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初詣



 さすが県下一の参拝者を誇る神社。

 ものすごい人出で、参道はぎゅうぎゅう。列は敷地からはみ出してどこまでも続いていた。


 林兄が「並ぶのはやめよう」と提案すると、林弟からは苦情の叫びが上がった。


「並んだら日が暮れる」と言う林兄。わたしも同意見だけど、林弟は「鳥居をくぐって参道通らない初詣とかある!?」と最もな意見を述べる。


「一の鳥居を潜らなくても、途中合流すれば二の鳥居は潜れる」と、案内板を示して林兄が突き放す。

 どこまでも果てしなく続く列の傍らには、途中合流ポイントがいくつか記されていた。


 一の鳥居と言われる、長い参道の始まりの場所に立っているのだけど、まだまだ遠くまで列は続いているのに牛歩状態。「どのくらい並んでますか?」と並んでいた年配の参拝者に聞いたら「1時間」と言われて、林弟以外の三人は無言で二の鳥居を目指した。


「ちょっと待って。本当に一の鳥居を潜らないつもり? それで初詣と言える!?」


 林弟からは半泣きで苦情が上がったけど、最後尾に並んだら確実に2時間以上は待つことになる。どこのアトラクションだよ。先を行くわたしと林兄の後ろでは「アイス奢ってやるから」と、陸斗が林弟を慰めていた。


 参拝の列に途中から合流するのにも一苦労だ。真ん中は参道を歩いてきた人たち優先で、その左右が二の鳥居から合流した人たちの列になっている。

 そこからお賽銭を投げて参拝するまで30分。無事に参拝を終えておみくじの列に並んだ。


 白くたたまれたおみくじをそっと開く。小吉だ。

 林弟が「由美香ちゃんはなんだった?」と言ったのに被せるように、「希は何が出たの」と、はしゃいだ高音が耳について思わず振り返った。


 人混みに紛れて希君がいた。「大吉」と自信満々に聞き慣れた声が答える。「すごーい!」と、可愛らしい女の子が希君と体を密着させて、お互いのおみくじを見せ合っていた。


 希君には女の兄弟はいない。しかもその密着に醸し出す雰囲気は親戚とかでもないだろう。

 まいったな。

 新年早々、嫌なものを見てしまった。




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