表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

文芸系の小説

しりとり 子猫→交通事故→小麦粉→恋の虜?

作者: 蜜柑プラム

男子大学生2人がしりとりをするお話です。

よろしくお願いします。



 平日昼間の喫茶店というのは大抵、ヒマな学生がウダウダしているものだ。


「あんさぁ、なんつっかさぁ。ヒマだな?」

「それなー」


 ここにも、二人の男子大学生がいる。飲み終えたアイスコーヒーの氷をストローでくるくるとグラスの中で回している様がいかにもだ。

 ヒマに任せて、ヒマだヒマだとだらだら言い合う、これもまた青春。

 そうそう、ヒマだからこそ出来ることだってあるじゃないか。


 例えば、こんな、


 しりとりとか。



「んー……あれか。しりとりでもやっか?」

「うんまあ、いいけど。ヒマだしね……。どうせなら、ここのコーヒー代でも賭ける?」


「それいいな。じゃ、負けたらコーヒー代おごりな。うっし。じゃ俺からいくべ。じゃあ……〝(ねこ)〟」

「あ? なんで猫なんだよ、飼ってねえくせに猫好きアピってんじゃねえよ」


「しりとりなんだから最初は何でもいいじゃんかよ。はい〝(ねこ)〟だよ、ほら」

「まあ、嫌いじゃねえからいいけど……、(ねこ)だな。こ……こ……〝子猫(こねこ)〟」


「あん? 子猫って。こ、帰してくんのかよ。なんか、あれだな……」

「なんだよ」


「まいいよ。んー、なら俺も……〝子タコ〟」

「子タコって……、なんかしっくり来なくね?」


「いや、子ネコが有りなら〝子タコ〟も有りに決まってんじゃん」

「まぁ。そうか。うーん、なら、〝子インコ〟」


「子インコ……? 鳥……まあ、有りか……。あー……じゃ〝子ヤマネコ〟は?」

「あん? なんかズルな気も、しなくもない、けど有りだわな。なら〝子イリオモテヤマネコ〟」


「あぁ……やるな……。じゃあ、〝子オオマダコ〟でどうよ」

「あー、んなんか……悔しいよなぁ。いいけど。あ、思い出した。あれだ、ほら、〝コムラサキインコ〟」


「何だよそれ。ホントにいんのかよ?」

「いるいる。知らないのかよ。〝コムラサキインコ〟、テレビでやってたよ前に」


「まあいいや。てことはさ、〝()コムラサキインコ〟でいけるよな」

「お前な……。ムカつくけど、しゃあないか。んなら〝子ヒヨコ〟」


「子ヒヨコって、お前。子ヒヨコ……、有りか、鳥だもんな。有りなんだろな……。あ、これもいける〝子ミジンコ〟は?〝子ミジンコ〟」

「うーん。有るんだろうな、知らねえけど。いいよ。そういや、〝コッパミジンコ〟って言葉聞いたことあるぞ」


「あー、俺それ知ってるわ、四文字熟語とかだろ。こ……こ……あ良いの思いついちった。〝交通事故〟」

「ほう、やるねえ。それは絶対だわ。だったら〝航空機事故〟」


「ちっ。なんかムカつくなっ。んあー、あれだ、〝小麦粉〟」

「そっちいくか。なら〝米粉(こめこ)〟」


「とことん被せてくんなお前。でも今回は俺の勝ちだわ……〝蒟蒻粉(こんにゃくこ)〟」

「何それ? 聞いた事ねえし」


「有るんだよ。毎月実家から送られてくんだから間違いねえよ。はい〝蒟蒻粉〟」

「仕方ねえなあ。なら〝コチュジャン()〟」


「それなんかおかしくねえか。有りそうで無さそうで……、有りそうだな。まいいわ。じゃ俺は〝コッペパン()〟」

「んー。パン粉って有るもんな……ならコッペパン粉もあって、然るべきってもんか……。ならこういうのもいけるな、〝CoCo壱粉(ここいちこ)〟」


「うー、有るな。カレー粉の一種だろ。あ、それで思い出したわ。〝高校粉(こうこうこ)〟」

「は? 何それ」


「え、無かった? 俺の通ってた高校には有ったよ、高校()。詳しく言うと〝 工業高校 (こうぎょうこうこう)()〟だけど」

「初めて聞いたけど……有りそうでは……ある。あ俺もそれで思い出したわ。えっと〝(こう)共広告機構 (きょうこうこくきこう)()〟」


「あー。たぶん有るな、しらねえけど。有る有る。公共広告機構()、な。ただお前、それを言うなら〝公共広告機構() ()〟も有りだぞ」

「お前な。それが有りなら、そもそも〝米粉(こめこ)()〟も有りになるぞ」


「それが有りなら、〝米米CLUB(こめこめクラブ)()〟も有りだな」

「そういや俺の兄貴、米米CLUBっ()だったわ」


「だったら俺の兄貴は〝小林幸子っ()〟だぜ」

「だったら……て、お前それ、小林幸子だけで良くね? まいいわ。もうこうなったらあれだ。〝米粉(こめこ)()()〟だ」


「お前がそう来るならこっちも本気出すわ。〝孤高(ここう)の米粉()()〟で行くし」

「あっそ。そういや俺の妹が、〝孤高の公共広告機構()()()〟だったわ」


「俺の妹なんかな、〝孤高の公共広告機構()()()事故(じこ)〟起こしてたぞ」

「あのなあ。俺なんかなあ、俺なんかあれだぞ。〝()孤高の公共広告機構()()()事故(じこ)〟なんだぞ?」


「う……、もうこれ、あれだな。終わんねえな……。もう俺そろそろ用事の時間だわ。俺が〝コーヒー代出しておこ〟」

「そうか、悪いな。俺もこれからバイトだ。少し前から仕送り貰わない事にしてんだ。親に悪いだろ。だから財布がキツイんだわ、〝ここんとこ〟」


「いいよ、俺は今から大事なデートだかんね。にしても、お前ってなかなか、〝孝行息子〟じゃん」

「お前はあれだな〝恋の虜〟だな」


「じゃあな、またしりとりやろう〝今回はあいこ〟」

「じゃあな〝恋人にヨロシコ〟」


「…………」

「…………」


「…………」

「…………」



「やっぱ割り勘で決着にしようや」

「ああ。そうだな。終わんねえわ」



(終わり)



こうしてこつこつ凝って書き込んだので、ここまで読んで頂いて心から感謝しています、かしこ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こう最初の方は何とも狡いやり方で返していたものの、最後の方は綺麗な言葉で返している辺りが、この話を読み終わった時に満足感が得られる証拠
[良い点] やっぱ言葉遊びって面白いですね! 2人の屁理屈しりとりバトル面白かったです。 小林幸子っ子、いいですねぇ。しりとりにおいて意味が無さすぎて好きです。 ⋯⋯高校粉?( ˙-˙ )?? […
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ