お使い
町に着くと二人はお婆さんに頼まれたものを順々に買い集めていった。次は、何に使うのだろう、白いチョーク。文具屋さんに二人は向かった。文具屋さんに向かう途中、町の真ん中にそびえ立つ教会の広場を二人は横切った。この教会の裏にはハンスの家が建っている。シャルルはパーティの夜を思い出した。オリビア、元気かな?二人の顔を思い出し、シャルルは寂しくなって頭を左右に振った。もう、1週間も人間ではいられない。もう、このまま会わない方がきっと寂しくない。
と、その時だった。
「シャルルお姉ちゃん!」
驚いて振り返ると、淡いピンクのモヘアワンピースを着た小さなオリビアが息を切らせて立っていた。
「やっぱりシャルルお姉ちゃんだ!さっき見かけて、そうじゃないかって思ったんだ。やっと、会いに来てくれたんだねぇ!」
嬉しそうに駆け寄り、シャルルの袖を掴むオリビアに、今日はお使いだけ、などとはどうしても言えなかった。シャルルがしどろもろしていると、マルタがにっこりオリビアに笑いかけた。
「初めまして、オリビア。私は、マルタ、シャルルのお友達よ。貴方のお話は聞いているわ。」
「もしかして、ケーキを焼いてくれたお姉ちゃん!?わぁ、凄く綺麗なの!」
「ふふっ、ありがとう、オリビア。私たち、今日はお婆さんのお使いを頼まれて、町へ来たのよ。」
「そうなんだ。…じゃぁ、今日は遊べないの?」
オリビアは心配そうに、マルタを見つめる。
「そうね…、少しだけなら大丈夫、ね?シャルル?そうだ、折角だから、ハンスにもお会いしたいわ!」
シャルルはびっくりしてマルタを見つめた。
「いいの…?」
「ええ、貴方が大切に思うハンス、私もお会いしたいわ。」
マルタはシャルルにぱちりと片目をつむって見せた。シャルルは、顔を輝かせ、勢い込んで言った。
「うん!きっとマルタも仲良くなれるよ!オリビア、ハンスにも会えるかな!?」
「うん、お兄ちゃんもシャルルお姉ちゃんに会いたがってたよ!こっちこっち!」
三人はハンスの家に向かって駆け出した。