もしも……あの時こんな詠唱だったら。シリーズ①
あくまで、もしもです……全裸だと理解したうえでで読んで下さいますと少しは楽しいかもしれません。
先程から、赤子が泣き続けている。その声は、谷へと響き煩くて敵わない。
他の竜達もまた、同じ思いをしているのか、皆赤子を顰めた顔で見詰めている。
あまりにも酷い鳴き声に、仕方なく人の知識を漁り、何故この赤子が泣いているのかを知る。
腹が減ったのか……それとも、漏らしたのか……? もし、両方だとしたら直ぐに必要になる物がある。
それどころか、私自身が人の姿をせねばならない事に気付いた。
王竜であるこの私が、この赤子のために人の姿を取るなど屈辱以外の何ものでもない!
仕方なく、竜神アルバス様より賜った魔法:万物知識創造<クリションナリィド>を使い、人になれる魔法を使うことにする。
竜体のまま、四肢を地に着け踏ん張り、両翼を伸ばし広げる、首を天へ向け詠唱を開始する。
「我は、万物の創造を望みしもの、それは人なり!」
「我は、知識を望むもの、それは魔法」
「来たれ、我名は、シュベル・クリム・ハーナス」
「万物知識創造<クリションナリィド>!!」
****魔法:万物知識創造をしようしました。魔法:擬人化<プルソケーション>を習得しました****
早速、魔法を使ってみれば、先ほどまで見えていた高さよりかなり視界が低い、両手を見てみれば人族のそれと同じ色をしている。
手や、足の感覚を確かめるように何度か握ってみたり閉じたりしてみる感覚も問題ない、どうやら魔法を作りだし、使うことができたようだ。
「さて次だ」
泣き続ける赤子……。さっさと黙らせるため、必要なものを作る。
左手を腰に置き、胸を張る。
右手を上に突き出すと人さし指と小指を立て、首を天へと向け詠唱を開始する。
「我は、万物の創造を望みしもの、それは人の乳なり」
「我は、知識を望むもの、それは魔法」
「来たれ、我名は、シュベル・クリム・ハーナス」
「万物知識創造<クリションナリィド>!!」
*****魔法:万物知識創造をしようしました。魔法:哺乳<セクウェン>を習得しました*****
この魔法:哺乳を使い作り出した。これは、人族の女が赤子に飲ませる乳だ。
赤子を抱かかえ、魔法で作り出した乳を指先に集中させ、吸わせてみる。
チュッチュと音を立て、指先に吸い付いた。
予想以上の吸い付きに、指がもげてしまうのでは無いかと思うほど驚いた。
だが……悪くは無い……。
これでは、他の竜たちに世話を任せることはできないと判断し器の必要性を思考する。
器を作るため先程と同じような姿を取り、魔法:万物知識創造繰り返すこと7回、漸く赤子を騙せる準備が整った。