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喧嘩



 彼氏ができて浮かれていた。遊ぶのが楽しくて、ちょっとなら大丈夫がどんどんエスカレートして、部活をしている陸斗よりも遅く帰るのが普通になってしまっていた。


 夕飯も陸斗任せかスーパーの惣菜やコンビニが増えてしまって、大して散らからないのをいいことに掃除もサボってしまって。友達との付き合いを大事にするべきという陸斗の考えのおかげで、陸斗がわたしの分の役目を補ってくれていたのにも気付けなかった。


 これではいけないと気付くのに一月半もかかってしまった。

 十二月を目前にして、周囲はすっかりクリスマスモード。素敵なイルミネーションがきらきらしていて。希君が誘ってくれたけど、帰宅が遅くなるのはだめだからと断った。


「土日ならちょっとくらい遅くなっても大丈夫だけど、8時までには帰りたいんだ」

「何で? 由美香んちは煩く言う親いないでしょ?」

「……親はいないけど弟がいるの」

「もう中一だろ。由美香が一緒じゃないと飯も食えないとかなくない?」


 希君はちょっと機嫌悪そうになった。

 煩く言う親がいないから好き勝手していい状況じゃない。


「未成年だけで暮らしてるから、何かあったら弟と一緒に住めなくなるかもしれない。生活態度もちゃんとしないと、いつ何があるか分からないし。親の知り合いだったって言われて、変な人を家に上げちゃうこともあるかもしれないし」


 父の浮気やあの女のことは話してない。だけど姉と弟の二人きりで生活しているわたし達の現状を理解して欲しかった。


「じゃあクリスマスは?」


 クリスマスマスイブは土曜日だ。本当ならわたしだって希君と時間を考えずにずっと一緒に過ごしたい。ちょっと遠いけど豪華なイルミネーションのある駅にも行ってみたいし、一緒に歩いたり食事も楽しんでみたい。

 でもわたしは陸斗のことも考えなきゃいけない。

 去年までは家族で食卓を囲んだのに、父と母のいなくなったクリスマスの夜に、陸斗一人でカップラーメンを啜らせるようなことはさせたくなかった。

 

「昼ならいいけど夜は会えない」

「俺たち来年は受験だよ。今年しか楽しめないのに、彼女が俺より弟を優先するとかあり得ないんだけど」

「ごめん」


 気持ちは分かる。本当に分かるけど譲れなかった。

 下を向いて「ごめんなさい」と謝辞するしかできなくて。希君は大きな溜息を吐くと、「いいよ、他の子探すから」と踵を返した。


「え、ちょっと待ってよ!」


 慌てて後を追う。

 下校路なので何事かと同じ高校の生徒がわたし達を見ていたけど気にする余裕はなかった。


「他の子探すってどういう意味?」って聞いたら、「そのまんまの意味」だと冷たく言われる。


「俺はちゃんと由美香のこと好きだったのに、由美香は弟のことばっかり気にして。由美香んち行きたいって言っても弟がいるからって断るし。親いないんだから色々できるって期待してたけどとんだ肩透かしだったよ」


 わたしは希君の言葉に衝撃を受けた。

 


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