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彼女と友達の境界



 帰宅したら陸斗に怒られた。


 希君と別れてから謝罪のチャットを入れようとしたら、心配と所在を確認するチャットが鬼のように入っていて。急いで返事をしたら即既読がついてからのスルー。これは怒られると思った通りでしっかり怒られた。


 駅について電車を降りると陸斗と林弟がいた。

 帰宅時間を過ぎても帰ってこないわたしを心配して、遅くなったので駅まで迎えに来てくれたのだ。

 林弟がいるのは陸斗と遊んでいたから。


 わたしが帰ってくるまでの約束で家にいたそうだけど、「連絡もなしで既読もつかないから心配したよー」って、空君。


 空君は明るいけど陸斗は怒りオーラに包まれていて本当に怖かった。

 空君が帰宅した途端、「約束って破るためにあるの?」って冷たく言われた。「連絡がつかなくて心配する方の身になったことある? お父さんとお母さんが死んだ時、連絡つかなくて心配しなかった?」と痛いところを突かれて返す言葉がない。「申し訳ございません」と両手をついて謝ったけど不機嫌マックスで。


「姉ちゃんは彼氏ができてから素行が悪くなった」

「返す言葉もございません」

「親がいないからってハメ外し過ぎだよ。ちゃんとしなきゃって言ってる本人がちゃんとしないでどうするんだよ」

「おっしゃる通りです」

「彼氏と盛り上がって時間を忘れた?」

「そのようなことは決してございません」

「なに? 別れるのやめたとか?」

「そこはちゃんと別れてきたよ。今日で最後です」

「ふーん。分かった。もう遅いから風呂入りなよ。俺は先に寝るから」

「ぜひそうしてください」


 両手をついて謝罪の姿勢のまま陸斗をお見送る。「はーっ……」と大きなため息をついて顔を上げた。


 なんか、色々と疲れた。

 陸斗の言うことは最もで。だけど希君に付き合って遅くなったことも後悔してない。


 別れてしまったけど希君と過ごした時間が楽しかったのは事実だ。保護者がいない状態でも羽目を外さず、わりと健全な交際だったと思う。


 希君がわたしを選んでくれた理由は酷いけど、好きなのは本当らしいしもう気にするのはやめよう。

 陸斗に叱られたせいなのか、そんなことは大したことじゃないと思ってしまった。


 実の母親に捨てられたなんて、そのせいで家族の中にあっても疎外感を感じていているなんて知らなかった。

 あんなふうに泣いちゃうなんて。弱さを見せられると絆されそうになる。

 初めから希君の事情を知っていたら付き合い方や結末は変わっていたかもしれない。きっとわたしも寂しさから希君に依存したんだろうな。


 翌日、登校して友達に希君と別れたことを報告した。理由を聞かれたけど希君の事情は言わずに、気持ちが無くなったからだと伝えた。


 お昼に食堂でうどんを食べていたら「由美香ちゃん!」と呼ばれて振り返ると、トレーを持った希君が笑っていた。


「隣に座っていい?」と言って、返事を待たずに座るとスプーンを持つ。希君の今日のお昼はカレーライスだった。


「昨日はチョコクッキーありがとう。すっげー美味かった。遅くなったけど叱られなかった?」


 あれ?

 希君がいつもと変わらない。

 わたしは戸惑いながら「うん、大丈夫だったよ」と返事をしてから、名前の呼び方が変わったことにようやく気づいた。


 なるほど。

 希君にとって彼女は呼び捨てなんだね。


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