閑話 神様
ウィリア転生前の神様達との面会のお話です。
/ウィリア
意識が覚醒し、思い出したのは…家での事…父のあの言葉…そして、やけくそ気味に叫んだ。
「あぁぁぁぁ、シリアンに癒されたい!!!」
叫んで、少しだけスッキリした。
そして、思い出した…頭に強い衝撃を受けた事、周りを見渡せば黒い場所に立っていた。
「え…どこ、ここ?私はどうなったの?これが、あの世って言うもの?イヤイヤ、幽体離脱かな?」
などと、独りで話し…その話し声が反響する。
ちょっと、本気でヤバイと感じ始めた頃、ひとつの扉が目の前にスゥーと現れた。
これって、入れって事よね?これ明けたら…死んで、シリアンに会えなくなるとか…?私の頭の中で大事なのは、シリアンだけだった。家族は、あんな感じだったし、きっと私が死んでもあの人達は何も変わらない、そう思った。
ふぅ~と息を吐き、死ぬ覚悟を決めて扉に触れると、次の瞬間、私はお花畑にある、ローマ時代の神殿みたいな所に立っていた。
「うわぁ~綺麗!」
「そうでしょう?ここは僕のお気に入りの場所なんだ!君も気に入ってくれたみたいで、僕は嬉しいよ」
突然の声に驚いて、振り向けばそこには、15歳ぐらいで、セミロングの長さの金髪・金の瞳を持ち、フィッシュテールのドレスを着た、女の子が立っていた。
「ぁ…こんにちわ…ここは天国ですか?」
「うーん、まぁそうだね!ここは神が住む花園だよ。地上の人からみたら天国だね!」
「そうなんですか…じゃぁやっぱりもう、シリアンには会えないんですね…」
会えないとわかるとやっぱり寂しい…シリアン…
「それでね、君に話したいことがあるんだ!良かったらお茶でも飲みながら話さない?」
フットワークの軽い神様だなぁ、それが私の感想だった。
「はい」
返事をすると、いつの間にか室内へ移動していた。そこには、他に11人の男女が座っていた。私を誘った神様が、円卓の中央に座る。私の椅子は、その神様の正面だった。
「まずは、自己紹介からだね!」
そう言って、神様たちは自己紹介をしてくれた…けど、一気に名前を言われても…と言う事で、頭の中で纏めてみることにした。
主神(創造神)カルミティアル様
第1副神(治癒・光神)ヒューズ様
第2副神(死・闇神)ナヴィス様
第3副神(海・水神)キャシャ様
第4副神(竜・風神)アルバス様
第5副神(鍛冶・鉱物・地神)アジェル様
第6副神(作物・緑)ジュゼ様
第7副神(慈愛・木神)ルティア様
第8副神(戦・火神)ルク様
第9副神(知恵神)ミスティ様
第10副神(魔法神)ユナール様
第11副神(商売・物造神)ルルシュ様
自己紹介が終わると、カルミティアル様が突然、土下座してき。
「ごめん!実は君に伝えなきゃいけないことがあるんだ…」
私は慌てて、手を伸ばす
「あのね…君が死んだ理由は…僕なんだ…」
「ぇ?」
突然のカミングアウトに私の思考は停止していた。
「その…実は僕、無類の酒好きなんだけど…あの日も地球の神様にいいお酒があるって聞いて、それを取りに行ってたんだけど…地球の神様の所で結構な量飲んじゃってて…へへっ」
照れたように笑うカルミティアル様
「…で?」
「酔い醒ましに空の散歩してたら、貰った酒瓶落としちゃって…」
「…えぇ…」
「死なせちゃった。ごめんね?」
テヘペロの顔されました…。いやいやいや、待って…私…そんな理由で死んだの?
「その…地球の神様にも、交渉はしたんだよ?君を生き返らせて欲しいって…でも、ダメだって言われちゃったんだ…だからね、君を僕の世界で生き返らせようと思ったんだけど、気づいたのが遅すぎて、君の肉体はもう火葬されちゃっててダメになちゃったんだ…」
「はぁ…」
「だからね。この世界で新しい肉体に転生してもらおうと思うんだ!どうかな?」
「…どうかなって、言われても…それしかないんですよね?」
「まぁ、ぶっちゃけると選択肢はないね!」
凄くいい笑顔で言われました…。まぁ、両親が居ない世界なら…でも、また同じように愛してもらえなかったら……いっそこのまま死んでしまった方がいいのかも……
「あの、ちなみにですが…」
「何?」
「このまま、死ぬ事は可能ですか?」
「ん~それは、人格を消して新しい生を受けるって意味かな?」
「はい」
「君は、元々この世界の人間じゃないから、この世界で死ぬ事はまだできないんだ…1度君の人格のまま転生して、死んだ後ならできるんだけどね…」
法則的な何かなのかな?無理なら、転生するしかないのね……
「君の生い立ちは僕達も知ってるから、転生する事に不安にならないで大丈夫だよ」
「!!」
「それに、僕のせいで君を死なせてしまったから、君の望みはなんでも聞くよ!」
「ちょ、カルミティアル様?」
「なんてことを言っているのですか!」
竜神アルバス様と治癒神ミスティ様が立ち上がり、カルミティアル様を止める。そんな2神を無視すると、カルミティアル様は、私の前に立つと頷いた
「さぁ、君はどんな望みをかなえたいの?」
「わ…私は……あの……カルミティアル様の世界には、竜がいるんですよね?フェザードラゴンとかいませんか?肩に乗る大きさの……」
「えっとねー。フェザードラゴンと言う種は、残念だけどいないんだ…。普通に竜なら居るんだけど…あぁ、でもね大きさは、竜達が自分の力に応じて自由にかえられるよ?」
眉を八の字にしたカルミティアル様が教えてくれる。
「そうですか…残念ですね…。その…私、死ぬ前にフェザードラゴンをペットにしていたんです。シリアンって言う名前だったんですけど…黒曜石みたいな綺麗な子で賢くて…大好きだったあの子の代わりに、竜が近くにいる場所に、転生させて欲しいです」
「うん!わかった。他は?」
大きく頷くと、キラキラした目を私に向ける。
「えっと…その、魔法もありますよね?」
「うん!あるよー」
「それじゃぁ、ちょっとだけでも使えるようにできますか?」
「もちろん!お安い御用さ!他は?」
あまりにも簡単に言ってのけるカルミティアル様に不安になり聞いてみた。
「まだ、聞いてもらえるんですか?」
「この程度の事、願いでもなんでもないよ!もっと言ってよ!」
「んー。じゃぁ、前世の記憶の、一部だけ残すことはできますか?」
「それって、両親とかの事、以外でいいのかな?」
「うんと、覚えておきたいのは、日本に居た事、物の事、食べ物の事、後は勉強した知識です」
「なるほど、人に関する記憶は消すでいいかな?」
「はい」
「わかった!他にないの?」
「えっと…後は…うーん。健康ならそれでいいです…」
「そっか、欲が無いね。君は…」
私は静かに首を振った。そしてカルミティアル様は、私を見詰めると
「いいかい?君は今から眠りにつくよ。次に目が覚めたらきっと君は沢山の人に愛される。もちろん竜にもね!あちらの世界で苦しんだ分、君は幸せになるべきなんだ。だからね、何も不安に思うことは無いよ!」
その言葉を最後に、私の意識は薄れて行った。
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/カルミティアル
「さてと、じゃぁはじめようか!まずは、君たち…」
そう言って、僕は円卓につく副神達を見回した。瞬時に、皆席を立とうとしていたけど…僕の言葉は絶対だから彼らは逆らえない。
「彼女に祝福かけて…」
「はっ???」
全員が、僕の言葉に驚愕した顔していた。
「早くして?」
その言葉に項垂れると、彼女の器に祝福をかけていった。
「ありがとう。そうだ竜神アルバスとミスティ、それからユナール、ヒューズは残ってね!」
アルバスは天を仰ぎ見る…ミスティは頭が痛いと言わんばかりにこめかみを押さえている…ユナールは特に反応は無い。ヒューズは笑ってくれた。
まずは彼女の魂に細工をする。正直一番難しいのは、向こうの人達の記憶を消す事だ。こちらの世界にきたばかりの彼女に施す事はできないのだ。だから彼女の記憶の一部を封印する形を取ることにした。もし彼女が思い出したら、その時は、彼女が望めば封印を施すつもりだ。
「ミスティ、彼女に魔法と言語、文字の知識入れてあげて」
「カルミティアル様…人族の要領では流石に、魔法すべてに言語・文字を入れる事は難しいです…」
魔法だけでも数百の呪文、魔方陣が存在している。それに、言語・文字も大陸が違えば変わってくる…記憶領域をひろげれば入るはず!
「確かに、そうかもね…記憶領域は僕が広げるよ!」
そう言うと、カルミティアルは彼女の器に触れ、創造神だけが使える魔法を使った。
「よし、大丈夫…頼むね!」
笑顔を向けられた、ミスティは溜息を吐くと、彼女の器に触れ知識の神であるミスティの知識を流しいれた。
「次は、ユナールとヒューズ頼むね。彼女の適正を全属性にして!ヒューズは神聖魔法の方入れてあげて!」
2人共頷いてくれた、それぞれ彼女の器に触れ力を流し込んで行った。ついでに、万物知識創造の魔法も入れておいてあげよ~僕優しい!!
次はっと、健康であればいいか…ん~。病気しないからだにすればいいよね…あぁでも怪我するかもしれないし…でも怪我も病気もしないって言うのは変だよね…だったら、他の人族より治癒力高めにすればいいか…寿命も短いよね…彼女には幸せになって欲しいし…。よし、治癒力高めの身体にしといて…と、後は…女の子だしやっぱり、顔は美人の方がいいよね!誰にも負けないぐらい!!
よし、これで彼女は大丈夫だよね!じゃぁ最後のお願いごとだね…。
「アルバス~。竜族ってさ~、黒い鱗の竜で番いないのいたっけ?」
軽く聞いた僕に、アルバスは眉間に皺を寄せ、考えると
「います…1匹だけですが…」
「そっか!それってどこにいる竜族?」
「アルシッドク皇国の領土内にあるゴーチ連邦に住む、シュベル・クリム・ハーナスと名乗る竜です。ただ、その竜族は…人を好いてはいませんよ?」
「ふ~ん。じゃぁこの子その王竜に預けてきて!」
「お待ちください、聞いてましたか?その竜族は人を好いてないのですよ!それに…あの竜の魂は…」
アルバスは、何かをいいかける…だが、カルミティアルは真剣な目になりそれを手で制すると、首を横にふる、そして、何事もなかったかのように、アルバスに告げる。
「大丈夫だよ。その竜族はきっとこの子を愛すよ。だから、早く届けてね。アルバス!」
「はぁ?何の根拠があるのですか…」
「根拠なんてないさ、そんな気がするだけ」
「主神ともあろうあなたが…第6感で判断するんですか…」
「いいから、さっさと行ってきなよ!」
普段なら絶対に見れないアルバスの間抜け顔がそこにはあった。
「だって、彼女は竜が好きだから、竜の側にいた方がいいでしょ?前世で同じ人族に迫害されてたんだし…絶対そっちのほうがいいよね?って事で、行ってきて!」
「…どうなっても知りませんよ…私は……」
ジト目をした、アルバスが僕を睨む。それに笑って片手をヒラヒラ振った。
「うん、大丈夫だよ!それからもし、育て方が判らないとか言ってゴネルようなら、人の知識を与えていい。後、道具も必要になるだろうから、万物知識創造の魔法も王竜に与えていいよ!」
深海よりも深いであろう溜息を吐き出すと、アルバスは天を仰ぎ目を閉じた、そして、赤子になった彼女と共に消えて行った…。
「さて、彼女は今度こそ、幸せにならなきゃいけない。しっかり楽しんでおいで!xxxxx」
彼女のこれからを思い、僕はひとり、そんな言葉を呟いた。