1.神託?
いつものようにメイドのナニアに髪を解かしてもらっていると突然、部屋が光り輝きました。神様が降臨なさるのでしょうか? 私はベルを鳴らして使用人たちを呼び、神の降臨を待ちました。記録の魔術具を作動させます。人々には、神託を正確に記録する義務が課せられておりますから。
「フェルシア! あんたは、悪役令嬢なのだから、学園生活が始まったら、ヒロインのリーンベルをさっさといじめなさい!!」
突然現れた神は、神と思えないほど……リラックスした服装でいらっしゃいました。やはり私たち人間と感性が違っておいでなのですね。人前に立つときは、素敵な恰好でいたいと思うのは、人間ならではの感性なのでしょう。神様に違いありません。ただし、記録のためにも神だと証言していただかなければいけません。
「私がいじめ……? ひろいん? あなた様は一体どなた様なのでしょうか?」
私が問いかけ、執事が記録を残し、ナニアが記録用魔術具を操作します。
「この世界の神プレイヤー……いや、神とでも言っておくわ」
神と言っても、創造のシュティピア神、愛のフィリアタニ神、さまざまいらっしゃるのでお聞きしたのですが……おそらく、プレイヤー神様ですわね。ただ、名で呼ばれるのではなく、神と呼ばれたい、執事に視線を送り、そう記させます。
突然、神の啓示を受けた私は、フェルシア・デーントと申します。デーント公爵家の娘で、アレン第一王子の婚約者でございます。アレン様とは、親しい関係を築かせていただいております。婚約者として、とても上手くやっていっていると思いますわ。
「リーンベル、というご令嬢はお会いしたことがないのですが……」
伊達にも公爵家の娘を14年もやっておりません。この国の貴族令嬢のお名前は全て把握しているつもりです。
「来年、学園の入園直前にハレーシャ男爵家の前男爵の忘れ形見として、孤児院で見つけられるのよ。それまでのリーンベルの生活が可哀想すぎるし、リーンベルはめちゃくちゃかわいいから幸せになってほしいの! 逆ハールートでもいいと思うし、王子ルートのスチルもすっごくいいんだよね。フェルシアが思ったより横暴じゃないのは驚きだけど、ストーリー通りに進んでくれないと話が始まらないじゃない。“君メモ”の非公開スチル、絶対見たい! あ、じゃあそろそろ私はこっちの世界に干渉できなくなるから、くれぐれもリーンベルのことをいじめるのよ!?」
よくわからないことをおっしゃって、神のお声は聞こえなくなりました。来年の15歳から18歳の3年間、親元を離れて学園で寮生活をするのがこの国での普通です。
「ヒロインのリーンベルという方をいじめるのですね……。私、実は人をいじめるのは得意ですが、上手くできるかしら? そうですわ! 女神様の神託は、神殿に届け出ないといけませんわね。準備しないといけません」
教会への届け出の準備を執事に頼み、眠りにつきました。毎日ある王子妃教育は意外と忙しいのです。
リーンベルという少女をいち早くいじめるために、そちらを調べる準備も進めさせました。
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「外では決められたセリフしか言えません!」~残念令嬢の心の声 【短編題】「麗しくて愛らしい。婚約してくれ」と言われました。間違えてますよ?
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