6-208 違和感18
「し……失礼ですが……本気でハルナ様と……その、一緒になれる……と?」
イナからの質問に、キャスメルは身体から血の気が引いていくのを感じる。
大抵こういう場合で、この”聞き方”は否定的な結果であることが常と知っている。
それに気付いたからこそ、キャスメルはイナの質問に答えることができないでいる。
「そ……そんな……まさか」
「……確かに。その可能性は少ないでしょう、ですがやりようによってはその結果も変えられるかもしれませんね」
「ナルメルさん、そんな簡単なことではないでしょ!?」
「その通りです。そんなに簡単ではないでしょう……ですが、無理とは限らないということですよ。イナ」
「無理……じゃない?どういう……まさかハルナ様を!?」
「落ち着いて、イナ!ナルメルさんの言ったことはイナが考えていることよりも酷くはないかもよ?」
ニナの言葉に頷き、ナルメルは自分の考えた内容を告げる。
それは、ステイビルにとって他の者との結婚が、ハルナ以上にメリットがある条件であれば、周囲の者たちもハルナとの関係を見直さざるを得ない環境を用意すると考える。
もしくは強制的にハルナ以外の状況を選ばなければならい状況に持ち込むか……先程のイナの頭の中に思い描いていた恐ろしい状況を。
「……なるほど。そういうこともできるのですね」
イナが恐怖を覚えた”案”に対して、キャスメルの中にはそれほど怖いという感情は湧かない。
きっとこれは、ラファエルが施した感情操作によるものだとキャスメルは理解した。
先ほどの沸き立つ感情は、自分の無知からくる恥ずかしさであったため心が痛んだのだろうと判断する。
そして、キャスメルはその案がカステオとニーナのためになると判断した。
「それで、今後はどうすればいいと思いますか?」
キャスメルは恥を忍んで、ナルメルとニナに今後行動の方針を聞いた。
断わられればそれまでで、もし二人が味方ならばこの作戦についての協力者として力になってもらおうと考えた。
「そうですね……まずはこの村で、この作戦に賛同してくれるものを探してみます」
「ちょっと、ニナ!あなた……正気なの!?」
「エルフの方でも探してみましょう、キャスメル様の協力者を」
「な、ナルメルさんまで!?……そんなことをすれば、この町が分裂してしまいますよ!?」
「イナ……あなたも知っているでしょ?まだ”人間”たちに対してまだよく思っていない者たちがいるのは」
「そ……それは!?」
「イナさん……私もこの町の平穏を望んでおります。ですが、いつ押せえきれなくなるか判らない不穏分子をこのまま放っておくのも、愚策であると考えています。今回の件も、大きな反乱はないとお考えなのでしょ?」
「そ……その通りです」
「キャスメル様もそう仰っているのであれば、いろんな意味でこの事を起こせば、色々とスッキリするんじゃないかしら?私もせっかくこの町での可能性を無に帰すことはしたくありませんし、ステイビル様に受けた恩は忘れてはおりません」
そうナルメルが説得し、イナもそれを了承した。
もちろんステイビルたちを裏切ることになる時は、それを止めることも約束した。




