6-203 違和感13
「そうです、ニーナと”あの方”との間を、キャスメル殿に取り持っていただきたいのです」
ニーナが反応してしまうため、ステイビルの名を呼ばずにカステオはキャスメルに協力を依頼する。
しかし、キャスメルからは承諾・拒否のどちらの反応も返ってこなかった。
かと言って何も考えていない様子ではなかったため、カステオは一旦この場では返答の催促を保留した。
その夜、キャスメルの客室に一人の来訪者があった。
ドアの前に立っていたメイドは、キャスメルから対応の許可をもらい、扉を開けて対応しようとした。
「――っ!?」
「どうしま……あ!?」
対応してくれたメイドに、何か起きたことを感じキャスメルは慌てて助けに向かおうとした。
そこにはカステオの姿があり、後ろには飲み物を乗せたトレーを引いたメイドを引き連れて、キャスメルの部屋へに訪れていた。
カステオはキャスメルに断わり、部屋の奥へと進んでいく。
メイドにアルコールの入った飲み物の準備をさせ、用事があって呼ぶとき以外は入ってこないようにメイドたちに命令した。
一通り用意されて落ち着いたところで、カステオはキャスメルに飲み物を勧めた。
お互い数口を含んで、少なくなったグラスに追加を注ぎながら、カステオはキャスメルに先ほどの話しの答えを聞いた。
「キャスメル……あえてこの場では敬称はつけない、お互いにだ。よいかな?」
キャスメルはその提案を承諾し、お互い地位や立場など無くこの場では話し合うこととなった。
「もしかして、先ほどの……」
「そうだ、率直に言おう。ニーナをステイビルの王女にしたい」
カステオは西の王国で起きた騒動の後、ニーナが常に東の王国に行きたがっている話をした。
しかし一国の王家の人物が、そう簡単には他の国を訪れるわけにはいかない。
そうするうちに、東の王国の王選が始まり、ニーナの目当ての人物は王国の地び方々を巡る旅に出てしまっていた。
その事実を知ってから、ニーナは変わり始めた。
王選の旅が始まる前に、ニーナは何としても自分の気持ちをステイビルに伝えたかった。
東の王国では、王選の旅を共にした精霊使いと結ばれることが通例であることは知っていた。
だからこそ、その前に自分の気持ちを伝え、ステイビルの中に自分の存在を大きくしておきたかった。
しかし、その願いは適わないとわかったときから絶望と諦めきれない感情が、ニーナの身体を次第に弱らせていった。
「……それで、今ようやくチャンスが回ってきたのだ」
「チャンス?」
チャンスという希望を含む言葉は、当事者であったキャスメルが思い返しても、ニーナが入り込める余地はなさそうに感じた。
その反応を察してか、カステオは手にしていたグラスの中身を飲み干して、空になったグラスを置いてキャスメルに向かって身体を乗り出した。
「そうだ……チャンスなのだ。ステイビルはまだあのハルナと婚姻の儀式は結んでおらぬのだろう?そこで、王国を抜け出してきたキャスメルの力を借り争いを起こしたい」
「な……なぜ私が王国を抜け出してきたことを……!?」
カステオは驚くキャスメルの目をじっと見つめて、この話が深刻であることを理解してもらおうとした。




