別れ話
希君と一緒にいても楽しくなくなった。
初めの頃は色んなことがキラキラしていたのに、クリスマス前に揉めてから少しずつ変わってきたように思う。
決定的なことは考え方の違い。
彼女がいるのに他の女の子と二人で会うことに何の疑問もなくて、「会う理由が彼女と会えないから」と言うのは、やっぱりどうしても理解できなかった。
親がいない環境のせいなのかもしれないけど、わたしの考えは古くてずれているのかもしれない。
だから友達に相談してみたけど、「希君ってちょっと変だね」「彼氏からそんなこと言われたら辛すぎる」との答えが返ってきた。
このまま希君との関係を続けることも出来ると思ったけど、わたしは別れることを選んだ。
希君は驚いた後に「琴音ちゃんと遊ぶのを我慢すれば良いわけ?」と、不満そうに顔を顰めた。
「希君はわたしに会いたいって思ってくれるけど、わたしの都合で会えないから琴音ちゃんや他の女の子と二人で遊ぶでしょ」
「ただの友達だよ。友達と遊んで何が悪いの? そこまで文句言われないといけないこと? それに女の子じゃない時もあるし、複数の時だってある」
「そうだとしても、希君はわたしがどうして嫌なのか理解できないし、わたしも希君が理解できないの」
「分かったよ。女の子と二人で会うのは辞める。それならいいんだろ!」
希君はとても不満そうに声を荒げた。
「それじゃ希君は不満を持ったままでしょ」
「しょうがないだろ。由美香が会うなって言うから」
「会っていいよ。琴音ちゃんや女の子と遊ぶことをわたしに止める権利はない」
希君とわたしの考えに大きな隔たりがある以上は分かり合えないし、どちらかの気持ちを優先させたら不満だけが募ってしまう。そんなのって付き合っている意味ないよねってわたしは思った。
「でも別れるって言うだろ」
「琴音ちゃんや女の子と遊ばなくなっても別れたい」
「何でだよ!」
「希君への気持ちが冷めたから」
「由美香っ!?」
「だってわたしと希君は考えが合わないんだもん。どっちかがむりやり合わせても意味ないよね?」
本音をぶつけると、希君は応戦しようとしたけど言葉に詰まって悲しそうな顔をした。それからお互いにしばらく無言だったけど、希君が「分かった」と絞り出すように返事をしてくれた。
希君からすると完全にわたしの我が儘だ。気持ちを弄ぶ酷い女と思われてるかもしれないけど、しぶしぶでも分かってくれてほっとしていたわたしに、「その代わり」と希君が続ける。
「バレンタインデーまでは彼女でいて欲しい。駄目なら別れたくない」
わたしは少しだけ考えて「分かった」と返事をした。




