しりとり 子猫→交通事故→小麦粉→恋の虜?
男子大学生2人がしりとりをするお話です。
よろしくお願いします。
平日昼間の喫茶店というのは大抵、ヒマな学生がウダウダしているものだ。
「あんさぁ、なんつっかさぁ。ヒマだな?」
「それなー」
ここにも、二人の男子大学生がいる。飲み終えたアイスコーヒーの氷をストローでくるくるとグラスの中で回している様がいかにもだ。
ヒマに任せて、ヒマだヒマだとだらだら言い合う、これもまた青春。
そうそう、ヒマだからこそ出来ることだってあるじゃないか。
例えば、こんな、
しりとりとか。
「んー……あれか。しりとりでもやっか?」
「うんまあ、いいけど。ヒマだしね……。どうせなら、ここのコーヒー代でも賭ける?」
「それいいな。じゃ、負けたらコーヒー代おごりな。うっし。じゃ俺からいくべ。じゃあ……〝猫〟」
「あ? なんで猫なんだよ、飼ってねえくせに猫好きアピってんじゃねえよ」
「しりとりなんだから最初は何でもいいじゃんかよ。はい〝猫〟だよ、ほら」
「まあ、嫌いじゃねえからいいけど……、猫だな。こ……こ……〝子猫〟」
「あん? 子猫って。こ、帰してくんのかよ。なんか、あれだな……」
「なんだよ」
「まいいよ。んー、なら俺も……〝子タコ〟」
「子タコって……、なんかしっくり来なくね?」
「いや、子ネコが有りなら〝子タコ〟も有りに決まってんじゃん」
「まぁ。そうか。うーん、なら、〝子インコ〟」
「子インコ……? 鳥……まあ、有りか……。あー……じゃ〝子ヤマネコ〟は?」
「あん? なんかズルな気も、しなくもない、けど有りだわな。なら〝子イリオモテヤマネコ〟」
「あぁ……やるな……。じゃあ、〝子オオマダコ〟でどうよ」
「あー、んなんか……悔しいよなぁ。いいけど。あ、思い出した。あれだ、ほら、〝コムラサキインコ〟」
「何だよそれ。ホントにいんのかよ?」
「いるいる。知らないのかよ。〝コムラサキインコ〟、テレビでやってたよ前に」
「まあいいや。てことはさ、〝子コムラサキインコ〟でいけるよな」
「お前な……。ムカつくけど、しゃあないか。んなら〝子ヒヨコ〟」
「子ヒヨコって、お前。子ヒヨコ……、有りか、鳥だもんな。有りなんだろな……。あ、これもいける〝子ミジンコ〟は?〝子ミジンコ〟」
「うーん。有るんだろうな、知らねえけど。いいよ。そういや、〝コッパミジンコ〟って言葉聞いたことあるぞ」
「あー、俺それ知ってるわ、四文字熟語とかだろ。こ……こ……あ良いの思いついちった。〝交通事故〟」
「ほう、やるねえ。それは絶対だわ。だったら〝航空機事故〟」
「ちっ。なんかムカつくなっ。んあー、あれだ、〝小麦粉〟」
「そっちいくか。なら〝米粉〟」
「とことん被せてくんなお前。でも今回は俺の勝ちだわ……〝蒟蒻粉〟」
「何それ? 聞いた事ねえし」
「有るんだよ。毎月実家から送られてくんだから間違いねえよ。はい〝蒟蒻粉〟」
「仕方ねえなあ。なら〝コチュジャン粉〟」
「それなんかおかしくねえか。有りそうで無さそうで……、有りそうだな。まいいわ。じゃ俺は〝コッペパン粉〟」
「んー。パン粉って有るもんな……ならコッペパン粉もあって、然るべきってもんか……。ならこういうのもいけるな、〝CoCo壱粉〟」
「うー、有るな。カレー粉の一種だろ。あ、それで思い出したわ。〝高校粉〟」
「は? 何それ」
「え、無かった? 俺の通ってた高校には有ったよ、高校粉。詳しく言うと〝 工業高校 粉〟だけど」
「初めて聞いたけど……有りそうでは……ある。あ俺もそれで思い出したわ。えっと〝公共広告機構 粉〟」
「あー。たぶん有るな、しらねえけど。有る有る。公共広告機構粉、な。ただお前、それを言うなら〝公共広告機構粉 庫〟も有りだぞ」
「お前な。それが有りなら、そもそも〝米粉庫〟も有りになるぞ」
「それが有りなら、〝米米CLUB庫〟も有りだな」
「そういや俺の兄貴、米米CLUBっ子だったわ」
「だったら俺の兄貴は〝小林幸子っ子〟だぜ」
「だったら……て、お前それ、小林幸子だけで良くね? まいいわ。もうこうなったらあれだ。〝米粉庫っ子〟だ」
「お前がそう来るならこっちも本気出すわ。〝孤高の米粉庫っ子〟で行くし」
「あっそ。そういや俺の妹が、〝孤高の公共広告機構粉庫っ子〟だったわ」
「俺の妹なんかな、〝孤高の公共広告機構粉庫っ子事故〟起こしてたぞ」
「あのなあ。俺なんかなあ、俺なんかあれだぞ。〝子孤高の公共広告機構粉庫っ子事故〟なんだぞ?」
「う……、もうこれ、あれだな。終わんねえな……。もう俺そろそろ用事の時間だわ。俺が〝コーヒー代出しておこ〟」
「そうか、悪いな。俺もこれからバイトだ。少し前から仕送り貰わない事にしてんだ。親に悪いだろ。だから財布がキツイんだわ、〝ここんとこ〟」
「いいよ、俺は今から大事なデートだかんね。にしても、お前ってなかなか、〝孝行息子〟じゃん」
「お前はあれだな〝恋の虜〟だな」
「じゃあな、またしりとりやろう〝今回はあいこ〟」
「じゃあな〝恋人にヨロシコ〟」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「やっぱ割り勘で決着にしようや」
「ああ。そうだな。終わんねえわ」
(終わり)
こうしてこつこつ凝って書き込んだので、ここまで読んで頂いて心から感謝しています、かしこ。