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チョコレート



 2月14日は平日だったので、前倒しで日曜日の12日に会うことになった。


 考え方に妥協できなかったけど、希君を嫌いになったわけじゃないので、前日にチョコレートクッキーを手作りすることにした。


 焼いたクッキーをチョコに浸したり、チョコペンで絵を描いたり、チョコを挟んだりしたくて。

 まずはクッキーを焼いたんだけど、レシピ通りなのに黒焦げ寸前になるのはなんでなの?


 苦戦していると、匂いにつられてやってきた陸斗から「彼氏にあげるの?」と不機嫌そうに聞かれた。


「彼氏もだけど、陸斗と林君ちの分も作るよ」

「空に?」

「メインは空君のお母さんに。お世話になってるからお礼のチョコ」


 陸斗は「ふ〜ん」と言ってから室温に戻す途中の玉子を手に取って「手伝うよ」と割った。あっという間に卵黄と卵白に分ける作業を丁寧かつ素早く終わらせてしまう。


 わたしよりも陸斗の方が料理ができる。家庭科部に入っているからじゃなくて、色々なことで器用なのだ。


 陸斗が手際よく薄力粉を量る隣でバターと砂糖を混ぜ合わせながら、「希君と別れることにした」と報告したら、薄力粉がドバっと袋から溢れて白い粉が舞った。


「なんで……俺のせい?」って唖然としてる。何だかおかしくて、笑いながら「違うよ」と答えた。


「や、でも……これ、渡すんだよね?」

「渡すよ。考え方が合わなくて、わたしから別れようって言ったの。で、バレンタインデーで最後にすることになった」


 正直に話すと、陸斗は「そっか」と言いながら、出しすぎた薄力粉を袋に戻している。

 この後、陸斗のお陰でとっても美味しいクッキーが大量に出来上がった。


 透明の袋に個包装してから可愛くラッピングする。その足で林家に行くと、年末のぎっくり腰から発熱を伴う風邪を引いて後、再びぎっくり腰になって何かと大変だった林君のお母さんが出迎えてくれた。


「由美香ちゃん、久し振りね。どうしたの?」


 本当に久し振りだ。明るい声で見た感じ元気そうでなにより。


「バレンタインデーが近いので陸斗と一緒にクッキーを焼いたんです。良かったら食べてください」


 と言って袋詰したクッキーを差し出すと、林君のお母さんから「えっ!?」と声が漏れて、「もしかして海に?!」と瞳を輝かせる。

 陸斗と一緒に作ったって台詞が耳に入らなかったようだ。


「林家の皆さんにです。陸斗と作ったんです」

「陸斗君も? 凄いじゃない、ありがとう! お土産頂いたばかりなのにこんなに沢山いいの?」

「四人分なので。皆さんでぜひ」


 わたし一人で作っていたら渡せなかったかもしれない。たけど陸斗の手が入ったことで、とても綺麗に、かつ美味しく出来上がったのだ。


 先日は修学旅行のお土産として饅頭の詰め合わせを林弟経由で渡した。林兄に貰ったのと同じくらい大きな箱にした。

 袋にはその箱の中身に負けないくらいのクッキーが入っている。

 プレーンと、チョコ引っ掛けたのと、チョコサンドと、チョコペンで顔を描いたやつ。

 ぜひとも陸斗の作品を味わって欲しい……と思ったけど、いや違うと思い直す。わたしも作ったんだから!



 

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