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必殺 仕置高校生裏活動  作者: 吾田分弱
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序章

必殺シリーズに憧れて、二次創作なのか、オリジナルなのかよく分からないお話書いちゃいました。

思いつきで書いた駄作ですので悪しからず。

「おい、どうだった?」


「今日も大収穫よ。バイトで稼いだのか万札持ってる奴がいてなぁ……」


時刻は午後八時過ぎ。最終下校時刻などとうに過ぎたとある高校の体育館裏にて怪しげな密談をする二人の男がいた。


「おお……! 一枚、二枚……五枚! こんな奴よく捕まえられたな! よくやったぞ!」


「シーっ! 声がデカいぞ……! 静かにしろ……!」


男たちの服装はブレザー。どうやらこの二人は──この高校の生徒たちのようだ。そしてその手に無造作に握られているのは、クシャクシャになった紙幣が何枚も。


「これで今月入ってどれだけ稼いだ? 十万? 十五万? いやもっとだな」


「金稼ぐなんてチョロいチョロい。ちょいと脅してやりゃすぐ金差し出すからな、気の弱い連中は」


内容から察するに、この二人の握っているお金は学校の生徒たちからカツアゲして得たものなのだろう。しかもかなりの人数が被害に遭っているものと思われる。


「なあ相棒。これで俺たち暫く飯には困らねえ。久しぶりにどっかに遊びに行くか?」


「いいねえ……それで女でもいりゃ言うことなしだ」


「心配無用。金ならある。金さえありゃ向こうの方から寄ってくる」


「それもそうだな。じゃ、そうと決まりゃ行きますかね」


皆にも知って欲しい。世間にはこのような悪が、高校でも蔓延っているという事を。誰にも知られないところで罪のない者が被害に遭うのは、学校でも同じ事なのだ。

しかし、そんな人たちへの救いの手が伸びることは無い。


そう、誰も知る由などないのだ。伸びるはずもない。

──彼らに()()()()()()()


「待ちなよ」


「!? 誰だ!」


その場を後にしようとする男たちの後ろから声が聞こえた。声に反応して男が振り向くと、そこには──、

右の二の腕辺りに『風紀委員』と書かれた腕章を付けた制服姿の男子が体育館の外壁に体を預けて佇んでいた。

バンダナを付けているのが気になるが、恐らく正体を隠すためだろう。


「お前さんたち、その金で何しようとしてんだ? そいつは依頼人が汗水垂らしてバイトして稼いだ大事な金なんだぜ?」


「依頼人? 何言ってるんだてめぇ」


「こいつは俺たちの金だぜ。何を証拠にそんな事を……」


「証拠ならある。お前さんたち、こいつからカツアゲして金をガメたろ?」


そう言いながらバンダナ男が取り出したのは、スマートフォンだった。その画面には、彼の言う『依頼人』と思しき男子生徒が写っていた。


「ゲッ! おい相棒……アイツって……」


「あの野郎……チクリやがったな……! それも風紀委員会なんかに!」


風紀委員会──学校の秩序を守る、世間で言えば警察のような役割を担う組織。その一員に知れたとなれば彼らも冷静ではいられないだろう。

しかしその言葉を聞いたバンダナ男は首を傾げる。


「勘違いするなよ。学校は今日はもう終わりなんだぜ。俺は風紀委員ではなく、ただの高校生の端くれだ」


これ見よがしに風紀委員の看板ともいえる腕章を付けながら説得力のない発言に、彼らもまた首を傾げた。


「なら、ただの高校生風情が何で俺らの前に……そいつの顔写真を付きつけてやってくる?」


「そうだぜ。そんなまる分かりの嘘言って俺たちをしょっぴこうなんてそうはいかねえぞ!」


「嘘なんかじゃない。だがお前さんたちを仕置しなきゃならない。言っただろう? 俺は依頼人に頼まれてここにいるんだ」


腕をポキポキと鳴らしながら二人にジリジリと近付く男の目付きは本気だった。その気迫に二人は多少たじろぐものの、


「何だ? てっきり話し合いで解決しようなんて持ち掛けてくると思いきや、お前もその口か?」


「俺たちは好きだぜそういうの。そっちの方が手っ取り早いからな」


「御託はいいからかかってこい。二度とカツアゲがしたくなくなるくらいひどい目に遭わせてやらあ……」


「上等だ……ぶっ殺してやる!」


「覚悟しやがれ!」


────────────────────────


互いの拳がぶつかり合い、僅か数秒──決着は着いた。


「ぐほ……ッ! なんだこいつ……めちゃくちゃ強え……」


「動きも速えし……かすりもしなかった……!」


バンダナ男の前で地面に横たわる二人の男。その傷はとても痛々しく、顔は腫れ上がって青アザまで出来ている。

一方のバンダナ男は傷一つ付いておらず、息すらも上がっていない。制服の乱れすらもないその立ち姿から如何に彼らが何も太刀打ち出来なかったかを物語っていた。


「ハッ……! てめえらみてえな屑共がそんな金を使う資格なんかあるかい。さあ、その金を返してもらおうか?」


バンダナ男は片腕を差し出す。この何気ない行為が、男たちを戦慄させた。


──な、殴られる……! 渡さないと殴られる……!


「ひい! わ、悪かった……俺たちが悪かったよ!」


「アイツから奪った金……いや! 今まで盗った金全部返すぜ。だから見逃してくれ!」


男たちはそう言うとポケットや財布から千円札やら五千円札、一万円。果ては二千円札まであらゆる紙幣をバンダナ男に根こそぎ渡した。最終的にその金額たるや、高校生からしてみればかなりの大金となった。


「てめえら……こんなに盗ってやがったのか。ったく、救いようのねえ奴らだな」


「それで全部だ。もう俺たちの身体にゃ一枚たりとも残ってないぜ?」


御丁寧にブレザーを脱いで(はた)いたり、ポケットを裏返しにしたり、財布までも裏返しにして振ってみせた。彼らの言う通り、彼らは今、紙切れと言えるものは何一つ持っていないようだ。


「分かったか? これに懲りて、二度とこんな外道臭えことはすんじゃねえぞ? さもなくば今度は……」


「わわわ、分かってるって! もう二度とこんな事しねえ!」


「これからは真面目に高校生活を送らさせて頂きます! ホント! すみませんでしたー!」


男たちは逃げるようにバンダナ男の前から足を引きずりながら消えていった。そして、男はただ一人取り残された。


「ったく……、この金どうしようかね。奪われた奴らに返そうったって誰に返せばいいのやら……」


途方に暮れていると彼の後ろからトボトボと近づいてくる人影が一つ……。


「あ、あの……ありがとうございました」


「ん?」


後ろを振り向くと、見覚えのある顔の人物が肩を竦ませながら立っていた。そう、何を隠そうバンダナ男が依頼人と言っていたあの顔写真の男子生徒だ。


「お前さんか。今の見てたのかい」


「いえ、決して疑ってたとかそんなつもりはないです。ただ、盗られたお金が返ってくるなんて事が本当にあるのか信じられなくて……」


「その言い方、結局俺を疑ってるってことじゃねえか」


「は……! す、すみません」


一つため息をついてバンダナ男は口からバンダナを外しそれを頭に巻き直した。その顔はどこか気だるげで、薄ぼんやりとした印象を感じさせる。とても先程の二人を圧倒したとはとても思えないほど間延びした言動だ。


「ま、いい。お前さんの恨みは確かに晴らしたぜ。言われるまでもねえと思うけどな。お前さんが盗られた分はこれで全部か?」


「はい。確かに全部です。改めてありがとうございました!」


「礼なんかすんな。俺がやったこたあ世間的にはただの暴力にしか映らねえ」


傍から見れば、この男の行いは決して許される行為ではない。しかし、のさばる悪を懲らしめ、罪なき者に救いの手を差し伸べたのも紛れもない事実。

誰にどう見られようとその依頼人から見れば、その男は救世主。

一夜にしてその男は、その男子にとってのヒーローになったのだ。


「じゃ、これにて仕置完了。また何かあったら頼んできなよ。今度は俺じゃねえかもしれねえがな」


「あ、あの……!」


「ん?」


立ち去ろうとする男の背中を男子生徒が引き止めた。彼にはどうしても訊かなければならないことがあったのだ。


「すみません、お名前はなんと言いますか? あと、あなたは一体何者ですか?」


男は考えるような素振りを見せた。躊躇うかのような表情にもなったが、まあいっかといったようにため息を一つつき、こう名乗るのだった。


真倉元(まくらもと)高校一年A組及び、風紀委員会所属の──中村主也(なかむらかずや)です」

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