔を見て、リーンベルは眩しそうに顔を顰めていらっしゃいました。

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