#1話「緘黙のリタ」2
ガチャ
面会室とかかれたドアを開けて最初に感じたのはここだけ別世
界のように空気が凍っているということだった。リタは自分の
顔がこわばり、浮かれた気分が一気に萎えていくのを感じた。
「あなたが外川リタさんね。」
目の前にいる慧眼のなつきと思われる女の子は僕を認知する
と間髪もいれず第一声を発した。
リタは彼女の全てを見透すような鋭い眼差しに耐えられず反射
的に眼を伏せるとなつきは悟ったような顔をして
「気負っているのね。無理はないわ。でもそんなメンタルで
セイバーが務まるのかしら?」
彼女の凍てついたオーラに圧倒され、リタはここに来た理由さ
え忘れそうになっていた。
そうだ、僕はセイバー、即ち救助する者に憧れてここへ来たんだ。
―――リタの父親はリタが生まれてすぐに他界したが献身的な
母親のもとで貧しいながらも幸せな生活を送っていた。この頃
リタはこんな生活がいつまでも続くものと思っていた。
だがリタが13歳を向かえた日そんな幸せを打ち崩すような出来
事が目の前で起こってしまう。
震度7の大地震が街を襲ったのだ。
当然大半の家屋は倒壊し町中がパニックになった。リタの家
もバラバラになって、母親はその下敷きになって間もなく息を
引き取った。
だけどその時、懸命に救助に当たってくれた人がいた。
その人は母を救えなかったことをとても悔やんで自分がセイ
バーであることや丑寅マモルという名前だけを名乗
って姿をくらました。
僕がセイバーという職種を知ったのはその時のことだった。
リタはその後、独自のルートで情報を集め大地震が巨大な陰謀
によってひき起こされたことを知る。
そしてセイバーはその事実を事前に知っていてそれを阻止する
ために動いていたと聞かされ、セイバーに対する憧れが余計強
まったのだ。――――
「慧眼のなつきさん」
「これからよろしく」
リタが気持ちを立て直して挨拶するとなつきは少し顔をほころ
ばせて