6-194 違和感4
エレーナは、腰かけていたベットから立ち上がりテーブルの椅子に座る。
ハルナは寝巻の状態だったので、メイヤはハルナに着替えを持ってきて着替えるように促した。
着替えるハルナを横目に、エレーナはハルナが知らないであろう、これまでの状況を説明した。
オスロガルムの討伐後、世界の崩壊が避けられたと王選が再開される。
だが、世論はステイビルが王となることを望んでいた。
それは結局、民衆の望むとおりになっていった。
ハルナの呼びかけによって、神々は一つの場所に集まり、最終的に一度に加護を受けることができた。
王宮の中では、”歴代の王家を愚弄している!”などと批判する者もいたが、ハルナのように神々を従える者が今までにいたはずがない。
そんな神々を従える存在が、この国の王宮に入ってくれればこの国の力も安定するという声も王宮から上がり反対派の声を塗りつぶしていった。
しかし、最後まで反対の声をあげたのがキャスメルだった。
実はキャスメルも、ハルナのことが気になっていたのだった。
その事実を知りクリエは相当落ち込んでしまい、王選が終るとソイランドへと戻っていった。
キャスメルは”戦力”としてクリエを引き留めようとしたが、アリルビートとルーシーがそれを止めた。
彼女をそっとしておいてあげて欲しい……と。
クリエの帰りの道中、シュクルスが護衛としてついていくことにした。
シュクルスは、クリエを自分の町まで届けた後、戻ってくるはずだった。
だが、いまだに帰ってくる気配はないと、同じ騎士団に所属するステイビルはいう。
キャスメルはステイビルに、ハルナと一緒になりたいと告げる。
もちろんその行為が、滑稽な行為であることはキャスメルにもわかっている。
しかし、キャスメルはハルナが他の誰かの者になるのが我慢できなかった。
せめて、ハルナがステイビルの申し出を断ってくれればまだ自分にもチャンスがある。
ステイビルと離れ、自分のそばで過ごしてくれれば……いつかハルナの気持ちも動いてくれるのではないかと。
「そ、それで……わたしは……どうしたの?」
「ハルナ……あなたはね……」
ハルナは自分の知らない”自分”が、この状況をどのように対処したのか気になる。
今までの話からすると、今の状況になってしまったのが自分のせいである可能性が高いと判断している。
”自分じゃない”といったところで、それを信じてくれる者などいるはずがない。
何が理由なのかはわからないが、エレーナやステイビルにとっては目の前にいたハルナが”自分”なのだから。
ハルナは、主人公の感情にのめり込んでしまった小説のページをめくるように、エレーナからの言葉を待つ。
「ハルナは、”何の答えも出さなかった”のよ……」
「え?……なにそれ?」
「何それって……そういうことよ。あなたは、どちらも選ばなかったの。だからこそ、この時に決めていればここまでの状況にならなかったかもしれないのよ」
それ以降、二人がハルナに対してアプローチを開始する。
もう、ハルナはどちらかを選ばなければならない程に、周囲も国民もこの結末について関心を持つようになっていった。




