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doll story  作者: 千裕
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ハンスの妹

山犬は走る。風を切って、木々をすり抜け、しっかり捕まっていないと振り落とすぞと言わんばかりのスピードだ。風が冷たくて頬が切れそうだ。シャルルは山犬の毛皮に身を寄せる。山犬の体温と鼓動がこちらに伝わってくる。温かい。山犬はこんなに早く走って疲れないのかな…。


あっという間に光の群れが見えてきた。ネアルの町だ。教会は町の真ん中。窓からはオレンジの光が漏れ、聖歌隊の美しい歌声がかすかに聞こえる。山犬はシャルルをハンスの家の前で降ろすと、あっという間にどこかへ走り去った。白くて大きな扉の横に備え付けられた金の呼び鈴を、シャルルはちょっと背伸びして鳴らした。すぐに中からバタバタと駆け寄る足音と、子供達のきゃっきゃと甲高い声が聞こえてきた。扉は開かれた。

「シャルル!来てくれたんだね!」

青い目のハンスが嬉しそうにシャルルの手をとった。

「パーティにお招きありがとう、ハンス。」

シャルルは膝を少し曲げて、ちょっと気取った挨拶をした。しかし、すぐに可笑しくなってへへっといつものように笑った。

「今日の主役は僕の妹なんだ。今紹介するね。おぅい、オリビア!」

「お兄ちゃん、誰が来たの?」

舌足らずな甘えん坊な声がすると、奥の扉からシャルルよりも小さな可愛い女の子がかけてきた。

「あ!」

突然シャルルを見つけた女の子は驚いたような顔をし、そのままポカンとシャルルを見つめた。

「どうした、オリビア?シャルルを知ってるの?」

「う、ううん。お姉ちゃん、可愛いなって思って…」

「本当だ。シャルル素敵なドレスだね。君の髪の色にすごく良く似合ってる。」

「ありがとう、オリビア、ハンス。」

二人に褒められむず痒い気持ちになりながら、シャルルは手に持っていたバスケットの存在に気がついた。

「あ、これケーキなの!マルタが今朝焼いてくれたんだ。それから…これは私からオリビアにプレゼントだよ。」

そういうと、シャルルは小さな小瓶をオリビアに手渡した。小瓶には虹色に輝く羽の形をしたパールが入っていた。

「うわぁ…」

オリビアは興奮で顔を上気させたまま、瞬きもせずにじっとそれに見入った。

「フェザーパール。うちの前の湖に住んでる貝が作り出すの。綺麗な羽の形になってるのはなかなか珍しいんだよ。」

シャルルは予想以上にオリビアが気に入ってくれたので、ちょっと得意になって言った。

「シャルルお姉ちゃん、ありがとう!」

小さなおさげの少女はきらきらと笑った。

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