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林兄と同じ病院



 その後、大和さんとは仕事上で偶に接するくらいで済んでいる。雪乃ちゃんは結婚が決まって、秋には披露宴に招待された。


 人生初の、友人の結婚式。

 ネットで調べたりお店の人に相談して相応しい装いで出席させていただいた。

 服に鞄に靴にお祝儀と、かなりの出費になった。結婚するって当事者もだろうけど、招待される側も大変なんだと学んだ。


 旦那さんの関係者として大和さんも招待されていたけど、ちゃんと不自然にならない程度に席が遠くて、かつお互いに背中を向け合うように配慮させれていた。


 雪乃ちゃんはとっても綺麗な花嫁さんで、両家のご両親も嬉しそうにしていた。

 楽しい披露宴だった。同時に父と母のことを思い出した。


 雪乃ちゃんは夜勤のないクリニックに転職した。わたしは看護師としての腕を磨きたくて、大学病院へ転職した。


 3年目からは進学を諦めた国立大学に付属する病院で働くことになった。


 そこには研修医になった林兄もいるはずなんだけど、勤めだしてから会うことがなくて。林君のお母さんは「研修は大学病院を選んだ」って言ってたのになぁ……って思ったけど、わたし自身もめちゃくちゃ忙しくて林兄のことをすっかり忘れていた10月も半ば。わたしが勤める救急科に林兄が研修医としてやってきた。


 同じ病院だからいつかは会うと思っていたのに、いざ会ってしまうとなんだか恥ずかしくて。仕事をしてる姿を見られるのが特に。


 だからわたしから話しかけられなかったけど、そんなことは気にもしない林兄から「ここに来る前は内科にいた」のだと話しかけられて、「わたしは4月からここで働いてるの」って答えたら「知ってる」って笑われて。びっくりした。


 あれ?

 林兄ってこんな風に笑う人だったっけ?

 ちょっと(?)会わないうちになんだか変わったようだ。


 救急は時間勝負な所もあって忙しいけど、看護師も医師も仲良くやっている診療科だ。

 その中で林兄も口達者じゃないけど、周りの様子をみながら好青年な研修医をやっていた。


 わたしは林兄の様子に大丈夫かなって心配になった。

 本来の彼は怒ってなくても怒っているような感じがするのだ。

 性格も硬くて、中学の時は皆と上手くやろうとして失敗して学校に行けなくなった過去がある。

 

 勿論、もう大人だから社交性は必要なんだけど。心配で遠目ながら見守っていたら、同僚達から「林先生のこと気になるの?」「かっこいいもんね!」「視線が熱い」って揶揄われた。


 林兄とはそんなんじゃないので「違います!」って完全否定したけど信じてもらえてないっぽい。

 まぁ救急での研修は2ヶ月だと聞いているので、変な噂になってもそのうち収束するだろうって悠長に構えた。


 疲れてふらふらになってる林兄に飲み物を差し入れしたら、目敏くみていた同僚に意味深な視線を送られたり。


 違うのにな。

 こんな風に思われて林兄は嫌だろうなって思うけど、林兄が無事に研修を終えられますようにって気持ちが強くて、視線で追うことが辞められなかった。




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