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登校拒否



 学校なんて普通に行くもので、行かない選択肢なんてない。当たり前のこと。

 友達とうまくいかなくて登校しなくなるなんてことはあっても、余程のことがない限り休んだりしない。

 特にわたしは高校生になってから、ひとつ授業を受けないと追いつくのが大変だとわかったので、一年のときは多少体が辛くても登校していた。


 だけど加害者の奥さんと会ってから、体が重たくなってやる気がなくなってしまった。

 掃除をするのや料理を作るのも億劫で、陸斗がいるからなんとかこなしている。


 そんな折、担任の長谷部先生から電話があった。


「このままだと学力不足か出席不足で留年よ。日向さんがサボっている間に皆はどんどん前に進んでいくの。ご両親のことは大変だったけど、同じ境遇でも立派にやってる人はたくさんいるんだからね」


 長谷部先生は学校に来て勉強しろと言っていた。先生の言ってることは尤もだけど、言われるのも辛くて途中で電話を切った。


 わたしは六月になってもほとんど学校に行けてなくて、行っても授業についていけなくなった。テストは散々で、グループに分かれてやるべき課題も参加出ていない状況だ。


 弁護士の沖田さんにも連絡が入ったそうで、カウンセリングを勧められた。

 迷惑をかけている実感があったので、一度だけカウンセリングを受けたけど、カウンセラーの言葉は上辺だけにしか聞こえなくて煩いだけだった。


 陸斗は何も言わない。

 親の目がなくてもちゃんと学校に行って、部活もやって、宿題やテスト勉強もきちんとやっているようだった。


 駄目な姉だなと落ち込んでいると、陸斗が夜ご飯にカレーを作ってくれた。

 わたしは一日家にいて時間もあるのに、ちゃんと学校に行って忙しくしている陸斗にご飯を作らせてしまったことをとても恥ずかしく、情けなく感じて下を向いたら、「早く食べなよ」と促されたので、慌てて手を付けた。


「どう、美味い?」

「あ、うん。普通かな?」


 あんまり味がしなかったけど、箱の裏に書いてあるとおりに作ったであろうことがよく分かる出来だった。何故ならわたしがそうしているから。


「姉ちゃんの作るご飯、少しずつ美味しくなってる。俺、姉ちゃんと一緒に食べれるだけでいいんだ」

「陸斗?」


 何かあったのかと思って顔を上げてすぐに気付いた。陸斗はわたしの状態に不安を感じているんだ。

 前にわたしが、陸斗がいなくなってしまうことを恐れた時みたいに。


「姉ちゃん、学校行きたくないなら行かなくていいよ。俺が勉強していい会社に就職して養ってやるから大丈夫だよ」


 ずっと一緒にいるから。そう言われた気がした。



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