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最高の贈り物
余りの煩さに、お婆さんは目覚めた。額には嫌な脂汗が浮かび、喉はカラカラに乾いていた。久しぶりに昔の夢をみた。まだ、辺りは暗く、窓の外には満月がぽっかり浮かんでいた。ベッドの横には、眠るようにマルタが揺り椅子に腰掛けていた。魔法は既に解けた後だった。マルタがベッドまで運んでくれたことに気づき、ふっと心が暖かくなる。本当にいつも気遣いばかりの子だ。そっと愛しいマルタに手をかけようとすると、マルタが何かを持っている事に気がついた。小さな子瓶。中には小さなガラス玉の様な薬が一錠、そして古びたメモが入っていた。100年ぶりに見た懐かしい兄さんの字だった。差出人のところにはまだ書いてまもないインクの色で「マルタ」と付け足されていた。そして、子瓶を掴んでいたマルタの小さな白い指は、火傷や切り傷で一杯だった。
「馬鹿な子だよ…全く。こんなに傷が出来るほど苦労して…。兄さんの一番のプレゼントはもうとっくに届いていたんだよ。マルタ。貴方という最高のプレゼントが。」
お婆さんはマルタをきつくきつく抱きしめた。




