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悔しい



 12月になって陸斗がインフルエンザになった。

 学校で流行りだしているみたいだから、そこで感染したんだと思われる。


「ごめん姉ちゃん。大事な時期なのに」って、高熱の陸斗は瞳を潤ませて何度も謝った。


「そんなこと気にしないでよ、病気なんだから。予防接種してるんだしきっと大丈夫」

「俺だってしたのに」

「陸斗は運が悪かったね」


 予防接種したからって感染しない訳じゃないって説明されたけど、感染した場合は軽く済むって言われてた。

 なのに陸斗は40度近い高熱がでて、解熱剤を飲んでも38度位までしか下がらない。

 とても辛そうで心配だけど、受験生だからって部屋を追い出された。


 インフルエンザに感染した陸斗は、「姉ちゃんに感染うつしたらどうしよう」って、そればかり気にしてる。

 一緒の部屋に寝ていたのを後悔していて自分の部屋に戻った。


 看護大学の受験が1月にある。近場の余裕で受かる私立は甘えを生むので受けるのをやめていた。国立も諦めてなくて共通試験も同じ1月。


 もしインフルエンザにかかるとしたら今のほうがいいし、かからないなら陸斗の側にいることで免疫が強くなることを期待しながら買い物に出る。


 陸斗は昨日の夜に発熱した。咳も酷くなった。今日は運良く平日だったけど、近くの病院に行くにも歩いてじゃ無理で。


 同じ受験生がいる林君のお母さんに頼ることが出来なくて、自宅までタクシーを呼んだ。


 額に冷却ジェルシートを貼って咳をしていたせいで嫌がられ、後部座席の窓を開けられて冷たい風が吹付けた。

 感染させれたら嫌なのは分かるけど、発熱でぐったりして咳で息もしずらいのに酷いって思った。

 悔しかったけど、乗車拒否されたら困るのでぐっと堪えた。

 支払った千円札には触れもせず、お金も手のひらに上から落とされて、取り落とした10円玉を拾って陸斗を引っ張ってどうにか降りた。


 自転車でスーパーに行きながら思い出してしまい腹が立った。そしてやっぱり悔しくて涙が滲んだ。

 

 こんな時にお母さんがいてくれたらって思う。

 そしたら病院も近くの内科じゃなくて、小さい頃から行っている小児科を受診したはずだし、当然車で行けたのに。

 陸斗だってわたしが側にいるよりずっと心強かったはずだ。


 悔しい。

 悔しいって思いながら経口補水液とかアイスとかゼリーとか、陸斗が食べられそうなものをカゴに放り込んでいった。


 





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