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激震 夜刀神降臨

76 激震 夜刀神降臨




 煌びやかな着物に身を包んだ土御門雅つちみかどみやびと虎と龍の刺繍の入ったジャンパーにジーンズ姿の夜雲は、異様な組み合わせに見えた。


「何だい? もう動けるようになったのかい?」


 鶴姫が、席を立って夜雲らを出迎えた。


「ああ、もう全快さ」


「その割には、女の肩を借りているようだが」


 鶴姫は、夜雲にぴたりと寄り添う雅に笑いかける。


「まだ完全ではありません。先ほどだって階段でつまずいて・・・」


 すねた顔で、雅は夜雲を見上げた。

 そして、雅は店の奥にいるミッチーの存在に気づいた。

 鶴姫が、身体をずらして隠そうとしてくれていたのだが、見つかってしまった。


「あら、またお会いしましたね」


 雅は、夜雲の身体から離れると、店の奥へと進んだ。

 ミッチーは、雅をじっと見つめ無言で頭を垂れる。

 雅がミッチーのすぐそばまで来ると、ユキさんがその間に入った。

 怪訝そうな面持ちで、雅はユキさんを見る。


「そちらの席が空いております。そちらの席をお使いください」


 ユキさんは、従業員の言葉づかいで空いているテーブル席を指し示した。

 雅は、ユキさんの背後に立つミッチーを一瞥すると、おとなしく席に着いた。

 夜雲も、居たたまれない顔をして雅の隣に座る。


「ミヤビー、カチンコチンにょー、服ぬぐにょー」


 ソファーの背もたれを伝い歩きながら、リトが雅の元へやってきた。


「リト様! 申し訳ありません。今日は陰陽師として大事な儀式があるとかで、正装で参ったのです」


 雅は、リトを見るなり華やいだ顔をした。

 良かった。

 雅は、笑顔の方が可愛い。


「雅も、夜刀爺さんに呼ばれたの?」


 俺は、黒鷹の前のテーブルから、雅たちのテーブルに移動した。


「ええ、夜雲さまとご一緒せよとのことでした・・・」


 そう答えた雅が、奥のカウンターにいる淑女にも気づいてしまった。


「お前は!」


 雅は、勢い良く立ち上がると、懐の短刀に手を伸ばす。


「式神!」


「まてい!」


 式神を召喚しようとする雅を、ウェイトレス姿のカシンが飛びついて阻止した。


「お願い、やめて・・・お店の中だから・・・」


 懇願するカシンを、雅は苦虫を噛み潰したような顔で見る。

 そして、渋々席に座った。


「いったい、どうなってるのこの店は!」


 座りながら、雅はそう吐き捨てた。





 さっきまで穏やかな昼食会だったのに、急にピリピリしだしてしまった。

 リトは、雅の胸では居心地が悪いらしく、この中では一番居心地の良い少女カシンの胸に収まっている。


「さて、そろそろ頃合いでしょうか」


 ミッチーが席を立ち、カウンターの愛さんに目配せする。


「我々は、先に行っておきますね」


 ミッチーは、カウンターの中のカシンや千代さんに食事をほめたり、礼など述べたりして店を出る。

 その後を、愛さんと田力我聞が続いた。


「ごめんなさい。ゆっくりできなかったでしょう」


 白いレースの前掛けで手を拭きながら、少女カシンが見送りに出てきた。


「ええ、そうね。今度は、他に客のいないときに、お邪魔しますわ」


 愛さんが、店内に残っている俺たちを撫でるように見回して言う。

 みんなは、無視する。

 そんなに邪険にしなくても、と俺は思う。


「俺たちも、そろそろ行かないと・・・」


 夜雲が席を立つと、雅も寄り添って追従する。


「みんなで先に行ってて、私たちは、お店の片付けをして向かうから」


 カシンと千代さんとユキさんが、慌ただしく片付けを始めた。

 リトは、カウンターに飛び乗るとカシンらの作業を急かす。


「早くするにょー」


 なんだろう?

 みんなで一緒に行きたいのかな?


「リト様、わたくしが――」


 リトを抱こうと雅が手を伸ばすと、リトは毛を逆立てて牙をむく。


「ふん。お前じゃ役不足なんだよ」


 そう言って、鶴姫がリトに手を伸ばすが、リトの反応は一緒だった。


「シワシワも、カチコチもいやにょー」


 ああ、リトは抱っこされる相手にこだわっているんだ。

 さしずめ、カシンかユキさんをご所望なのだろう。

 千代さんでも良いのかな?


 雅と鶴姫は、二人並んで肩を落とし店を出て行った。

 外で待っていた夜雲と黒鷹が、2人を慰めている。


 みんなが店を出た後、リトは店長にでもなったつもりなのか、カシンたちに的外れな指示を出して、急かしているようで邪魔をしていた。

 その所為で、余計に時間がかかったのではないかと思うが、それを俺の口から指摘できるはずもなく・・・


「お待たせー、さぁ、行こうか」


 一瞬で、ウェイトレスの格好から黒のワンピースと黒いコートに着替えた少女カシンが、店内の照明を消す。


「わわ、待ってーー」


 奥の部屋から、黒い着物姿のユキさんと、いつも通りのスーツ姿の千代さんが、慌ただしく出てきた。


「千代さん、帯大丈夫でしょうか?」


「ええ、でもちょっとお待ちください」


 千代さんは、ユキさんの背後でユキさんの着物の帯を締めなおし、咥えていたヘアピンでユキさんの耳にかかる髪を固定する。


「なんでみんな黒い服?」


 俺は、誰ともなく訊ねたが、リトの所為で答えてもらえなかった。

 リトは、カウンターからカシンに飛びついて、カシンを困らせる。


「うわぁー、リト様、今日は歩いてくれないかしら――」


 黒い服に、リトの毛が着くのが嫌らしい。


「がぅ」


 リトは、カシンの胸にしがみついて離れない。


「はぁ、千代、コロコロ持って行ってくれる」


「かしこまりました」


 千代さんは、カウンター裏からべとべとする紙のローラーを取り出して、バックにしまった。

 ああ、どこかのおうちで、いじめられた覚えがある。

 背中や腹をコロコロされて、不快だった。


 リトはカシンに抱っこされ、俺は徒歩で店を出た。

 抱っこしてほしかったけど、コロコロされるのも嫌だったので、俺は黙ってカシンらの後をついて行った。





 俺たちが夜刀神社に着くと、すでに他の者たちは境内にいた。

 仲の悪い者もいて気まずかったのか、俺たちはとても歓迎された。

 しかし、なんでみんな黒い服なんだろう?


 千代さんや、愛さんはいつも黒い服だけど、カシンやユキさんまで・・・

 まぁ、雅は派手な着物だけど、黒と言えば黒だ。

 その派手な着物を着た雅が、石畳の上に小さな机を置いて、菊の花を生けた花瓶や蠟燭を灯した燭台などを準備する。


「にゅー、つまらないにょー、ねんこするにょー」


 カシンの胸の中で、リトが暴れた。

 お社の中に行きたいみたいだ。


「寝ていても良いですけど、ここにいてください」


 カシンがリトの頭を撫でて、リトをなだめる。

 リトは、渋々カシンの胸にうずくまった。


「いらしたようですね」


 ミッチーが、眼鏡を直しながら鳥居の先を見つめて言う。

 神社に続く参道の入り口付近に、小さな老人の姿があった。

 夜刀爺さんだ。


 髪の毛のない頭が、光っているから遠くからでもすぐわかる。

 みんな石畳の真ん中を開けて、端によけた。

 雅が、石畳に膝をついて祝詞を読み上げる。


 夜刀爺さんが、ゆっくりと歩いてきた。

 夜刀爺さんは、首に白い布をかけていて、四角い木の箱をぶら下げていた。

 それを見て、俺はこれから何が始まるのか理解した。


 みんな神妙な顔をして、夜刀爺さんを迎える。

 夜刀爺さんが、鳥居の真下まで来ると、その表情が窺えた。

 怒ってる?


「おい! 雅やめろ!」


 祝詞をあげる雅を、夜刀爺さんが怒鳴って制した。

 何で怒っているのかわからないけど、緊迫した雰囲気に包まれた。


「おい、猫2匹! 前に出ろ!」


 鳥居から数歩進んだところで、夜刀爺さんは歩みを止め、また怒鳴る。

 猫2匹って、俺とリトのことだよな。

 俺は、恐る恐るカシンと一緒に夜刀爺さんの前に出た。


「お前ら、封印はどうしたんだよ!」


 夜刀爺さんは、すごい剣幕で言った。

 封印とは?

 何のことかわからない。

 困った俺は、隣に立つカシンの顔を見上げた。


「あ・・・封印・・・していないでしょう・・・」


 カシンは、リトを抱いたまましゃがんで俺に訊いてきた。


「何? 封印って?」


 俺には、ちんぷんかんぷんだ。


「邪界木を倒した後、封印をしないとまたすぐ出てきちゃうから・・・」


 カシンは小声で言うが、そんなこと知らないし・・・


「まぁ、そのことは良いじゃありませんか」


 ミッチーがそう言いながら、俺の隣に出てきて、俺を抱き上げる。

 男に抱っこされるのは、基本嫌なんだけど・・・今は許す。

 ミッチーの隣に、愛さんもいた。


「この二人に感謝するんだな! お前らの中途半端を始末してくれたんだからな」


 夜刀爺さんは、鼻を鳴らして首から下げている木の箱を石畳の上に置いた。


「え! もしかして、天神様と愛さんで封印してくれたの?」


 カシンが、小声でミッチーに訊ねる。


「いえ、邪界木はどうなったかと様子を見に行ったのですが、すでに闘いは終結していまして・・・愛さんが大きな石を運んでいらしたので、お手伝いしただけですが・・・」


「姉さん世話になったな」


 夜刀爺さんが、愛さんに軽く頭を下げる。


「いえ、魔王さんとあなたがいらっしゃらなかったら、何もできませんでしたわ」


 愛さんが言うと、すかさずミッチーが補足する。


「結局、夜刀神様が封印をされたということです。私と愛さんは、その準備をしただけのこと」


 そういう事だったんだ・・・


「リト・・・お礼を言わないと・・・」


 俺は、カシンの胸の中にいるリトに声をかけた。


「スピー、スピー」


 リトの返事は、寝息だった。


「爺さん・・・それが・・・」


 夜雲が出てきて、木箱の前で膝をついた。

 震える手で木箱を掴んで、項垂れる。

 お社の前に座っていた雅が、慌てて出てきて夜雲の背を摩った。


「夜雲! そうしてたって始まらねぇ、御遺骨を祭壇まで運びな!」


 鶴姫が、厳しい口調で夜雲に言う。


「はぁ? 何言ってんだ婆さん?」


 怪訝そうな顔で、夜刀爺さんが言った。


「俺の娘を、死んだみたいに言うのはやめてもらおうか」


 夜刀爺さんが、鶴姫を睨みつける。

 鶴姫は、眉間に眉を寄せ首を傾げた。

 みんなも訳が分からなくて、きょとんとしている。


「ああ、爺さんとうとうボケたのかい?」


 鶴姫が、悲しそうな顔で夜刀爺さんの顔を覗き込む。


「ボケた婆さんに、ボケ扱いされたくないわ!」


「ああん! 喧嘩討ってんのか、疫病神!」


 爺さんと婆さんの喧嘩が始まろうとしたとき、四角い木箱から微かな音がした。

 みんなが、一瞬で静まる。

 木箱を掴んでいた夜雲が、乱暴に木箱の蓋を払いのけ、中の骨壺の蓋も放り投げる。


 そして、その中をしばらく凝視した後、膝で後ずさり石畳に額をつけた。

 夜雲は、石畳に額をこすりつけながら、言葉にならないうめき声をあげる。

 俺は、ミッチーの腕から逃れ骨壺の中を覗き込む。

 骨壺の中には、1匹の蛇がいた。





 骨壺の中の蛇は、体調50cmぐらいの、ヤマカガシである。

 真っ黒い目で俺を見つめて、ときおり細い舌を出した。

 普段なら、蛇など見たら飛び上がってしまう所だが、俺にはそれが誰なのかわかっていた。


「夜刀神様! 夜刀神様!」


 夜雲は、むせび泣きながら何度も主神の名を呼びひれ伏した。

 骨壺の中のヤマカガシが、鎌首をもたげて俺の目から出てくる水を舐めとる。


「チッ、おい疫病神! そうならそうと先に言え!」


 俺の背後から、鶴姫が悪態をついた。

 でもその声は震えていて、それ以上は何も言わなかった。


「何だ、お前ら小角おづぬに訊いていなかったのか?」


 夜刀爺さんも、みんなの反応を訝しく思ったようだ。


「何で、骨壺に入れてくるのよ。紛らわしい」


 少女カシンが、夜刀爺さんを非難する。


「仕方ねぇだろう! 電車に蛇乗せられないだろうが!」


 電車で来たのか・・・


「だからって、骨壺じゃなくたっていいでしょうに」


 カシンは、非難がましく夜刀爺さんを睨み呟いた。


夜笑やえを連れて行くとしか、聞いていませんでした」


 夜雲に寄り添う雅も、夜刀爺さんに冷たい視線を向けた。


「それで伝わると思ったんだよ!」


 夜刀爺さんも、少し困った様子だ。


「ああ、私から説明しましょう」


 混乱気味の一堂に対し、ミッチーが説明した。


「蛇の娘夜笑やえさんは、遺体の損傷が激しく蘇生は不可能でした。そこで、役小柄えんのおづぬら天狗の一族は、安倍晴明あべのせいめいが発案したという泰山府君祭たいざんふくんさいを執り行ったのです」


小角おづぬ殿が!」


 雅は、それを聞いてたいそう驚いた様子だ。

 雅が呟く内容からすると、泰山府君祭はとても難しい術のようで、そんな事ができるのかと、悔しそうに唇を嚙んでいた。


「何故、お前がそれを知っている?」


 驚き呟いた後で、雅は訝しみミッチーに問う。


「正直、小角おづぬ殿といえど、難しい術式です。そこで、私と夜刀様と愛さんで協力しました」

「なんだと!」


 みんな一斉に愛さんに目を向けた。


「あら、感謝するなら今からでも遅くはないですよ」


 愛さんは、口元を隠して不敵に笑う。


「天神様はともかく、何故あなたまで?」


 警戒しながら、少女カシンが訊ねた。


「まだわからないの? 美しかったでしょう? あの娘の死にざま・・・ああ、思い出したらよだれが出てきますわ」


 愛さんは、舌を出して唇を舐める。

 みんな、愛さんを見るのをやめた。


「まぁ、元の身体はどうにもならなかったからよぉ、蛇で再生する他なかった、つぅう訳だ」


 夜刀爺さんは、足元のヤマカガシを見下ろしながら言う。


「それから夜刀様は、行方なめかたで夜笑さんを休め、御山に向かい、封印を施し、また行方に向かいと、大忙しだったわけです」


「夜刀神様、本当に、本当にありがとうございました」


 子供のように、鼻水まで流しながら夜雲が石畳に何度も頭をつけた。


「もう良い。みっともねぇからやめろ!」


 そんな夜雲を、夜刀爺さんは優しく叱った。


「にゅー、蛇にょー」


 いつの間に起きたのか、リトが骨壺に前足をかけて中を覗き込んでいる。


「リト、夜笑さんだよ」


 リトも喜んでいるのだろう。

 そう思ったら、また泣けてきた。


「にゅー、おいしそうにょー」


 リトは、ぱくりとヤマカガシの頭をくわえる。

 え・・・何してる? こいつ?

 みんな、黙ってリトをただ見つめた。


 リトは、夜笑さんであるヤマカガシを骨壺から引きずり出すと、そのままお社の裏へと駆けていく。

 ふざけるな!


「まぁてぇぇぇ」


 俺は、嘘のような現実に我を失った。

 食われてたまるか!

 冗談じゃない!

 俺の中で、邪界木の時に覚えた怒りよりも大きな怒りが爆発する。


「夜笑さんをぉぉぉぉ食うなぁぁぁぁぁあああああああ」


 俺の身体は、巨大化した。

 白虎になったのだ。

 俺のお尻にあたって、鳥居が吹っ飛ぶ。


「きゃぁぁぁぁ」


 絹を裂くような悲鳴が、俺の足元から聞こえた。

 誰の声かは、わからない。


「落ち着け、ボケが!」


 夜刀爺さんの声がしたと思ったら、俺の身体はひっくり返って、お社を見ていたはずの俺の目に空が映っていた。

 何が起きたのかわからなかったけど、起き上がろうとしても起き上がれなかった。

 小さな老人の夜刀爺さんが、俺の鼻を片手で押さえつけている。


「あいつが仕上げをするんだよ。黙って見とけ!」


 夜刀爺さんは、片手で白虎化した俺の巨体を押さえつけ、いつの間に用意したのか一升瓶の蓋を口で開けると、中の酒をあおった。

 俺は、成す術もなく石畳の上に寝そべっている。


 白虎化した身体は、徐々に元の白猫に戻っていった。

 突然、お社が黄金色の後光に包まれた。

 まるで、お社の背後から日が昇ったかのようだ。


 小さくなった俺は、背後から女性に抱き上げられる。

 誰だかわからないが、とても大きな胸だった。

 俺は、お社から目が離せないでいる。


 後光が、徐々に消えていく。

 後光が完全に消えると、そこには元のボロボロのお社が残された。

 何だっただろう・・・


 俺は、疑問に答えてもらおうと、俺を抱く人物の顔を見上げた。

 真っ黒い、月のない夜のような瞳が、俺を凝視していた。


「フフフ、あなたの怒り・・・美しかったわぁ」


 愛さんだった。

 俺のことを、好物でも見るかのように、舌なめずりして見ている。

 俺は、慌てて視線をお社に戻した。

 愛さんの胸の中は、不思議なほど暖かかったけど、震えが止まらなかった。


「あのぉー」


 お社の裏から、消え入りそうな声がした。

 俺の耳が、ピンとなって反応する。

 聞き覚えのある声だ。

 いや、忘れるわけがない。


「すみません。どなたか着るものを――」


 お社の裏から、黒髪を垂らした裸の女性が、片手で大きな乳房を隠し、恥ずかしそうにこちらを窺っている。

 大きな乳房の谷間には、まん丸い目でこちらを見ているリトが埋まっていた。


「夜笑さん!」


 涙声で、少女カシンが黒い風呂敷を手に駆け出した。


「いやぁあえぇぇぇ」


 声にならない声をあげながら、夜雲がよろよろとお社の方に向かう。


「ちょっと待て!」


 それを、鶴姫が襟首をつかんで制した。


「今、着替えているんだろうが!」


 しばらくすると、お社の裏から黒い小袖に同色の袴に身を包んだ夜笑さんが、リトを抱いて現れた。


「みなさん。お久しぶりです。ご心配をおかけして・・・ごめんなさい」


 夜笑さんは、そう言って深々と頭を下げた。

 でも、たぶん・・・。

 誰も聞いていなかった。

 みんなで夜笑さんの名前を呼びながら、飛び出していた。


「おかえり、夜笑さん」


 恥ずかしそうにはにかんで笑い、そのうちに泣き出してしまった夜笑さん。


「大好きだよ。夜笑さん・・・」




      陽だまりの天使 

――小さなメス猫が最強の理由――    完

 

   


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