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必殺 仕置高校生裏活動  作者: 吾田分弱
2/2

第2幕 異端児登場

「「「おはようございます!」」」


私立真倉元(まくらもと)高等学校。

 中高一貫校であり、学科は普通科しかなく強豪と言えるような部活を有する訳でもない。言ってしまえば、特筆すべき特色のない一般的な高等学校である。

 だが、一概に何も無いとは言えないかもしれない。今日も校門前では元気な声が聞こえているが、ある意味これは真倉元高校の伝統なのかもしれない。


 朝から登校してくる生徒たちに向かって大声で挨拶している彼らは、真倉元高校の風紀委員会の面々だ。


「よっ、風紀委員会! 今日もいい声だな!」


「「「先生、ありがとうございます!」」」


 一糸乱れぬ掛け声は聞いていてとても清々しい。登校してくる生徒たちも心なしか皆戸惑いつつも笑顔で挨拶をし返す。

 彼らはこの恒例行事を毎朝、それも朝のホームルームが始まるギリギリの時間まで行っているのだ。


 しかし、彼らの中にそんな日々を嫌な顔一つ浮かべることなくやり遂げる。風紀委員会の務めが何たるかをよく理解する者たちなのであろう。


「よーし、みんな。お務めご苦労」


「多田敷委員長!」


「「「お疲れ様です! 多田敷委員長!」」」



 一通り校門での挨拶が済んだところで後ろから声を掛けてきたのは、風紀委員会委員長である多田敷道程(ただしきみちのり)だ。

 短すぎず長すぎない適度な頭髪にきちっとした身なりで制服を着こなすその佇まいは、まさに風紀委員、いや、全校生徒たちの模範である。


「もうすぐ予鈴が鳴る時間だ。みんな、早く自分たちの教室へ戻るんだ。但し、廊下は走ってはいかんぞ。風紀委員たるもの、学校の規律は守られなばならない」


「はい、かしこまりました!」

「委員長も、お疲れ様です!」


 とここで、多田敷は全員の顔ぶれを一通り眺めたところで、ひとつ大きなため息をついた。


「はぁ……。またアイツ(・・・)がいないぞ。君、確かアイツとは同じクラスだったな。仕事をすっぽかして何処に行ったんだ?」


「あ……、()ですか……。今頃は屋上で居眠りでもしてるんじゃないですかね」


 その言葉を聞いた多田敷は先程よりも大きなため息と共に眉をひそませた。


「全くアイツは……。あんな奴が風紀委員などとは……恥晒しな……」


「委員長。アイツは風紀委員会に入ってからというもの、それらしい職務を全うしているところを未だに見た事がございません」


「あの人の穴埋めはいつも代わりの者が職務に当たっております。あの人は最早、籍を置くだけ無駄かと存じます」


「そうだな。考えんといけないかもな。アイツの処遇を……」



────────────────────


 所変わってここは──真倉元高校の屋上。


「ZZZ……ZZZ……」


 春も終わりがけで日差しがやや強く感じるこの場所で、気持ちよさそうに眠りに耽ける一人の男子生徒がいた。


 もうすぐホームルーム開始前の予鈴がなるというのに全く起きる気配がない。彼の眠りは余程深いようだ。


──キイイ……


 とその時、階下へと続く扉が耳障りな音を立てて開かれた。

 そこにはある男子生徒がやれやれと言った呆れ顔で佇んていた。


「やっぱりここで寝てたか」


 コツコツと眠っている男子生徒の元へと歩み寄り、屋上へ来た男子生徒はその者の前で止まり、ゆさゆさと身体を揺すった。


「おい、起きろ」


「んー……ん? …………んー!」


 という寝ぼけた声を上げて上体を起こし伸びをした男子生徒は目が覚めたというのに眠気眼だ。起きたばかりだろうから当たり前といえば当たり前なのだが。


「おう……、瀬和志(せわし)。やはりお前さんかい。お前も一眠りしにきたか?」


「アホ。ホームルームの時間が迫ってきてるってのに教室に来てなかったお前を起こしに来たんだよ。全くよ、起こしに来てるこっちの身にもなれってんだよ」


 屋上にわざわざ出向いたこの男の名は瀬和志九郎(せわしくろう)

 名前通りの世話焼きの苦労人であり、見かければ必ず誰かの世話を焼いている事で有名だ。そんな世話好きが元で、彼は毎朝毎朝この男を起こしに屋上に出向いているのだ。


 因みに彼は今年入学してきたばかりの一年生。一年生の教室は一階、そして屋上は四階建ての最上階に位置するので実質五階だ。

 そんなところからわざわざ階段を昇り彼を起こしに来るのだ。彼の世話焼きがどれ程のものかが窺いしれるだろう。


「ていうか、お前今日は当番だったんじゃないのか? ほら、毎朝校門前でやってる風紀委員のやつ……」


「うーん? そうだったっけか? いつも学校に着いたらここで一眠りするのが日課だから忘れてたわ」


 眠気眼を擦りながら立ち上がった男の右の二の腕には、『風紀委員』と達筆で書かれた腕章が付いている。どうやらこの男も風紀委員のようだが、校門前で挨拶運動を実施していた者たちより仕事熱心ではないようだ。


 よく見ればブレザーの下のカッターシャツはシワだらけでよれよれだし、ネクタイもきちんと締めていない。腕章を付けていなかったらとても風紀委員だとは思えない身なりだ。落伍者もいいところである。


「細けーこたぁ気にするな。第一朝っぱらからよくやるぜ。あんな大声張り上げて「はよざいまーす!」なんてよ。てめえらで勝手にやっとけってんだ」


「お前って奴はよ……救いようのないぐうたら者だな」


──キーンコーンカーンコーン…………


 二人がそんな与太話に耽っていたら、予鈴が鳴り始めた。あと数分後にはホームルームが始まる時間まで迫ってしまっていたのだ。


「やべっ! おい、ホームルームが始まるぞ。お前なんかの為に遅れたって知られたらシャレになんないぞ!」


「だが瀬和志。お前さんは必ず俺を起こしにここへやって来てくれる。なんだかんだ言ったって、持つべきものは友だよな〜」


「呑気な奴め。急ぐぞ」


 二人は駆け足で屋上を後にした。

 真倉元高校──この学校の特色といえば、風紀委員会による校門前での挨拶運動。学校の歴史上、誰一人としてその伝統ある行司に参加しなかった風紀委員など存在しない。

 だが、ただ一人──唯一それに参加もせず、委員会の仕事もろくにしない、にもかかわらずその人物は今年入学したばかりの新入生だ。

 登校中や昼休み、果ては授業中であろうとも薄ぼんやりとした態度でクラスメイト達から『昼行灯』と揶揄されている。

 探せばどこにでもいそうな不良生徒のようだが、果たしてこの高校生──彼はこの時はまだ知らなかった。


 自分に待ち受けるこれからの学生生活が、波乱の連続に見舞われていく事になろうとは。

 そんな運命が訪れようとしているとも知らず、今日も自分勝手に日常を過ごそうとしているこの者の名は──


──バンッ!


「す、すみません先生! こいつを起こしに行ってたら遅れちゃいました!」


「瀬和志か。で、その(くだん)の奴って言うのは……?」


「へへっ、俺です」


「やっぱりお前か………! 中村(なかむら)……主也(かずや)……!」

お久しぶりです!

続きを何となく書きたくなったので書いちゃいました。

趣味程度にしか書いてないので内容は悪しからず。

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