ヒント
「おや、チョークがないね、二人とも。」
「あ!」
二人はお茶会での出来事に、すっかり文房具屋に寄るのを忘れていた。
「ごめんなさい…、忘れちゃった。お婆ちゃん大丈夫?」
おずおずと訪ねるシャルルにお婆さんは、「ま、いいでしょ。」と軽い返事。どうやら、そこまで大切な物でもなかったらしい。二人はほっとため息をついた。
次の日、お婆さんは予想通り二人の大好きな木いちごのケーキを焼いてくれ、三人はお茶を楽しんだ。お婆さんとののんびりした生活も残すところ数日となった。別れを告げたシャルルはどこか吹っ切れたように、さっぱりしていて、逆にマルタが何となく落ち着かない気持ちだった。そして、更にマルタの研究は後一歩というところで難儀し、一向に進まなくなっていた。焦りは確かにあったが、幸せそうに日々を過ごしているお婆さんを見ると、何となく許されたような気持ちにもなるのだった。日溜まりに揺り椅子を移動させ、何かを編んでいるお婆さんに、マルタはふと話しかけた。
「バネッサ様、そういえばチョークは何に使う予定でしたの?」
「ああ、あれかい?あれはね、フェザーパールの代わりになるんだよ。お前達を動かす時に使う「時の砂」、あれがもう後わずかしかなかっただろう?あの粉は、フェザーパールを砕いた粉を3ヶ月間ずっと星の光にさらしたものなんだ。今じゃなかなかフェザーパールは見つからないからね。チョークで代用しようと思ったのさ。」
「フェザーパール…チョーク…」
「そう、あれには無機質を有機質に変えて、細胞を活性化させる効果があるんだ。星は魔力の宝庫だからね。私も昔は魔力を高めるために、星夜に広い場所でダンスをしたものさ。ダンスも魔力を循環させるのに良い効果をもたらすんだよ。なぁに、マルタも将来は魔女にでもなるのかい?」
お婆さんはからかうように、そして愛おしそうにマルタの髪を撫でた。マルタの中で何かが繋がりそうだった。
「細胞の活性化…星…」