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女友達



 1月3日。希君との初詣は初めて行く神社。

 参拝客は変わらず多くて手を繋いで歩いているけど、気持ちはどんよりと曇っていた。


 気付いた希君が「どうしたの、機嫌悪い?」と心配そうに顔を覗き込んできたので、元旦に神社に行って希君をみたことを伝えた。

 すると希君は笑顔で「声をかけてくれれば良かったのに」と声を弾ませた。


「女の子と二人だった。体を寄せ合ってぴったり密着してたよね。声なんかかけられる雰囲気じゃなかったよ」

「もしかして浮気を疑ってる? 彼女はただの友達。密着してたのは人が多かったからだよ」


 確かに人が多くて肩が触れ合うのは分かるけど、友達の距離じゃなかった。


「あの女の子って。もしかしてクリスマスにオールした子じゃないよね?」


 クリスマスに一緒に過ごした後、翌日の夕方まで希君とは連絡が取れなかった。わたしと別れた後に友達とオールしたのは聞いたけど、どんな友達だとかは聞いてない。男の子の集団で遊んだのだと勝手に思い込んでいたけど、何だか嫌な予感がして思わず聞いてしまった。すると「そうだけど?」と、それが何とでも言うように、希君は悪意のない目でわたしを見つめてくる。


「まさか二人で?」

「最初は何人かいたけど、あいつが抜けたいって言うから。途中から朝まで二人だった。でもなにもやましいことはないよ。俺が好きなのは由美香だけだから」

 

 何でもないことのように変わらない笑顔を向けてくる希君。

 え? なに? 意味がわからない。わたしの思考がおかしいの?

 あまりにも普通のことのように言われて、わたしの感情が変なのだろうかと思い始めてしまう。


「わたしと付き合いだしてから他の女の子と二人きりで遊んだりした?」と聞いたら、希君は不思議そうに「うん」と頷いた。


 あれ? こういうのって普通のことだっけ?

 わたしも林兄とほぼ無言だけど一緒に帰宅してるし、希君が女の子と二人で遊ぶことを禁止するなんてことはやっちゃいけないのだろうけど。

 でもこれって、わたしが陸斗と林兄弟の四人で初詣に行くのとは違くない?

 疑問で頭の中がぐるぐる渦巻く。


「遊んだのって、その……初詣とオールした女の子の他にもいるの?」

「いるけど、だいたい琴音ことねちゃんかな?」


 悪気も何も無いようで、希君の口から女の子の名前が出てきた。彼女は琴音ちゃんと言うらしい。


「琴音ちゃんって同じ学校だっけ? それとも他校? 希君とどういう関係なの?」

「私立の女子校通ってる元カノ」


 はぁっ!?

 絶句。

 え?

 元カノと二人で遊んでるの?

 希君にその気がないとしても元カノは?


「それって女友達じゃなくない?」

「友達だよ」


 希君にその気がなくても、間違いなく親密な距離だった。そんな女の子とクリスマスの夜に二人きりでいたの? 駅で別れた時、希君は元カノの琴音ちゃんに連絡していたのではないかと疑ってしまう。


「じゃあさ、わたしが男の子と二人でクリスマスにオールしたり、初詣に行ってもいいのね」

「駄目に決まってるじゃん」

「なんで? 希君は女の子と二人で遊ぶのにどうしてわたしは駄目なの?」

「由美香が俺と一緒にいたいってなったら俺はいつでもオッケーだから。由美香が一緒に過ごせないって言うから、仕方なく琴音ちゃんと過ごしただけだし」


 仕方なくってなに?

 わたしと一緒に過ごせないなら家に帰って家族と過ごすか、男友達とか、その他大勢で遊べばいいじゃないって思うわたしはおかしいの?


「由美香んちに行きたいとか、夜遅くまで一緒にいたいとかってのを俺は我慢してる。それは由美香の事情を分かってるからだよ。由美香のこと大好きだから無理は言わないようにしたのに何が不満なの?」


 何がって、希君は本気で聞いてくる。

 やっぱりわたしがおかしいのかな?


「琴音ちゃんが元カノだとか、オールで遊んだとか。嘘つかずに話したのはやましいことがないからだよ」


 希君の言葉で、母のスマホにあった父とあの女のやり取りを思い出した。

 母はどんな思いであのやり取りを保存したのか。

 わたしと希君は、根本的に考えが合わないかもしれないと感じた。




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