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doll story  作者: 千裕
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新月の夜

シアン剤にマゼンタを混ぜ、山葡萄のワインを数滴垂らせばれば青の薬ができる。ようやくここまでたどり着いた。想像以上に老いのスピードは早い。裏庭に百年以上前に植えた小さな苗木は大きな大木に育ち、今や小鳥達の憩いの場になっている。これまでの実験で犠牲にしてしまった穴ネズミの弔いにマルタが植えたものであった。薬が失敗する度に払われた犠牲、小さい、だけども貴重な命の損傷にマルタは自分の使命への責任を更に深めるのであった。部屋にある学術書の内容はほぼ頭に入っていたが、それだけではどうしても情報は足りなかった。それもそのはず、これまでに誰もが夢に見、数々の実験をこなしたが、到達できなかった課題である。既存の資料だけでは、作れるはずはないのだ。マルタは考える。考えるために作られた、未来を託された人形は、ただひたすら目的の達成の為考える。

「不老不死、に必要なもの…何が足りないのかしら?」


そんな生活を三人はおのおの続け、あっという間に月は細く痩せていった。今夜は新月だ。三人ののんびりとした、そして愛に満ちた生活は残すところ半分となっていた。お婆さんは鼻水は止まったものの、まだ本調子には戻れず、早めの床についた。お婆さんが寝室に戻るのを見届けると、マルタも自室へと戻っていった。シャルルはダイニングの窓から外を見つめた。月のない森は沼の底のように暗く、何も見えなかった。窓には自分の姿と部屋の灯りが反射して映っていた。


と、その時だ。窓に映る一つの灯りが妙にゆらゆら揺れる。不思議に思い部屋を見回すが何もない。外だ!シャルルはダイニングの窓を開け放し、闇に身を乗り出した。

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