二人きり
両親が死んで二人きりになった。
唯一の親戚らしい父方の伯父は、「私は面倒みれないよ。由美香はもう高校生だ。二人とも子供じゃないから大丈夫」と言って、伯父の住んでいる県外に帰ってしまった。
伯父に会うのは今回が初めてだった。会ったばかりで、名前しか知らなかった伯父に頼ることなんて考えていなかった。
何よりも突然のことだったので、何をどう考えたらいいのかすら分からなかった。ただ、これからは弟と二人きりだということはなんとなく感じていて。
そんな中で伯父のような人でもいなくなってしまうと途端に不安が増した。
わたしは陸斗と二人で、今後どうしたらいいのかわからず途方に暮れた。
相談に乗ってくれたのは、様子を見に来てくれた高一の担任の菅原先生と、わたしが中学三年だった時の担任、小野川先生。
小野川先生は「本当は秘密なんだけど」と前置きして、陸斗が中学に入った時の担任になることが決まったと教えてくれた。
陸斗の担任はわたしが知っている、そしてわたしを知っている教師がいいと中学校が考えてくれたようだ。
菅原先生は通夜の晩からずっと近くにいてくれた。
今となってはわたしにとって一番近い大人なのに、今年度で学校を辞めて親の介護をするそうで、間もなくいなくなってしまう。
先生は、県外の実家に帰るので力になれない代わりにと、友人の弁護士を紹介してくれた。
弁護士の沖田さんは、両親が残してくれた貯金や生命保険の手続きを代行してくれて、家の相続まで全てやってくれることになった。
わたし達の保護者はあの伯父になるが、わたしは伯父の連絡先も住所も知らなかった。
伯父はわたし達には関わりたくないらしい。沖田さんに言われて、わたしと陸斗は伯父の世話になれないことを理解した。
だたわたし達は未成年なので、何か問題が起きたときには伯父に連絡が行くそうだ。
わたし達を拒絶するあの人と関わりたくないので、しっかりしなくてはと思ったが、不安な気持ちは治まることがなくて、今にもはち切れそうだった。
弁護士さんや先生を含む大人達の力を借りて、わたしと陸斗は両親が建てた家に住み続けることができるようになった。
両親が貯めてくれたお金と生命保険、それから加害者から支払われる慰謝料は、わたし達にとっては莫大な金額になると言われた。
二人で生活して大学にも行ける金額で、わたしが成人するまでは弁護士の沖田さんが管理してくれることになった。
こういった金銭を狙う親戚もいるらしく、その点に関して伯父が全く興味を示さなかったことは、わたし達姉弟にとって唯一の良かったことなのだろうか。
弁護士さんが言うには、伯父は過去に問題のあった人らしい。
「由美香さん達のお金に興味がないのはありがたいけど……少し注意しておくよ」と、硬い表情で言っていた。
生きていくにはお金がいる。分かっているけど、お金がなくてもいいからお父さんとお母さんに帰ってきて欲しい。そんな気持ちになったが、隣には無表情の陸斗がいたので口には出さなかった。