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★SAVER  作者: 佐伯理太
4/12

#2話「慧眼のなつき」

なつきは大きく息を吸い込むと、最高司令官の待つ部屋のドア

を開けた。

「お久しぶりですね。今日は大切な用事があってここへ来まし

た。」

「そうか…私もそんな予感はしていたよ。もっとも慧眼の2つ

名を持つ君ほど勘は鋭くないがね。」

司令官はなつきに背を向けたまま穏やかなロ調でそう言った。

この部屋には窓から差し込む日差し以外季節を

感じるものは何もなかった。しんとした空気の中でシ―――…

という環境音が耳に絡みつく。なつきはその沈黙

を破るため、ここ1週間温めていたセイバーのパートナー選び

に関する策略を打ち明けた。司令官は椅子を回転させてなつき

の方に向き直ると、

「そうか、これからは君の好きに行動するといい。」と言って

指で机の上にある鍵を示すと、「これを持って地下倉庫へ行く

といい。」

「君の眼が真実を捉えることだろう。」

なつきは薄暗い倉庫の鍵を開けると、無機質な空間が広がって

いた。所狭しと並べられた書類の束が、巨大な倉庫を狭く感じ

させる。

「これが全部二次合格者のファイルなの…?」なつきは唖然と

して眼を泳がせた。それから少し息を吸って気持ちをなだめる

と、司令官である伯父の言葉を思い浮かべた。

〈SAVERにとってパートナーとなる者は重要な意味を持つ。〉

〈自分に最適な相手はこの世界にただ一人だけ存在する。それ

を見抜くことが出来れば大きな力になるだろう。〉

いつもは迷いなく行動するなつきも、今回ばかりは頭を悩ませ

た。なんせ今の自分の選択が国家の命運を分けることになるの

だ。

―――10才の頃、悪の組織の陰謀によって起きた巨大地震によ

って全てを失ったなつきは、その伯父である” 丑寅マモル” の

手によってセイバー協会の本部に招かれ”慧眼のなつき”の2

つ名を与えられた。以来総司令官である伯父の忠告だけを頼り

にここまで進んできたのだが”慧眼”という人並みはずれた

力を持つ彼女は自分がになう重責さえも見抜いてしまうが故に

他の誰よりも孤独な道を歩まなければならなかった。涙こそ見

せぬものの、自らの宿命から眼をそむけたくなったことは幾度

となくあった。

―――どんなに超人的な能力を持っていても心はまだ18才の少

女なのだ。

彼女は未来に対する不安と焦りにかられながらももうすぐ出会

えるであろう”真のパートナー”に対する期待に胸をふくらま

せていた。10才にして泣きごとひとつ許されない苦難の道を引

き渡されたなつきにとって今回出会うであろうパートナーは地

獄のような8年間の日々をいやしてくれるに違いないからだ。


なつきは膨大な量のファイルを眺めながら、走馬灯のように次

から次へと沸いてくる記憶を処理していた。

それはとてつもなく永い時間のようにも感じられたし、反対に

一瞬の出来事のようにも感じられた。そしてとうとう”その瞬

間”が訪れた。なつきが手に取ったファイルに映るその” 少年

”は何かを言いたげな表情でじっとこちらを見据えていた。

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