#3話 「知られざる真相」3
お爺ちゃんは軽くため息をついて、物思いに耽るような様子で
再び永い沈黙の中に身を委ねていった。気付けば意識は現実へ
と戻り、扉を守っていた黒ずくめの男は姿を消していた。横で
はすっかり視界を取り戻したなつきが〈さあ、行きましよう。
〉と云う眼で僕を見つめている。僕はひと息ついて覚悟を決め
ると、全ての真理が待つ場所へ続く扉に手をかけた。ドアノブ
を廻すと、ガシャン―――。という音が響き渡り次の瞬間、 外
からの風圧で勢いよく扉が弾き飛ばされた。
★丑寅マモル…セイバー協会総司令官を務め、幼き日のなつき
とリタにセイバーへの道を示した張本人。謎の多い人物で親族
であるなつきでさえ名前と役職以外の情報は機密にされている。
★志賀なつき(慧眼のなつき)…10才の頃国家の命運を分ける
重大な責務を負わされた少女。信頼できるパートナー・リタと
共にまだ見ぬ世界への扉を開き始める。
★外川リタ(緘黙のリタ)…10年前の大地震で母親を失い、マ
モルの影響を受けてセイバーになることを決意した少年。垢抜
けないながらもなつきの助言に支えられ、確かな足取りで歩み
続けている。
ブワァァァ…扉が壊れ、向こう側の景色が見えた瞬間やわ
らかな大気が押し寄せて来た。それはとても穏やかで母親の胎
盤の中に居るような心地良い風だった。
その空間はゆるやかに広がっていき気が付けば視界全体を埋
め尽くしていた。2人はただぼんやりと宇宙の暗闇を漂い、身
を委ねるしかなかった。
+【裏のうら】
暗闇に漂う2人の目の前に小さな衛星が現れ、次第にその
姿は肥大化していった。2人はそれに吸い寄せられ自然と足か
ら着地した。スタッ・・・・・。目の前には大きな青い惑星が
佇んでいる。「綺麗ね――――。」なつきが思わずそう咳くと、
青く澄んだその惑星の一部から爆炎が広がり、ドドドド.....
と音を立てて崩壊していく様がうかがえた。煮えたぎるマグマ
に全体を覆われたその”星”はまるで未来の地球の姿を表して
いるようだった。メラメラと焼かれていく様子がなつきの瞳に
反射され2人は言葉を失って呆然と立ち尽くすしかなかった。
「 酷いサマでしょう 」背後から声が聴こえ2人が振り返ると、
仮面をかぶった男が立っていた。「これが地球の辿る末路です
よ。」澄み切った少年の声が2人の耳に届き、リタにはその声
がなつきに向けられたものだと解った。男は仮面にそっと手を
かけそれを上にずらした。そうして顕わになった少年の素顔は
まるで夏祭りのお面をかぶった子供のように生き生きと輝いて
いた。
なつきはきょとんとした眼でじっとそれを眺めていた――――
―――――。「久しぶりだね、なつきちゃん。」仮面を外した
少年は眼を細くしてかすかな笑みを浮かべると、「 君をずっ
と待っていたよ 」と生き別れの娘との再会を喜ぶような台詞
を続けた。
「伯父さん・・・・・・。」そう呟いたなつきの瞳から大粒の
涙が零れ落ちた。