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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-65 コボルド討伐13



先程まで話をしていたコボルトの長は、氷の中で静かに眠っている。

今では苦しそうな表情も、氷の中には見られない。

ルーシーからは、本当に凍らせて大丈夫かと聞かれたが魚や危険な状態の生物にはこの方法で搬送しているケースがあることも多々報告されていた。

それをぶっつけ本番でやることについて、ルーシーとソルベティから疑問が上がった。

その方法を最終的の承諾したのは、コボルトの長の弟だった。


『長よ……』


残されたコボルトは、何かを言いたそうにじっと氷を見守っている。


『きっと……私が、あなたの夢を……』


もう一人のコボルトと一緒に氷を担ぎ、隠れ家の祠まで氷を運んでいった。




「さて……ここからどうしたものかしら?」


ルーシーは、これからのことについて考えてみる。

目の前には、全員ロープに縛られている西の王国の警備兵たち。

長に付き添っていた、弟のコボルト。

そこで、カルディがクリエに話しかける。


「……クリエ様。この件も一段落しましたし、山を下りますか?」


カルディは今回の件で、クリエが急激に成長したと感じている。

自分の意見をはっきりと伝え、コボルトの長にも伝えることが出来ていた。

カルディはその成長が本当のものか虚勢かを確かめるために、今回の判断をゆだねた。


「そうですね……私は、ここで東に戻る者と西の国の方にこのことを伝えに行く必要があると思っていました」


カルディは確信した。

今回の件で、クリエが間違いなく成長していることに。


「偶然ね、私もそう思っていたところです」


その話を聞いていたルーシーが、会話に加わった。


「それでは、これからのことをみんなで話し合いましょう!」


賛同者がいて喜ぶクリエは、嬉しそうにみんなに集まってもらうように声を掛けにいく。


(ふぅ。こういうところは、まだまだね……)


しかしカルディの任務の一つとしては、その成長の早さは満足のいくものだった。


「……というわけで、私はここから二手に分かれて行動したほうがいいと思うんですけど。皆さんどうでしょう?」


クリエの言う理由はこうだった。

このまま東に帰ると、西の警備兵をただ拉致しただけになる。それだと、東の国の方が不利にになる。

そのため、今回の一連の騒動を西側にも認識してもらう必要がある。

併せて、頂上を超えた西側のルートも未確認のため一度確認する必要があると考えた。


「でも、誰が西側にいくの?」


エレーナが確認する。

この騒ぎで、山を越えた辺りから日が落ちることになる。

それに休憩依頼食事もとっていない。

山を越えて下まで行ける体力が残っているのか、それに他の魔物に出会う危険性は?


「まずは、私が行きます」


クリエが告げる。


「では、私が付いて行った方がいいでしょうか?」


アーリスが確認する。


「アーリスさんは、この者たちを見張っていてほしいのです」


ルーシーが、ロープで縛られた男たちを指さす。

途中で暴れられても、制圧することは可能である。

が、話を聞く際に西側のルールなどを知らなければ、発言の真偽が判断できないからだ。

その確認役として、アーリスは東側に降りることになった。


『では、私が道案内しよう……』


コボルトが、話し合いに入ってくる。


『私がいれば、同胞が襲ってきても対処できる。そのルート上にいる他の生物も、知らないわけではない。少しは役に立てると思う』


そういって、道案内を買って出てくれた。

クリエも是非とのことで、お願いすることになった。


「それでは、クリエ様の付き添いとして私も同伴させて頂きます」


カルディが申し出てくれた。


「それで、お願いしたいことがあるのですが……ハルナさん、付いてきてくれませんか?」

「え?……わたし?」


ハルナは、驚くがすぐに断る理由が思い浮かばない。

というより、この状況で断ることができるのか?

クリエはそんな葛藤をするハルナを余所に、理由を告げる。


「ハルナさんのフウカ様がいれば、こちらのコボルト様とお話しが出来ますし。それに、他の魔物や生物が出てきた時でも、対応ができると無駄な戦いをせずに済む可能性もあるかと思って」


エレーナも戸惑うハルナを擁護しようとしたが、その理由がしっかりとしたものであったため反論することもできない。

これを断るとなれば、作戦以外の個人の感情の部分に入ってしまう。


「……どうでしょう?ハルナさん」

「わかりました!大丈夫です!!」


ハルナは腹を括った。

先程からお腹が空いているが、この場では言えるはずもない。


「では、私もハルナ様のお付き添いとして同行させて頂きます」


ソフィーネだった。

ハルナの付き添いという面もあるが、諜報部として西側の現在の状況をこの目で確かめておこうという思惑もあった。

戦力的にも全く問題はなく、トラップなどにも対応できるとのことで、一緒に行くこととなった。


「……では、こちらをお持ちください」


アーリスがクリエに、バッジを手渡した。


「――これは?」


「これは西の国の警備兵が着用するバッジです。裏には名前が刻まれています。本来戦いの中何か起きた際に回収し、家族に手渡すものです。……ですが、今回これを持っていって状況を説明すれば、何かの役に立つと思います」


クリエはそれを手に取り、カバンの中に仕舞った。


「アーリスさん、ありがとうございます。あとで必ず、お返ししますね!」

「では、それぞれ準備をして行動を開始しましょう!」

「「はい」」


クリエの掛け声に、みんなが返事をする。

クリエの人生の中で、初めての出来事のように思える。


(私も……強くなりたい!!)


そう思いながら、ハルナ達と山のさらに上を目指す準備を始める。




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